JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第176回 『最後のジャパンダートダービー』

2023.08.25

 7月12日(水)、大井競馬場で第25回ジャパンダートダービー(JpnⅠ)が行われた。


 ダートレースの体系見直しにより、来年から10月上旬に移動し、「ジャパンダートクラシック」と改称することが決まっており、これが最後のジャパンダートダービーとなる。


 1番人気は無敗の東京ダービー馬ミックファイア。大井生え抜きとしては96年のセントリック以来となる東京ダービー馬で、2000mに距離短縮された99年以降最速となる2分4秒8の好タイムで制している。


 2番人気はJRAのユティタム。21年セレクトセールで2億円の高額馬で、新馬戦2着のあと3連勝で前走の青竜Sを制している。


 3番人気はミトノオー。前走の兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ)に勝ち5戦4勝。2着に6馬身の差を付ける圧勝でここに臨んできた。


 レースは大方の予想通り、武豊騎手のミトノオーが先手を奪い、前半3ハロン34.9のハイペース。そこから12.8-12.5-12.3と息を入れる絶妙のペース配分。2番手テーオーリカード、3番手ユティタム、オマツリオトコとJRA勢が先団を形成し、その後ろにミックファイアという隊列。


 武豊騎手は勝負所まで後続を引き付けつつ、4コーナーで一気に後続を引き離しにかかる。2馬身~3馬身と開いて残り400mを過ぎて直線に。


 外からユティタムとミックファイアが迫るが、残り200mでユティタムの脚色が鈍り、ミックファイアが一気に迫る。さらに外からキリンジが道中7番手の位置から直線勝負に出た。


 残り100mを切ったところで、ミトノオーが苦しくなり、50mでついにミックファイアが一気に交わしてゴール。ミックファイアが最後のジャパンダートダービーを制した。


 大井所属馬の勝利は99年のオリオンザサンクス以来、また無敗の南関東三冠馬は2001年のトーシンブリザード以来となる。


 無敗といえどもここまでの道のりは必ずしも平たんではなかった。雲取賞から始動するはずが、左後肢裂蹄で使えず、ウッドチップの坂路があるミッドウェイファームの認定厩舎で調整。装蹄も変え、なんとか羽田盃に間に合わせた。


 その羽田盃は裂蹄の影響でパドックでの歩様も悪かったが、終わってみれば1分50秒9のレースレコード勝ちで、2着ヒーローコールに6馬身差の快勝。脚元はともかく、体は絞れて引き締まっていたし、なによりも2番手から一気に引き離したようにエンジンが違うという印象だった。


 続く東京ダービーでは裂蹄も良くなり、2着ヒーローコールに6馬身差、2分4秒8のレースレコードで二冠を制した。


 最後のジャパンダートダービーで初の大井生え抜き、さらに無敗の三冠馬誕生と、まるでドラマのような出来過ぎな結果だが、準備していた三冠達成の横断幕とともに、ジャパンダートダービーは有終の美を飾った、と言えるだろう。


 「最高です。うれしすぎて言葉がみつかりません」と珍しく興奮した様子の御神本騎手。


 「秋はここでJBCがあるので、JBCクラシックで結果を残すようであれば、チャンピオンズカップに行けたらと思います」と、どこかホッとした様子にもみえた渡邉和雄調教師。


 夏場を休養にあて、この秋さらに成長したミックファイアに期待したい。


 さて、25回で一旦幕を閉じたジャパンダートダービーのアラカルト。


 最多勝利騎手は武豊騎手の4勝。以下、戸崎圭太騎手、横山典弘騎手、内田博幸騎手が各2勝。


 最多勝利調教師は、音無秀孝調教師の3勝。以下、佐藤賢二調教師、角居勝彦調教師、川島正行調教師、矢作芳人調教師が各2勝。


 馬主は、社台レースホース、キャロットファーム、金子真人HDがそれぞれ2勝。


 生産牧場はノーザンファームと社台ファームが各4勝。他に外国産馬が2勝、青森産馬が1勝。


 種牡馬はシンボリクリスエス(USA)産駒とゴールドアリュール産駒が各2勝。自身も含めサンデー系種牡馬の産駒が7勝している。


 売上面でみると、99年の第1回ジャパンダートダービーは9億8,154万6,900円だったが、第25回は3倍以上の30億2,669万8,400円で、売上レコードを記録している。


 羽田盃、東京ダービーの交流化には反対も多かったと聞く。しかし「勝てなくなる」ではいつまで経っても勝てないだろう。「勝ってやる」という気概で臨め、最後のジャパンダートダービーはそう言ってるのではないかと、勝手に思う。

トップへ