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第145回 『負けに不思議の負けなし』

2021.01.25
 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。故野村克也氏の座右の銘として有名だが、肥前平戸藩第9代藩主松浦清が、隠居後に松浦静山の名で執筆した剣術書『剣談』の中に書かれた一節である。

 一般的には「勝つ時は様々な外的要因で運よく勝つこともあるが、負ける時は負ける理由がある」というように捉えられているが、『剣談』には「道にしたがい、道をまもれば、勇ましさがなくても必ず勝ち、道にそむけば必ず負ける」というようなことが書かれてある。「道」とは「人としての行い」であり、「人としての行い」とは、ようは常日頃から準備を怠るなということである。

 11月29日に行われた第40回ジャパンカップ。競馬ファンのみならず、競馬サークル全体の注目度が高く、内勤の編集部員も当日は競馬場に出勤するほどだった。

 レースはキセキが1000m 57.9のペースで後続に推定20馬身の差を付ける大逃げ。レースは直線勝負となり、逃げ粘るキセキ、早めに勝負を仕掛けていったグローリーヴェイズ。それらを尻目に、あくまで自分のレースを貫いたアーモンドアイ。王道の好位抜け出しで有終の美を飾った。

 2着争いはクビ・ハナ・クビの接戦。上がり最速34.3で外を追い込んだコントレイルが2着、粘る5着グローリーヴェイズと直線勝負に賭けたカレンブーケドールの間を割って伸びた3着デアリングタクト。平凡な言い方だが、各馬力を出し切った好レースだった。

 アーモンドアイは最後まで強かった。この馬に限っては「勝ちに不思議の勝ちなし」だ。
 馬券は、あれこれ考えたが組み合わせの結論が出ず、キャスターの山本潤さんとともに「観戦料」と称してアーモンドアイ・コントレイル・デアリングタクトの三連複1点。好レースを観戦させてもらった挙句、3倍になって帰ってきた。
 参考までに、本業の方はひとつ前のサルビア賞は転入初戦のタガノキトピロが勝ち的中。メインの佐賀オータムスプリントは◎のドラゴンゲートを軸にしたが、前半掛かって行きたがり、最後脚が鈍ったところをフォークローバーに差され裏目。こちらのレースも最後の直線は盛り上がった。

 1週間後、第21回チャンピオンズカップだ。そしてまた、私はグリーンチャンネルの控室に居たのである。

 チャンピオンズカップはこれまた好レース。国内無敗のクリソベリル断然の前評判だったが、当日の馬体重は554キロ、プラス12キロ。パドックは明らかに太めで、軽めの追い切りの後に、前日の5日に坂路で併せて強めに追われ、サンライズノヴァを追走し半馬身遅れていた。

 そもそも、クリソベリルは2~4か月の間隔で余裕をもって使われていて、今回JBCクラシックから中4週と詰めて使われるのは初めてであった。とはいえ昨年のチャンピオンズカップも550キロでゴールドドリームとインティの間を割って伸びてきたわけだから、太めとはいえ問題なし、という見方も出来た。

 キャスターの梅田陽子さんと控室でパドックを見ながら、よく見えた馬はゴールドドリーム、そして前週の中継終わりでも推奨したインティ、この2頭を軸に3連複でバラバラ流した。

 レースを引っ張ったのはエアアルマス、そしてその外にインティ。クリソベリルは外4番手。前半少し行きたがる素振りを見せたが、落ち着いた。前半のペースは 60.3 の平均ペース。昨年が60.8だったから、ほぼ同じ流れ。

 直線、インティが出て、その直後のクリソベリルは手ごたえが悪くムチが入る。普通ならここからグーンと伸びるのだが、どうも反応が鈍い。残り100mあたりで、外からチュウワウィザードとゴールドドリームが伸びてきて、クリソベリル、インティを交わし、そのままゴール。

 チュウワウィザードが4度目の直接対決で、初めてクリソベリルに勝った。のだが、レース直後の率直な第一声は「ああ、負けちゃったよ」であった。クリソベリルが負けたことが残念だった。

 冷静に振り返れば初の中4週と、中間の調整か。「負けに不思議の負けなし」なのは、レース後の川田騎手のコメントにも表れていると思う。

 参考までに本業の方はと言うと、佐賀と高知の4レースで、2レース的中。比較的堅い結果ではあったが、半分が転入初戦の難解な2歳戦で、展開まで含め予想通りに決まったので、個人的には満足して現場を後にした。

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