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南関フリーウェイ

阿部典子 南関フリーウェイ

第68回 2020年ジャパンダートダービー(JpnI)

 7月8日、大井競馬場で行われた第22回ジャパンダートダービー(JpnI)を制したのはJRAのダノンファラオ。管理する矢作芳人調教師、鞍上の坂井瑠星騎手ともに大井ゆかりのホースマン。そんな師弟コンビで、嬉しいJpnIタイトルの獲得となりました。

 今回も規制されている中での取材。撮影可能エリアとなっている植え込みの手前、背伸びをしながら見る光景に「あぁ、今のってすごく素敵なシーンだったに違いない・・・」と歯がゆい思いをすることも多々。周囲のカメラマンたちからも、そういった"気"がひしひしと伝わってきました。

 しかし、規制中の位置だったからこそ、撮ることができた写真もありました。それは、ダノンファラオを撫でる関係者の姿を、ちょうどこちら向きで見守る矢作調教師の優しい笑顔。普段から口取り撮影後のふわりとほどけた空気の中、馬への愛情が伝わる場面は「素敵だな」と思っているのですが、まさに今回も。ああいったシーンを知ることが、応援する気持ちや競馬への想いをさらに強くさせるのだと、改めて思う光景でもありました。

 そのダノンファラオがゴール板を駆け抜けてからほんのわずか後、馬群の外からビュンと視界を駆け抜けて行った馬。それは、船橋から出走したブラヴール(佐藤裕太厩舎)でした。

 ご存知のように、南関東重賞ウイナーのセレンを父に、唯一の南関東3冠牝馬チャームアスリープを母に持つブラヴール。3月の京浜盃(SII)で重賞ウイナーとなり、4月の羽田盃(SI)は2着。6月の東京ダービー(SI)での走りに大きな期待が寄せられましたが、疾病で競走除外に。

 東京ダービーは5月に急逝した佐藤賢二調教師から引き継いだ初戦。チャームアスリープの最後の産駒。"東京ダービー"というたった一度の大きな夢の舞台。仕上がりの良さ・・・。そんな中での「除外」は、ブラヴールに携わる皆さんにとって、どれほど無念だったことでしょう。けれど、それは、この先に向けての前向きな決断だったことが、山口圭子オーナーのお話から伝わってきました。 アップ用nf202007pic.jpg

 「東京ダービーは、ブラヴールのこれからのための除外でした。無理はしないで欲しい、東京ダービーに出なかったことを無駄にしないで欲しいという気持ち。ブラヴールにはセレンのように古馬になってからの活躍も期待しています」(山口オーナー)。この日、ブラヴールが着けていたメンコは、セレンの白とチャームアスリープのピンクをモチーフにした、山口オーナーからの愛情たっぷりの贈りもの。「最初、Bravoureはプリント文字だったのですが、刺繍にしてもらいました。耳(の部分)は取り外せる方がいいということで、外せるようにしたんですよ」とのこと。「(担当厩務員の)楠さんに揃えてもらったタテガミがサラサラできれい。悲しいこともあったけど、この場にブラヴールがいられることは素晴らしいこと。周囲の皆さんに心から感謝しています」(山口オーナー)。新馬勝ちした時、虹が出ましたねと言うと、「そうそう!ドラマチックでしたね」。そんなお話をしながら、セレンとチャームアスリープの仔という南関東競馬の夢の血統が、たった16頭の中、生涯1度しか出られない大舞台に臨んでいるという事実は、奇跡、ミラクル、競馬の神様の・・・。ピタリと当てはまる表現が見つからないほど、かけがえのないものだったのだと思います。今回も無観客でしたが、大歓声の中での勇姿を楽しみに待つことにしましょう。セレンとチャームアスリープの"良いとこ取り"と、愛情いっぱいの表現で伝えられたお顔立ちにも注目です。

 そういえば、取材規制で思わぬ発見もありました。撮影場所に指定されたスタンド3階は、実は夕映えスポットだったことが判明。日没後にどんどん赤く染まっていく美しい空とビルのシルエット、馬がいる風景は格別でした。あの美しい空の下、大都会の中にある競馬場が、再び賑やかな場所となる日が早く戻ってきますように。