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南関フリーウェイ

阿部典子 南関フリーウェイ

第85回 「記録と記憶」を集める日常のプチ取材進行中。

 12月のある日、船橋競馬場の厩舎地区を歩いていると、地面に今までなかった「切れ込み」を見つけました。下水工事の跡とのこと。現在進行中の大規模リニューアル工事に伴って、目に見えるものからそうでないものまで、いろいろな場所が変化しているようです。

 長年親しまれて来た厩舎の一部も取り壊しが決まっており、スタンド東側の"本厩"にあった坂本昇厩舎や佐藤裕太厩舎は、スタンド正面にある"海岸厩舎"に移転済み。2006年のオーシャンステークスの勝ち馬・ネイティヴハートや、引退が決まった後のアジュディミツオーが暮らした懐かしい建物も、近々その姿を消すことになっています。

 馬や人が去った場所に立つと、これからのための記録としても、これまでの記憶としても、移り変わっていく風景を少しでも多く撮り残しておきたいと思うことも多々。馬たちを見守っていた木々の姿にも名残惜しさを感じます。

 今回掲載した写真は、馬や人が去った場所に、ポツンと1輪のバラが咲いているのを見つけた時のもの。このバラは、幾度となく馬たちを見送り、迎えて来たのでしょう。「忘れないでね」と言われたようで、思わずシャッターを切りました。

nf202112pic.jpg 工事の対象には矢野義幸厩舎の一部も含まれており、11月3日に金沢競馬場で行われたJBCクラシック(JpnI)で地方所属馬初の優勝馬となったミューチャリーも、新しい場所(本厩舎・椎名廣明厩舎があった場所)へとお引越です。

 ミューチャリーといえば、矢野調教師お手製の「ホワイトクローバー(シロツメ草)」を食べていることでも話題になりました。冬になり、気温が低くなって葉も小さく、収穫量も減っているとのこと。それでも、摘みたてのクローバーを手にした矢野調教師が近づくと、「わぁぁい♪」という声が聞こえてきそうなほどだったミューチャリー。「早く!早く!」というように頭を振っておねだりしていました。

 「これは9月に種を蒔いたもの。この秋は雨が多くて、地面が緩くなってなかなか根が張らなくて苦労したね。クローバーは締まった地面じゃないと上手く育たないからね」と矢野調教師。雑草取りも大変そうです。洗い場近くには青草置き場があり、他の所属馬たちも愛情いっぱいのクローバーを満喫しているのが伺えました。

 ガーデニング好きとしても知られている矢野調教師。「植木屋さんに相談したら、木の移植は無理だろうって言われたんだよねぇ」と、厩舎の傍らのサクランボの木に視線を向けて残念そう。5月になると美しい花がたくさん咲く、自慢の黄色いバラの移植についても思案中のようでした。

 コロナ禍の影響で、それまでのように厩舎関係者からちょっとした話(これがとてもありがたいのです)を聞く機会もめっきり減ってしまいましたが、その分、今まで以上に会話を大切にしようという思いも強くなりました。

 競馬場のリニューアル関連の話題も多く、厩舎関係者ならではの話を聞けることも。「(本厩は)装鞍所に向かう時に馬場を通る。その時に暴れたり、テンションが高くなってしまったりする馬もいるから、それが無くなるのはありがたい」とか、「(リニューアル後は)レースに行くときに馬場を通らないから、レース時間のずれ込みを計算して早目に出発しなくても良くなりそう」等。そういえば、新馬戦前の厩舎の洗い場で、「(内馬場の)ビジョンを馬が気にするかも知れないから、気を付けて(装鞍所に)行こう」と話をしているケースもありました。

 大規模リニューアル工事は、2022年3月頃にはパドック横のアタリーナと、東側に残っているスタンドの解体が始まり、2023年10月には新スタンドがグランドオープンする予定とのこと。たくさん写真を撮っておかなくては。
余談ですが、取り壊し予定の厩舎には、今では貴重なお品となっている昭和型板ガラスが使われている窓も。これからお引越しの方々は、レトロなガラス窓も、新しい場所へと連れて行ってあげて欲しいなぁ、と思ったりもしています。