JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第51回『迫る払戻率70%』

2013.03.11
 2月1日、名古屋競馬の経営改革委員会が行われた。まだ委員会の議事録がアップされていないが、新聞の報道によると「2014年度から払戻率を現行の75%から70%へ下げれば黒字化する」との試算がまとまったとのこと。またそれにより、競馬存続の方向に流れが傾いたとも。
 名古屋競馬は1949年(昭和24年)に開設され、ピークの1974年には735億円、また地方競馬全体のピークとなる1991年も608億円の売り上げを得て、17億円もの単年度黒字を達成している。大方の地方競馬と同様に、それ以降下降線を辿り、1992年度から2004年度まで13年連続で赤字を計上。2005年度には黒字に転換したものの、2010、2011年度と2年連続の赤字となった。2004年度には累積赤字が40億円を超えるに至り、増減はあるものの、現在までほぼ同程度の累積赤字を抱えている。

 経営改革委員会では、このまま払戻率75%で推移すれば2013年度には約6,200万円の赤字が予想されるが、払戻率を70%へ下げた場合、2014年度には4億5,600万円の黒字になると試算している。その上で、約40億円の累積赤字を少しでも解消できるよう、黒字の間は競馬事業を続けるという認識でまとまったという。

 もちろん、再び右肩上がりになるとは誰も思っておらず、試算の資料も2014年度の4億5,600万円をピークに、2015年度4億2,500万円、2016年度2億9,300万円、2017年度2億3,200万円、そして2018年度には1億300万円まで縮小するとの見立てである。極めて現実的な試算ではあるが、裏を返せば払戻率70%であと5~6年の猶予を許されたに過ぎないし、累積債務40億円を完済出来るならまだしも、15億円程度の返済では根本的な解決案とは言えない。委員からも「当面の延命策にすぎない」との意見が出され、さらなる経費の削減や、長期的に存続できる計画を求める意見が出されたという。

 「悪しき前例」と言うべきか、払戻率を70%に下げたオートレースはその後どうなったか。本誌2012年6月号と同様、川口オートレース場を例にとってみる。

 総車券売上額では比較が難しいので、本場のひとりあたりの平均購買額で見ると、4月15,800円(前年なし)、5月15,800円(前年比101.9%)、6月から払戻率が70%となり、14,700円(同93.6%)といきなり減少。7月15,000円(同105.6%)、8月14,900円(同100.7%)、9月は開催なく、10月13,100円(87.9%)、11月13,700円(93.8%)、12月15,800円(92.4%)と6月を境に明らかに減少している。

 また、4月から12月までの川口オートの開催成績をまとめると、開催日が70→77日と前年比で7日増加したにも関わらず、総車券売上額は149億8,754万2,600円(前年比94.3%)と、5.7%の減少となっている。オートレース全体でも開催日が38日も増えたにも関わらず、総車券売上額は前年比91.8%に終わっている。

 ちなみに、川口オートが2011年度比7%の減と見込んだ予算のラインを200億円と仮定すれば、1~3月であと約50億円を稼げば、一応の目論見は達成出来る計算になる。2月にG1をひと開催抱えているので、このまま推移すれば、一応目標は達成可能ではないかと思う。

 もちろん、名古屋競馬同様このままの水準で推移するとは思っていないだろう。名古屋の試算は平均で22%の下降率だが、川口オートの場合、仮に7%減の93%とすると、来年度は186億円、2年後に173億円、以降161億円、150億円と減少してゆく。いや、実際はもっと速いスピードかもしれない。当然、増えた5%分も割合に応じて中身は減るに決まっている。実利よりも、ファンに与える心理的影響の方が優っている。

 名古屋競馬の経営改革委員会の委員からは「随意契約の見直し」「人件費のカット」などを求める意見が出され、それに対し組合は「発売窓口の削減(従事員の削減?)」や「ネット発売委託手数料の引き下げ」などを回答。給与については、県の体系に準じている事を理由に難しいと答えた。

 払戻率同様、他者に泣いてもらおうというその姿勢に突っ込みを入れたい気持ちだが、残念ながら紙面が尽きた。続きはまた次の機会にでも。
トップへ