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第131回 『熱しやすく冷めやすい』

2019.11.26
 秋のGⅠシーズン突入である。9月29日のスプリンターズステークスを皮切りに、年末12月28日のホープフルステークスまで、毎年恒例の楽しくもあり、(金銭的に)苦しくもある、3か月間の始まりである。
 昨年は台風24号の影響で、本場入場2万4,336人(前年比65.1%)と大きく減らし、売上も126億850万3,700円(前年比100.8%)と横ばいだったこともあるが、今年は本場入場3万4,347人(前年比141.1%)、売上も130億2,513万100円で前年比103.3%アップとまずまず。

 6月23日までの上半期が、売上1兆4,529億2,598万6,300円(前年比104.3%)、入場322万3,167人(前年比101.1%。開催日数は昨年、今年ともに140日)。GⅠ12レース中8レースが前年を上回った、という数字をベースにすれば、出だしは上々と言っても良かった。

 第2弾の秋華賞は、猛烈な勢力を持ち、各地に災害をもたらした台風19号の影響により、土日の東京競馬が中止に、それぞれ週明けの火曜日と翌週の月曜日にスライド、代替競馬となり、関東地区での場外発売も出来なかった影響が大きかった。本場入場3万5,344人(前年比79.3%)、売上117億4,924万5,600円(前年比78.6%)と大幅ダウン。我々も印刷した新聞を配送することが出来ず、恐らく大幅ダウンとなりそうだ。

 奇しくも2週続けて開催日が増えた菊花賞週。本場入場は5万5,452人(前年比100.7%)、売上162億9,025万3,800円(前年比88.3%)と大きくダウンした。くもりではあったが雨も降らず、まだ水害の影響が各地にあったとはいえ、絶好のGⅠ日和にもかかわらずこの数字はショックが大きい。

 予兆はあった。GⅠ前夜は毎回帰宅ルート途中の売店をチェックしながら帰るのだが、弊紙に限らず、専門紙各紙の動きが鈍かった。例年、この時季はプロ野球のクライマックスシリーズと日本シリーズが続いて、チームの組み合わせや場所によっては街を歩いている人が少なくなることもあった。時季は異なるがサッカーのワールドカップが開催されている期間は、渋谷以外は人通りが少ないということがよく見られた。

 それに匹敵するイベントと言えば...。ラグビーワールドカップだろうか。開幕戦となった日本-ロシア戦が9月20日(金)に行われ、日本が勝利。ラグビーファン以外の多くの方が、恐らく「初めてラグビーを観た」と思われるのがここだろう。

 なにせ熱しやすい国民性である。以前行われたシンクタンクの調査では、競馬ファンは他に何らかのスポーツ等にも興味を持っている割合がひじょうに高い。人が集まる場所が好きなのだろう。ロシア戦の後は、ラグビーなんかに全く興味がなかったウチの奥さんですら、ルールさえ知らずに「ラグビー、ラグビー」と騒いでいる。これはいわゆる「ブーム」である。危険な香りがする。移り気な競馬ファンが、この期間だけあっちへ行っても不思議ではない。

 日本―アイルランド戦がスプリンターズステークス前夜の28日。秋華賞が行われた10月13日は台風の影響が最も大きかったとはいえ、昼にセパ両リーグの日本シリーズ出場チームが決まる試合が行われ、夜には決勝トーナメント出場が決まる日本-スコットランド戦という、「悪条件」も重なったように思われる。

 今年の菊花賞は皐月賞馬、ダービー馬不在で行われ、今年7月30日に死んだディープインパクトの産駒ワールドプレミアが最後の一冠を制し、武豊騎手は菊花賞最多の5勝。同レースの最年少勝利と、最年長勝利の記録、そして「昭和」「平成」「令和」の3元号制覇を達成するなど、見どころの多いレースだったが、菊花賞前日には日本シリーズが始まり、菊花賞当日の夜には決勝トーナメントの日本-南アフリカ戦という、イベントを行う上での周辺環境としては、あまりいい条件とは言えなかったのかもしれない。

 日本シリーズは第7戦まで行われれば、10月27日の天皇賞(秋)当日まで、ラグビーワールドカップは11月2日(土)に決勝が行われる。おそらくその頃は、浦和JBC開催を控え、取材等でそれどころではない状況だと思われる。

 日本人は冷めやすい国民性でもある。再びビッグウェーブがやって来ることを切に願っている。

 そして来年は東京オリンピックが開催される。ここにきてマラソンと競歩の札幌開催が通告されたり先行き不透明。とりあえず来た球を打つしかないのだが。

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