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第122回 『NARグランプリ 2018』

2019.02.25
 1月16日、「NAR GRANDPRIX2018」の各優秀馬が発表された。一昨年より委員の任期が2年になり、今年が更新年だった。人材豊富な専門紙協会だが、交通費等経費の安さを買われ?今年も選考委員の末席に加えさせて頂いた。
 今年の選定委員会は1月10日、地方競馬全国協会に於いて行われた。我々専門紙協会推薦の2名は、委員会の前日、東京に集まり各地の意見を聞く会議?宴会?を開催している。内容はほぼほぼ新年会なのだが、各地各紙の現役編集長や、チーフトラックマンの意見はひじょうに勉強になる。会議のあとの宴会中に鋭い意見を投げかけられることもあり、「それ、さっき言えよ」と思うこともあるが、その言葉で気持ちが揺らぐことも多い。もちろん本会議はそれぞれの委員に付託されているので、あくまで委員の見解を述べるのだが、今年はある意味難しい会議であった。

 最大のヤマ場は最初にやってきた。2歳最優秀牡馬・せん馬である。

 候補馬は10頭だが、ほぼ3頭に絞られていた。コスモス賞に勝ち、札幌2歳ステークス(GⅢ)2着のナイママ(北海道→川崎)、そして北海道2歳優駿(JpnⅢ)の1、2着ウィンターフェル(北海道)とイグナシオドーロ(北海道→川崎)。

 起こったことについては皆さんご存知の通り。それをどう評価するかに、各委員頭を悩ませてきたと思う。筆者もそうだ。まず着順の取り扱い。それについては事務局より変更の可能性もある、とのアナウンスがあったものの、それ以前に競馬法から実施規則までいろいろ調べてはみたが、そもそも確定した着順が変更になることは、禁止薬物等による失格ぐらいしか規定されておらず、確定した着順が誤っていたので変更するということは規定されていない。

 優秀馬選定委員会もまず結果を重視するよう規定されている。そうでなければ、「ダートグレード競走に勝った馬よりも、デビュー戦で圧勝したあの馬の方が素質は高いから上だ」という意見が出かねない(山野さんごめんなさい)。それはそうなのかもしれないけれど、それでは会議が成り立たないし、タイトルの意味がなくなる。だからタイトルと格は一番に尊重されなければならない。

 我々専門紙協会のメンバーも現状着順が変わらないことは承知なので、前夜の宴会では北海道2歳優駿(JpnⅢ)1着と全日本2歳優駿(JpnⅠ)地方馬最先着の5着でウィンターフェルではないか、という意見だった。「実績重視」なら間違いなくそうだろう。

 ナイママという手もあった。実績は例年なら最優秀ターフを受賞してもおかしくない。ただ今年に限っては「逃げた」と思われかねない。それはそれで馬に失礼だろう。結果ターフ部門ではハッピーグリンとの直接対決で0票だったが、これは相手のインパクトが強すぎたので仕方ない。

 話を戻す。会議の流れを変えたきっかけは「着順変更の可能性」を示唆されたことが大きい。今は変わらないかもしれないが、何年後かに変わるかもしれない。仮に変わった場合、ウィンターフェルは北海道2歳優駿(JpnⅢ)2着で、おもな勝ち鞍はウイナーズチャレンジ、ターフチャレンジになる。レーティングは着順に関係なく、イグナシオドーロ103、ウィンターフェル102。この結果が将来に残ることも考えると、会議の講評にもあったように「パフォーマンスを重視して」筆者はイグナシオドーロを選んだ。

 イグナシオドーロ10票、保留1、棄権1という結果が、各委員の胸の内の苦しさを表している(ような気がする)。

 印象に残ったのは、ある委員の「ブラックタイプが付くか付かないで、馬の人生(原文ママ)が変わる」という意見。イグナシオドーロの父ヴィットリオドーロ(USA)にとっても、せめて正当な評価を与えたい、という気持ちだろう。そういう意味でもこれで良かったのではないかと、個人的には思っている。

 昨年も例年通り2歳、1400m以下の短距離での活躍が多く、結果を出したのに選定できなかったカテゴリーがある反面、3歳牡馬・せん馬や、4歳以上牝馬では割れる局面もあった。何よりも4歳以上の中距離での活躍馬登場が待たれる。そこが盛り上がらないと、新聞が売れない(笑)

 兎にも角にも今年も無事委員会が終了した。NARグランプリ2018は2月25日、都内のホテルで開催される。受賞馬の関係者の皆様、受賞者の皆様、受賞おめでとうございます。2019年もさらなるご活躍をお祈りしております。
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