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馬ミシュラン

小山内完友 馬ミシュラン

第27回 陰謀説

 攻め馬の時にはあまり気付かなかったが,レース当日になって,誰もが「ちょっと速いね」とつぶやくようになった,昨年末の大井の馬場状態。

 24,25日の「クリスマスナイター」は重馬場だったこともあり,「まあ,こんなものかな」といった感じだったが,有馬記念が終わり,恒例の年末開催になってからは,さすがに誰もが気付いただろう。

 極め付きは29日に行われた東京大賞典(JPNⅠ)。スマートファルコンが叩き出した勝ちタイム2分0秒4は東京大賞典,大井競馬場2000mはもちろんのこと,ワンダースピードが2007年に阪神競馬場のベテルギウスSで記録した2分1秒0を,0秒6更新する日本レコードであった。

 急に注目されるとファンの反応がおもしろい。「国際GⅠのためにレーティングを上げようとしている」とか,「JRAに言われて砂を削った」とか,特に人為的な「陰謀説」が多かった。さすがにそんな分かりやすい陰謀もないだろうし,そんなことで簡単にレーティングは上がらない。

 実際競馬場に聞いてみたら「よくわからないんですよ~」という怪しい(笑)答えが。それではと思い,口取りのドサクサに紛れ,足で馬場の砂を掘ってみたところ,砂厚は標準,砂粒は減っていてシルト状,下のセット層がつま先では掘れないぐらい硬い,という独自の調査結果。路盤が硬いと言うのが結論だ。実際,目の前を通る馬の蹄音も硬い。

 よく「地方競馬の深い砂」とか「地方競馬の重い馬場」と言われるが,よくよく調べて見ると,JRAのダートコースが砂厚9cmに対して,南関東の場合は船橋と川崎が8.5cm,浦和が8cm,大井は日本で最も薄い7cmとなっている。砂もともに同じ青森県六ヶ所村の海砂。よく競馬新聞やスポーツ新聞に書かれている前述のくだりは,「思い込み」だったという事になる。もちろん盛岡や名古屋,高知,園田などは10cmから,深いところでは13cm。砂質も山砂だったり川砂だったりで,一概に「思い込み」とは言えないが,少なくとも南関東に関しては,JRAのダートコースよりも薄い。思い込み,である。

 ではなぜそのように言われるようになったかと言うと,もちろん小回りコースでスピードが乗り過ぎるのを防ぐ意味もあるが,大井の場合,「ナイター砂」の存在も理由のひとつだろう。

 トゥインクルレースが始まったのが1986年。その時導入されたのが,ナイター照明に映える「ナイター砂」と呼ばれる白っぽい海砂だった。2000mで行われていた羽田盃の勝ち時計を見ると,初年のハナキオーこそ2分6秒9だが,以降2分10秒1,2分11秒0,そしてロジータが2分10秒2。アウトランセイコーが10秒の壁を破り2分9秒5,1991年以降は現行の砂厚となり,2分5~7秒台に落ち着いている。

 ナイター砂は目が細かく,踏んだ感じはパウダーに近い。恐らく調教や競馬で削られて,シルト状になりやすいのだろう。いわゆる「砂」のような粒々感が,他所に比べ薄い。一般的には「ナイター砂は時計が掛かる」と言われているのは,そういった部分も影響しているのだろう。

 もちろん砂厚だけではない。路盤も走破タイムに影響する。最近,大井競馬場が路盤改修したのは2007年1月から2月にかけて。その時に,クッション砂の下の層となるセット層と呼ばれる部分を4.5cmから1.0cmに削っている。「過剰なセット層を適正な厚さまで撤去し,良好な馬場状態の維持に努め,競走馬の脚部への衝撃を緩和する」と説明にあった。大井競馬場のコースは競走だけではなく,普段の調教にも使われているため,固くなりやすく路盤の痛みも早い。また頻繁な改修もできない。当然,故障も増えてくる。

 JRAがダートの砂厚を9cmにした理由のひとつとして「故障の軽減」を挙げていた。調べてみたら,年末年始の大井の馬場はどうだったかというと,1年前の2009年12月28日~31日と2010年1月18日~22日の競走中の故障馬が9日間で1頭であったのに対し,2010年12月24日~31日,2011年1月31日~2月4日の12日間は7頭であった。確かに増えている。

 2月に入ってもこの傾向は相変わらずで,時計は速く,競走を中止する馬も若干多いように感じられる。予想も難しい。やっぱり陰謀?