JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第154回『最終レース』

2021.10.25
 昨今、最終レースに注目が集まっている。1日の最後のレースは、弊紙でも「ラストチャンス」などのコラムが掲載されたりして、古くから大きく取り上げられている。売り上げ面でもメインか準メインに次ぐ売り上げである。
 競馬以外の競技では最終レースが優勝戦であったり、予選のA組であったりと、最上位の格を持つレースが組まれることが多い。最近ではホッカイドウ競馬などはメインレースを最後のレースに組んだり、日本ダービーの後に目黒記念が組まれたりするが、JRAも含めほとんどの競馬場や開催日では、1勝クラスや中級のクラスで編成されることが多い。

 組まれる距離は競馬場の設定によって違うが、JRAなら概ね1200mや1400mが多い。時々2000mが組まれたりもするが、概ね短距離である。地方競馬だと大井なら1200〜1600m、浦和なら1400mなど様々である。もう10年くらい前になるが、ある競馬場の番組担当者に「なぜ最終は毎回この距離なのか」と聞いたら「ゲートをすぐしまえる距離だから」という、なるほど明快な返事を頂いたことがある。

 その後最終レースが様々な距離で行われるようになったのは、番組を工夫するようになったからだろう。放馬、逆走防止の人員を配置したり、移動柵を動かしたりと、手を掛けている。

 今最も有名な?最終レースは、高知競馬の「一発逆転ファイナルレース」だろう。

 以前から「近走成績の振るわない馬を集めて馬券的妙味を持たせよう」という趣旨で行われていた記者選抜競走に、2008年6月から「一発逆転ファイナルレース」の名称を付けたもの。高知県新聞協会加盟の記者2名と番組編成担当者2名により選抜された馬を元に組まれる。

 他競技はともかく、競馬では記者選抜として記者が編成に加わることはほぼ皆無。以前、騎手戦の騎乗馬AB分けに加わったことはあるが、選ぶのは「より走る馬」の方で、成績の振るわない馬を選ぶために呼ばれることは、おそらく今後もないだろうと思う。

 興味はあるので1度やってみたいとも思うが、その後に予想することを考えると、例えは悪いが自分で自分の首を締めるようなものだ。

 地方競馬のIPAT発売は土日だと土曜日が17時11分締切(発走17時15分)、日曜日は18時11分(発走18時15分)までで、高知競馬ならメインである重賞競走は第7競走に組まれる。通常であればその後のレースは売り上げが落ち込むのだが、ファイナルレースがもうひとつのメインレース的な役割を担っている。

 例えば珊瑚冠賞が行われた9月20日。メインの珊瑚冠賞はスペルマロンという確かな軸が存在し相手妙味のメンバーで、JRAインターネット投票での発売があるという条件で186,563,000円の売り上げ。それに対しその日の最終第12競走の一発逆転ファイナルレース(3歳8組)はJRAインターネット投票の発売がない中266,812,200円の売り上げ。

 まさに企画力の勝利といった印象だ。新聞の予想は近走のタイムだったり、レースぶり、調教状態、枠順、斤量、騎手などをベースに予想するのはどこへ行っても変わらないが、さすがに差のない馬を選んでいるだけあって、差がない。その中でもおそらく僅かなヒントで地元の記者は印を打っていると思われ、そのプロセス自体はどこへ行っても変わりはないと思うし、人気も概ねそこがベースになっている。しかし結果はそうならない。

 前述の通り、自分で自分の首を締めている状態とは、まさにそういう感じだ。

 南関東でも最終レースに企画戦を組む流れが出てきた。昨年から川崎競馬で「ファイナルアンサー賞」というレースが最終日の最終競走に組まれるようになった。C2かC3の選定馬で組まれているが、さすがに番組編成担当者の視点だけで組むと隙?が生まれるのか、1番人気が勝つことも。

 それよりも難解なのが、同じく川崎競馬の川崎ジョッキーズカップ。主に重賞が行われる日の最終に組まれ、年間でポイントを争う騎手戦なのだが、騎手が変わるとホント馬のレース振りが変わるし、まともに決まらない。

 船橋や浦和でも、最終レースに2200m戦や、2000m戦が組まれる日がある。旧来の番組編成では、上級条件でなければ組まれない距離だけに、初距離となる馬も多く、不確定要素が増える分、我々も予想していて頭を悩ませる。

 分かりやすいレースが売れるのか、難解なレースが売れるのかは未だ意見は分かれるが、買う側としては、当たればどちらでもいいのであるが。
トップへ