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第175回 『2023年前半戦』

2023.07.25

 早いもので、今年も間もなく折り返し地点を迎えようとしている。病院勤務の家族から話を聞いていると、コロナウイルスは終息したとは言い難い印象ではあるが、取り敢えず「前に向かって前進!」しなければ生きていけないと思う。

 さて今年の前半戦。地方競馬主催のダートグレード競走は本稿執筆時点で15レースが行われ、イグナイターの1勝(さきたま杯・JpnⅡ)という状況。

 昨年の帝王賞直前がどうだったかというと、ノーヴァレンダ(ダイオライト記念・JpnⅡ)、サルサディオーネ(さきたま杯・JpnⅡ)、イグナイター(黒船賞・JpnⅢ、かきつばた記念・JpnⅢ)の4勝を挙げていただけに物足りなさは感じるが、一昨年がカジノフォンテンの2勝(川崎記念・JpnⅠ、かしわ記念・JpnⅠ)だったことを考えると、相変わらず「タレント頼み」で、今年は「イグナイター頼み」になりそうな予感がする。

 昨年、総売上1兆651億3,741万8,251円を記録した地方競馬。2023年1〜5月期は前年比101.1%と伸びは鈍ったものの、変わらず好調だと言える。5月8日より新型コロナウイルスが5類相当に移行したことにより、JRA、地方競馬ともに「コロナ前の体制」へと移行して、地方競馬の1日の入場者数も前年比113.6%と数字を伸ばしている。

 何度も書いているが、「コロナ前」と客層が変わり、若い人が一気に増えた。ウマ娘で競馬に興味を持った人が増えて、事前予約制がベテランファンを遠ざけた、と言われているが、場内の印象も概ねそんな感じだ。

 更に言うと、新聞が売れない。場内を巡察(ぷらぷら)していると、スマートフォンの画面を見ながらマークカードを塗っている人がちらほら目立つ。紙からスクリーンへの媒体の遷移は時間の問題だとは以前も書いたが、既存の場内のお客さんが移行したのではなく、既存のお客さんが減り、新しいお客さんが自宅からそのまま競馬場にやってきた、ということだろう。

 そのあたりは主催者も敏感で、特設サイトや動画配信の話がバンバンやってくる。ただ、ネットの仕事は単価が安く、とても新聞の売上減を補えるものでもなく、更に言うと人気のトラックマンを一本釣りされると、こちらに全くメリットがないから、良いものは受け、それ以外はスッパリ断るか、適正な見積もりを出している。

 スッパリ断ると、まさか断られるとは思っていなかったらしく、どこが不満なのか問われるのだが、前述の通りメリットがない。おかげさまで方方で筆者の評判が悪くなっているが、こちらもビジネスなので、やはり会社や新聞に益のあるものをやりたい、というのが本音だ。

 今春、競馬場の帰りにお世話になっているある団体の偉い人と、一杯飲みながら話した。殆どが昔話や前述の話ではあったが、ちょっとだけ現況の話もした。

 その中で売上があるうちに地方競馬がやっておいた方が良いと思われることとして2つ挙がった。

 1つ目は調教施設の整備と厩舎の更新。坂路、ウッドチップ等を擁するJRA勢に対し、このままでは差が開く一方だ。また美浦TCでは北の杜や西などで厩舎の改築を進めている。地方競馬でも改築が進められているところもあるし、改装している調教師もいるが、古さは否めない。故川島正行調教師も「高い馬を預けてもらうんだから、綺麗にしなきゃだめだ」とよく言っていたものだ。

 2つ目は競馬初心者対策。ウッドコースの自動計測の時にも同僚と話していたが、調教時計は縦の比較であって、横の比較ではないし、そこそこの競馬知識を持っていると思われるファンでも、ネットの反応を読む限り見方が理解されていない印象を持っていた。また連戦連勝馬が負けると物凄い批判が書き込まれているが、タイムを詰めているならまだ伸びると判断できるが、近走タイムが伸びていない馬は「そろそろだろう」とか「このクラスが天井か?」と判断する。

 その辺もJRAはオンラインビギナーセミナーを立ち上げていたし、地方競馬でも気付いている主催者は動画配信に初心者対策の要素を取り入れている。タレントを呼んで当たり外れを競っている配信も嫌いじゃないから見るが、そういった地道な作業が後々響いてくるような気がする。

 採用をやっているとわかるが、今の20代は親が競馬ブームの世代で、競馬に対する心理的障壁がない。先を見据えた安定した顧客層を構築するのは、今がチャンスではないかと思っている。

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