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第115回 トレヴのヘッド元調教師の講演にて ~自分の目で見、肌で感じ、対話をする大切さ~

2019.10.17
 この原稿が掲載される頃には、2019年の凱旋門賞馬が誕生しているのでしょう。
 史上初となる3連覇の偉業を、牝馬・エネイブルが成し遂げているのか?はたまた、スピードシンボリで挑戦し続けてから50年となる節目の年に、日本馬悲願の凱旋門賞馬が誕生しているのか?いずれにしても歴史的瞬間となりそうな1戦、楽しみでなりません。

 さて凱旋門賞と言えば、以前トレヴで連覇を果たした女性調教師クリスティアーヌ・ヘッド氏のことをこのコラムでも書きましたが、そのヘッド氏が先月来日され、栗東トレーニングセンターで講演会が開催されました。

 私がヘッド氏に感銘を受けたのは、トレヴにおける鞍上ジャルネ騎手に対するコメントや、ジョッキー選択における発言。

 まず最初の勝利後、早めスパートから押しきる内容に、「勝ったけど、馬に負担の残る良い勝ち方ではなかった」と発言をし、連覇の際には、「最高の騎乗をした」と、ジャルネ騎手を褒め称えたのです。

 勝ったから=良いではなく、常に馬を中心として物事を見る判断とコメントに感銘を受けるとともに、立場に関係なく、ストレートにものが言いあえる調教師と騎手の関係性や、そのことがメディアを通してもストレートに伝わる状況に、素晴らしさを感じました。

 そのヘッド氏が来日ということで、主人と共に参加。想像していた通り、常に馬を観察し、馬の精神状態をフレッシュかつストレスなく過ごせるように配慮されると同時に、馬だけでなくスタッフや主戦となる騎手の心理面も読み取られての判断や選択、采配をされていました。

 特に連覇のかかった凱旋門賞時においては、馬のコンディションを信じきれていないジャルネ騎手の心理を汲み取り、これまでとは違う少し強めとなる追いきりに踏み切ったことを告白。

 結果、ジャルネ騎手は、馬を信じた迷いのない騎乗で連覇へと導いたわけですが、ヘッド氏の口振りからは、今もなお、許容範囲内での選択だったとは言え、馬に対しては、それが必ずしも100%正解だったと感じていないようにも取れました。

 また普段から、獣医師の治療に頼りすぎない管理をされていたとのことで、その背景には、「仮に馬に痛みがあり、薬による治療で緩和されたとしても、それは目に見える一部分や一時的に隠すものであって、根の部分までを治したことにはなっていないと思うから」と。

 この言葉、裏を返せば、常に深い視点と1頭1頭の本質を見抜いているからこそ言えるものなのではないでしょうか...。

 これまでヘッド氏は、朝200頭以上管理されていた馬の背中や脚元の全てを触り、状態を確認&把握されていたとのこと。

 常に自分の目で馬を見、肌で感じ、対話をされてきた日々の蓄積が、揺るぎない調教理論や馬作りの根幹となり、信念のある、ぶれない考え方が構築されているのだと、今回の講演で改めて感じました。

 と同時に、つい先日6歳となった息子の同級生のママ友が、「3歳や4歳の時に困り果てる行動をとっていても、根本の部分で親が子供のことを理解していたら、対処や対応も違うし、それこそ良い意味でカマイスギナイ選択もとれる。結局は傍にいる大人次第な気がする」と、通り過ぎた過去と、今現在目の前で奮闘する下級生たちのママの姿に、ふと呟いた言葉が重なりました。

 来年から息子も、いよいよ小学生。最近では私の方が励まされることや、言葉の選択に驚かされ学ぶことも多々あり、これまでとははまた違った、不思議な感覚を子育てで、味わっています。

 それでは皆さん、また来月、お逢いしましょう。

 ホソジュンでしたぁ。

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