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第116回 藤田菜七子騎手を見守り支える師匠、兄弟子の存在 ~一方で早い引退を決意する若手騎手も~

2019.11.20
 かれこれ5年になるでしょうか...、10月になると我が母校でもある競馬学校騎手課程生徒の模擬レースに参加させてもらっています。
 
 とは言っても、もちろんレースで一緒に乗るわけではなく、一般公開されるとあって、日々、騎手課程生徒たちが、どのような訓練を受けているのか?足を運んで下さったお客様方に向け、木馬を使ってのトレーニング説明をしたり、模擬レースを終えてのトークショーの司会としてお邪魔しています。

 今年は4名の生徒が来年のデビュー予定を目指しており、そこに現役騎手の丹内騎手、丸山騎手、野中騎手が参戦する形で、2レースが行われました。

 実はこの日、藤田菜七子騎手も参戦予定をしており、根本厩舎所属の3人が揃うことになっていたのですが、直前に門別競馬場での騎乗が決まり、不参加に。現地では、そのことを説明する師匠・根本師の姿があり、話は東京盃での重賞制覇のことに。

 何でも、あの日の朝、根本厩舎の大仲では、コパノキッキングでの乗り方について、菜七子ちゃんが、丸山騎手に、「どうやって乗ったらいいですかね?」と相談していたとのこと。そこで丸山騎手は、「内枠だけど、控えても能力が抜けてるから、大丈夫。差しきれる。とアドバイスしたら、ナナコも、そうですよねと言っていたのに、レース見たら逃げてた」と、先輩のアドバイスを無視したかのような内容に、その場は爆笑。

 またもう1人の兄弟子である野中騎手は、「僕には相談がありませんでした」と、話をかぶせ、さらに笑いが。

 そして根本調教師は、「ナナコに見つからないように、そっと大井競馬場で観戦していたんだけど...」と、当日は、愛弟子の緊張を少しでも軽減しようと配慮されていました。

 その会話に、今のナナコちゃんの活躍は、彼女自身の努力はもちろんですが、素晴らしい師匠と兄弟子たちの存在も大きな要因なのだと、感じました。

 以前読んだある本の中で、「人は人と交わり、人の間で生きることで、人から人間となって成長をしていく」と書かれた文面がありましたが、まさにそのことを思いだしましたし、デビュー当初から1鞍でも多くの騎乗機会をもたせようと、同期たちよりも一足早く地方競馬でのデビューをさせるなど尽力されるとともに、メディア慣れをされている根本師だからこそ、マスコミへの対応や、彼女自身が置かれている立場を的確にアドバイスされていたように思えます。

 東京盃の話題を中心に、根本師と丸山騎手と野中騎手が、わきあいあいと楽しげに話す姿に、ナナコちゃんは本当に良い環境の中で日々の調教に励んでいるのだなぁ~とホッコリしました。

 その一方で、対照的とも言える形で騎手の幕を閉じたのが関西の義英真くん。

 2014年デビューですから、騎手生活は6年弱。私も似たような年数での引退でしたから、何とも言えないですし、実際、彼と深く話をしたことがないので、彼がどんなことを感じ、何を思って決断をしたのかは分かりませんが、まだ24歳という年齢を考えると、本人の資質だけの問題と片付けてしまうことや、深層がみえないまま現場から姿を消してしまうことに対して、いろんな意味で残念だと思えてしまいます...。
 皆さんは、どうお感じになられますか?

 それではまた来月、お逢いしましょう。

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