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第158回 『NAR GRAND PRIX 2021』

2022.02.25
 1月13日(木)、NARグランプリ2021優秀馬選定委員会が開催された。今年も選定委員の末席に加えて頂いたので、印象に残った部門を中心に振り返りたい。
 まず2歳最優秀牡馬・せん馬部門。早々にJBC2歳優駿(JpnⅢ)2着のナッジと、兵庫ジュニアグランプリ(JpnⅡ)、全日本2歳優駿(JpnⅠ)3着のプライルードに絞られた。プライルードは確かに強いが、勝ち鞍がフレッシュチャレンジのみでは物足りないと思い、JBC2歳優駿2着+サンライズカップ1着のナッジに投票。

 採決の結果もナッジ10票、プライルード4票でナッジが選定された。この部門は近年ダートグレード競走勝ち馬の選定が続いたが、それ以前を見ても、地元重賞勝ちはマストだろう。

 2歳最優秀牝馬はすんなりスピーディキックだが、表彰対象の決め手となるレース選びで議論となった。有力馬が集まり決定戦となった東京2歳優駿牝馬が最高レートの100で、事務局資料もこれを上位としたが、やはりJpnⅢの格は無視できないという意見があり、委員会はエーデルワイス賞を対象レースとした。これは何を意味するかと言うと、この馬は移籍しているので、表彰対象者(調教師、騎手、厩務員)が変わるのである。これも委員会の重要な仕事である。

 3歳は牡馬、牝馬ともすんなり終わり、今年最大の見せ場を迎えた。4歳以上最優秀牡馬・せん馬部門だ。

 対象馬は川崎記念、かしわ記念のJpnⅠ2勝馬カジノフォンテンと、地方馬初のJBCクラシック(JpnⅠ)勝ち馬ミューチャリー。レーティングも115で全く同じであった。

 各委員の意見陳述が延々と続いた。どの委員もひと言目には「難しい」と言い、ある委員は「2頭同時受賞は出来ないのか」と言い出し、表彰規程や選定の基準を確認したり。山野浩一さんがご存命の頃は度々あったが、久しぶりにそういう光景を見た。

 なんだか他人事のように聞こえるかもしれないが、自分の中では既に決まっていた。確かにミューチャリーの地方所属馬初のJBCクラシック制覇はインパクト大だが、2011年のフリオーソ以来となるカジノフォンテンのJpnⅠ年間2勝を退けるほどではない、と思っていた。

 延々と続いた議論が出尽くし、シーンとしたところで採決。結果カジノフォンテン6票、ミューチャリー8票で、4歳以上最優秀牡馬・せん馬はミューチャリーが選定された。

 4歳以上最優秀牝馬、ばんえい最優秀馬は無風で最優秀短距離馬とターフ馬。いずれも該当なしとなった。短距離馬については関係者の間でも誤解が多いが、1600m未満と規定されている。また、この部門は勝ち馬の受賞が続いていただけに、委員会の選定も辛く、やはりダートグレード競走の勝ち鞍が欲しい。2歳戦は前後の成績で適性をみる。ターフ馬も、JRAのオープン競走以上の勝ち鞍か、OROカップに加え、例えばハッピーグリンのようにジャパンカップ7着も2分22秒2の優秀なタイムで走るとか、2度目のコスモバルクのようにシンガポール航空国際カップ2着とか、プラスアルファが欲しい。

 ダートグレード競走特別賞は、地方競馬のダートグレード競走で優秀な成績を残した馬を、中央、地方にかかわらず表彰する部門。テーオーケインズの帝王賞、オメガパフュームの東京大賞典4連覇を評価する声が出たが、この部門はこれまでも地方のJpnⅠ年間最多勝利を挙げた馬が選ばれており、4歳以上最優秀牡馬・せん馬の結果にかかわらず、カジノフォンテンが妥当だと思い、そのように述べた。採決の結果、カジノフォンテン10票、オメガパフューム3票、テーオーケインズ1票でカジノフォンテンが選定された。

 年度代表馬は各世代の最優秀馬から選定されることになっているため、これは4歳以上最優秀牡馬・せん馬のミューチャリーが妥当だろう。

 最後に特別表彰馬。これは地方競馬の発展に特別の功績があった馬を称えるものだが、優秀な競走成績だった馬は既に現役時代に各部門で表彰されているので、これもプラスアルファが必要。繁殖成績、JRAでの勝利、あるいは地方競馬初など。重賞勝ちは地方競馬のみで、ブリーダーズカップ・ディスタフ(GⅠ)を制したマルシュロレーヌはダート競走の地位を大いに高めた。異議なし。

 今年は優秀馬選定委員会史に残るぐらい議論が白熱し、途中休憩が入るぐらい長時間に及んだ。最後に表彰馬、表彰者の皆様おめでとうございます。さらなるご活躍を期待しております。
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