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南関フリーウェイ

阿部典子 南関フリーウェイ

第64回 華も笑顔も力仕事も 船橋競馬場誘導馬のお話

 新型コロナウイルス感染症の影響で無観客開催が続き、"歓声が聞こえる競馬場"がどれほど大切なものなのか、改めて感じる春となりました。

 今回は、船橋競馬場の誘導馬と、そのスタッフについてお伝えしていきましょう。誘導馬目当てで来場するファンもいるほど愛されている存在。競馬場で会うことが叶わず、寂しい思いをしている方も少なくないのではと思います。

 船橋競馬場で誘導の仕事に就いているのは、ちばシティ乗馬クラブの皆さん。今ではすっかりアイドルホースとなっている元競走馬・チャラオをはじめ、タカラスノーウェーブ、タカラブリランテの3頭がスタッフと共に開催を支えています。

 「普段はだいたい11時半くらいに競馬場入り。それから馬たちの世話や水汲みなどの準備をしています」と教えてくれたのは佐藤野乃佳さん。後輩スタッフから「ののさん」と慕われる、頼れる存在です。

 誘導馬の馬房はパドック横、西側の一角。昨年まで、雨の日も風の日も、猛暑の日も、寒い日も、誘導馬スタッフは馬房の前の狭い通路で過ごしていました。昨年ようやくスタッフの待機場所が用意されましたが、全体的に古い施設のため、水回りの不便も多い模様。ふと見ると、水が入った桶がズラリ。「馬の飲み水です。水道が無いので、パドックからホースを伸ばして、レースが始まる前に溜めておくようにしています。レースが始まるとパドックからホースを引けないので」とのこと。作業スペースに屋根はなく、雨の日などはかなり大変そうです。

 「スタッフは基本的に二人体制です。雨が降りそうな時や小雨の時、馬にカッパを着せるかどうかの判断が難しいですね。いつも楽しみに待っていてくださる皆さんに、きれいに馬装した姿をできるだけ多く見ていただきたいという気持ちもありますので」。そう話す通り、季節感いっぱいの馬装も大好評です。ダイオライト記念(JpnII)当日には、桜の花のモチーフをタテガミに編み込み、レースを華やかに盛り上げていました。

 「チャラオは今年10歳。空気を読める賢い馬です。細くて柔らかめ、猫みたいな毛質で乾きやすいから、洗った後も他の馬より少し手入れがラクですね。わが道を行くタイプですが、スノー(タカラスノーウェーブ)のことが大好きでよく絡んでいますよ(笑)。そんな時、スノーは『仕方ないなぁ』という感じです。スノーはどっしり先輩格ですね。ブリランテは寝藁をもぐもぐしてしまって(笑)」。そんな話を伺っている時も、スノー先輩の馬房に向かって、しきりに顔を寄せているチャラオの姿がありました。

nf202003picアップ用.jpg 「現役時代にチャラオを管理していた岡林先生(調教師)も、『チャラオ、頑張ってるなぁ』って時々見に来てくださいます」とのこと。そんな時のチャラオは「あ、先生だ」とちょっぴりしゃきっとするそう。以前このコラムでもお伝えしましたが、誘導馬になったばかりのチャラオが、自力で岡林厩舎に里帰りしたことがありました。その時、「帰って来るなんて嬉しいよなぁ。涙が出るようなぁ」と先生が話していましたっけ。

 さて、誘導馬たちが楽しみにしていること。それは、お仕事の合間に貰えるご褒美おやつ。「この人はいつもくれる人、この人は時々くれる人」などしっかりと見分けていて、もらえないと分かるとすっと諦めて馬房へと帰って行くのも微笑ましい姿です。(チャラオの場合"チャラオの塩対応"と言われています)

 「無観客は寂しいですね。早く終息して、安全な環境のもとでまた皆さんに誘導馬の姿を見て、競馬を楽しんでいただければ」(佐藤さん)。開催中、凛々しい姿で馬上から笑顔で手を振る華やかさの一方で、水汲み、寝藁上げ、ボロ掃除など、目に見えないたくさんの業務をこなしている誘導馬スタッフの皆さん。信頼と愛情のもとで、一生懸命仕事に取り組む誘導馬たち。歓声が聞こえる競馬場で再会できる日を、楽しみに待っていたいと思います。