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第121回 『カレンダーの季節』

2019.01.21
 さて質問です。みなさんの周りにカレンダーは何部飾ってありますか?
 本誌の読者層であれば、毎年何本ものカレンダーを貰っていると思われる。競馬の主催者関係、農協関係、各種生産関連団体、飼料、資材、機械、保険、金融関係まで、様々な団体や企業がカレンダーを制作し、配布している。

 さらに自社制作のカレンダーであったり、同業他社のカレンダーであったり、場合によってはファンの方が制作してくれたカレンダーだったり。

 筆者も毎年数十本のカレンダーを頂いていて、同僚と交換したり、知り合いにあげたりする。自宅には一応自社カレンダーを貼っている。

 馬のカレンダーは必ず誰が撮った写真かを確認する。大体知り合いだったりすることが多く、この時期、現場で会ったら写真の話題になる。ただし、それより前はプレゼンだったり入札だったり色々勝負の世界(笑)なので、カレンダーの話題は一切しなかったりする。終われば基本ノーサイドだが、そうもいかない人もいたりして、時に場が荒れることもある。

 筆者の場合は会社所属のカメラマン、いわゆる「社カメ」なので、基本自社カレンダーのみであるから平和なものだ。同業他社のカメラマン同士で、和気藹々、写真談義である。

 毎年沢山のカレンダーが流通しているが、カレンダー市場自体はかなりの縮小傾向にある。90年代のカレンダー市場は部数にしておおよそ3億部、金額ベースでは調査機関により大きく異なっていて、600億円とも800億円とも言われている。しかし現在は2億部、400億から600億円で、年々縮小傾向にあると言われている。

 その半分は大手印刷会社が印刷する大企業向けで、半分が中小企業や個人等である。カレンダーは大きく分けて1~12月の年単位のものと、4~翌年3月の年度単位のものだが、全部数の50%が12月に売れていることからも、多くは年単位のものであると思われる。年度単位の代表的なものと言えばジャニーズ事務所のカレンダーで、これはファンの主力がティーンエイジャーだけに、年度単位のいわゆるスクールカレンダーは顧客層にマッチしている。

 競馬のカレンダーに大事な要素は当然馬の写真だろう。レースだったり、牧場だったり、あるいはオフショットであったり。それに加え、我々マスコミが発行するカレンダーは、開催日程の掲載が必要なファクターとなる。

 作業の手順としては、基本的には経営委員会なりの会議の後、次年の開催日程が発表されてからカレンダー部分の制作が始まるのだが、フォーマットはあらかじめ決まっているので、作業自体は毎年同じだ。そして肝心の写真部分はそれよりもはるか前の段階で、写真の上りを見て候補作を決めている。デザイナーが最も気を遣うのは、あるいは我々がデザイナーから最も注文、苦言を受けるのはやはり写真の出来である。

 日刊競馬カレンダーの場合、カメラマンは筆者を含め4人いるが、筆者は地方競馬専門で、かつ毎年7月担当なので、ジャパンダートダービーに全身全霊を注ぐだけだから、ある意味楽である。とはいえ、弊社のカレンダーはサイズが大きく、写真も大きいため、下手に撮ると修正が難しくなるくらいのアラが出かねない。例えば水平が取りづらい場合画像の角度を回転させるが、その際に余白がなければ切れてしまう。また、ページをめくる度に馬の大きさが異なっていると、なんとなく気持ち悪い。カットが違えば問題ないのだが、同じゴール板付近の写真が続く時は、これがひじょうに気持ち悪いのである。もちろん個人的な好みの問題でもあるのだが、出来る限り一定の画角で撮るようには心がけている、一応は。

 そして売り上げを左右するのは、なんと言っても表紙。これが一番大事かもしれない。

 今年は比較的早い時期にアーモンドアイで決まっていたが、大体牡馬クラシック馬か、古馬の強豪馬が相場で、牝馬のクラシック3冠馬を表紙に据えるのは割と勇気がいる。例年発売開始がマイルチャンピオンシップの週だから、制作はそれよりも前で、印刷、製本を考えればリミットは天皇賞(秋)の付近である。今年は各社ほぼ一択の状況ではあったが、もし選択を誤れば営業からどやされることは必至だけに、ジャパンカップでインパクトのある勝ち方をしてくれて、カレンダー担当デスクは正直ホッとしていることだろう。

 実際「写真で選んだ」というお客さんは多い。競馬カレンダーの主役はやっぱり馬だ。
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