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第125回 新しい季節 競馬場で会いましょう

2025.04.25

 今年もクラシックレースの話題で賑わう季節となりました。と同時に、春は新社会人の姿を見かける季節でもあります。

 私が南関東競馬にフリーとして携わるようになったのは2006年4月のこと。もう19年も前。月日が流れるのは早い、早すぎます。

 あの当時、それなりに社会人としての経験を積んだ身でさえも、新しい場所での緊張と不安、少しのワクワクがありました。競馬に例えれば、私の場合は転厩した古馬、新社会人は新馬、というイメージなのかも。

 春になると思い出すのが、会社員時代、新入社員研修に講師として参加した時のこと。50人ほどを前に、どんな業務をしているのか、やりがいなどを話すというもの。その中に「ちょっとした失敗談を盛り込む」というミッションがありました。

 そこで話した失敗談はこのふたつ。

 配属されて間もなく、電話に出た時のこと。まだ取引先の社名を把握できておらず「あのー〇〇(会社名)の××ですが」を復唱して「あのう〇〇の××様ですね」「いえ、フツーの〇〇です、〇〇の××です」という漫画のようなやり取りをしたことがありました。あの時、戦国時代の石工集団、穴太衆(あのうしゅう)が一瞬頭をよぎりました。

 もうひとつは「用語」の知識不足。ある時、別フロアにいる上司から「△△課長が帰社したら、今日のシキシダイ、できるだけ早くくださいって伝えておいて」といわれ、「△△課長 ××部長が本日の色紙代を可能な限り早めにお願いしますとのことです」と書いた伝言メモを作成。よし、これで私が離席している時に課長が戻って来ても大丈夫!と、課長のデスクの目立つ場所にそれを置いておきました。ほどなくして戻って来た課長、メモを手に「?」な表情で私を見て「日本語は難しいね(笑)」と。そう、シキシダイは色紙の代金ではなく、式次第。式の進行表のことでした。勉強になりました、新人だもの。

 このような「ちょっとした失敗談」を話に盛り込むミッションの意図は、新入社員の不安を解消するための計らいだったのでしょう。

 新人ならではの勘違いや謎行動は、現在の仕事を始めた頃にもありました。競馬場特有の表現や仕組みを知らず「〇〇厩舎に入った赤帽が・・・」という会話を耳にして、「厩舎って運送会社の人も働いているのか。馬具や飼料を運ぶから?」なんて思ったことも。少ししてから、競馬場の赤帽とは『調教厩務員』のことだと知りました。

 また、調教時間でのこと。私が出向いていたのは、午前7時頃だったので冬でも明るくなっている時間帯。初めて行った時、馬場での調教を終えた人馬が運動場を“周回する”ということを知らないまま、すれ違う人にはきちんと挨拶!という気持ちで「おはようございます」を(大きすぎない声で)繰り返していました。

 少し落ち着いた頃、ふと、あれ?あのジャンパーの人と芦毛、さっきも会ったような・・・そういえば、あの栗毛と赤い服の人とも・・・。ハッ!もしかして、もしかして、もしかして!!ワタシ、同じ人たちに何度も「おはようございます」って言っていたってこと!?と。もうそんなこと、誰も覚えていないどうでも良いことなのでしょうけれど、本人は時々思い出して初心に戻っていたりします。

 さて、新生活をスタートさせた皆さん。

 仕事や環境に慣れて、少し気持ちに余裕が出たら競馬場へ。

 

 競馬歴が長くなった今でもなお、競走馬や騎手の姿に元気づけられることがあります。競馬場は、馬やジョッキーを応援する場所ですが、実は彼らに「応援されている」、そんな気持ちにもなる不思議な場所。空も広い、季節も感じられる。もしかしたら、失敗や慣れないことにくたびれてショボンとしぼんだ気持ちを上向きにしてくれるものや、同僚とぐっと打ち解けるきっかけを見つけることができるかも。こう書いていると、会社帰りに一緒に競馬を見た仲間たちと再会したくなりました。また、競馬場で会いましょう。

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