JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第137回 『無観客競馬2』

2020.05.25
 2月27日より始まった「無観客競馬」。当初は現場の取材も変わりなく、今思えば緩い感じだったが、南関東で言えば3月10日から始まった船橋開催は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、事務所への立ち入り禁止、騎手、調教師への囲み取材禁止、移動できるエリア限定と、規制が強化された。

 実際のところは、カメラマン、フリーの取材記者に対する規制強化で、関地協発行の取材章(通称年パス)を交付されている専門紙、日刊紙の記者はこれまで通りではあったが、通常通りの動きをすると真似する取材者が出てくるかもしれないという懸念と、我々から騎手や厩舎関係者に感染させてはいけないという理由で、取材活動は控えめ、あるいは自粛した。

 特に専門紙、日刊紙で話し合ったわけでもないし、主催者から要請があったわけでもないが、やはりそこは控えるのが妥当と、皆思ったのだろう。

 その後、順次川崎、大井も同様の体制となり(浦和はこの中間行けませんでした)、レースの後取材は、勝ち馬関係者を除き、ほぼ出来ない。

 一方で前取材の方は、一応は厩舎地区への立ち入りは許されてはいるが、やはり何となく行きづらいので、電話や調教スタンド周辺で捕まえて聞くようにして、今のところは想定も談話も、滞りなく取れている。

 美浦トレーニングセンターでも既に発表されているように立ち入りや取材が規制されているが、そちらの方も同様の体制である。

 開催中の競馬場でも、比較的早い時点で競馬場へ行く記者の数を絞っている。何か発表されるたびにネットでは「記者の取材も自粛させろ~」と書かれるのだが、ファンは知らないだろうが、割と初期のうちに取材体制は絞っているのである。やはり我々がトリガーを引きたくないし、それで競馬が中止になったら困るのは自分達である。

 一応皆プロなので、自粛体制になっても読者にはそうとは悟られないよう、様々なテクニック?を駆使して新聞を作っているのである。

 とはいえ、騎手や調教師の生の声を聴けないのは寂しい限り。いったいいつまで続くのか。

 取材規制のなかでも、我々のところまで下りてきてくれる心優しい騎手や調教師がいるので、ここぞとばかりに無観客競馬の印象を聞いた。

 「お客さんが居ないのは寂しい」と前置きしつつも、皆口を揃えて言うのは、「馬が落ち着いている」ということである。これはパドックを見ても明らかで、2人引きやホライゾネットを着けているような馬も、実に落ち着いて周回している。もちろんそれでもダメな馬はダメだけど。

 中には勘がいいのか、あるいは小心なのか、普段と違う気配を感じ、しきりにお客さんの居ないパドックを物見している馬もいる。

 しかし全く音がしない訳ではない。無観客競馬になってから、普段聞こえない音が聞こえて、それが馬に影響を及ぼすこともある。例えば競馬場のエアコンの室外機が回り出す音。普段気付かないが、ウイ~ンと動き出すと、意外に大きな音がするし、驚く馬もいる。あるいは救急車などの緊急車両のサイレン。これはよく聞こえる。犬はサイレンが聞こえると遠吠えするが、幸い馬は反応する様子がない。これは何故なのか、凄く疑問に思うところ。

 競馬場近くを走行する車や電車の音は普段よりもよく聞こえたが、最近は車も減り、競馬場内は馬の蹄の音しか聞こえない時間が増えた。

 それが競馬の結果に影響を与えているかどうかは不明だが、当初から「無観客競馬は堅い」と言われてきた。

 どのように比較するかは難しいが、例えば今年のナイター開幕となった4月6日~10日の大井競馬は、全60レースが行われ、1番人気が26勝。2番人気7勝、3番人気8勝。計41レースで1~3番人気の馬が勝っている。昨年はどうだったかというと、同じく2019年4月8日~12日の開催は全60レースが行われ、1番人気が16勝、2番人気16勝、3番人気9勝で計41レース。実は全く同数であるが、1番人気の比較では、より堅い傾向であることは間違いなさそうだ。

 参考までに、6番人気以下の勝利は2020年が9勝(最低人気は10番人気)。2019年が8勝(最低人気は12番人気)である。

 残念ながら、無観客競馬はしばらく続きそうな気配である。幸い売上の方は、地方は好調、中央も次第に前年並に近づいてきた。支えてくれている競馬ファンの存在をありがたく感じる。

トップへ