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第128回 『降級制度廃止の余波』

2019.08.26
 今年の夏番組から、JRAの降級制度が廃止された。さすがにJBBA NEWSを購読されている層に降級制度についての説明は不要と思われるので割愛する。これが競馬雑誌や競馬サイトの原稿だと「そもそも降級制度とは」から始まらなくてはならないので、本題のスペースが減る。
 本件が最初に表に出たのが2016年11月末のスポーツ報知のコラム。その間に様々な妄想や噂がどんどん膨らみまくった。1600万の上にもうひとつクラスが創設されるとか、早々に見切りをつけて地方競馬に移籍する馬が増える、というものだった。

 そういえば6歳(現5歳)の降級があった頃は「6歳以上2700万下」ってあったよなあ、なんて過去の新聞までひっぱり出してきて懐かしい話でよく分からない盛り上がり方をしたのだが、それが無くなったきっかけの代表例として挙げられるのが、ビギンザビギン(父コンメモラテイーボ(USA)母:トミコール)である。

 ビギンザビギンは1985年6月9日、とっくにダービーも終わった東京競馬場の4歳未勝利戦(当時)でデビュー。15頭立て15着だった。初勝利は7戦目の11月7日福島の4歳未勝利戦。4回福島だから、もう本当に最後の最後。さらにその開催で400万の蔵王特別に勝ち2勝目を挙げ、900万クラスに昇級。ここでは2着が多く勝ち切れず、5歳(当時)3月以降休養。

 復帰戦は400万に降級した86年12月の中山。復帰後3戦目となる900万の初春賞を格上挑戦で勝ち、900万クラスのレース1勝目。収得賞金(番組賞金)は1250。

 次に勝ったのが87年7月の信夫山特別で900万クラス2勝目。信夫山特別は「サラ5歳900万、6歳1800万、7歳以上2700万下」だが、ここを勝っても収得賞金1750だから、余裕で再び900万クラス。

 3勝目は新潟の日本海ステークスで、1番人気のカシマウイングを差し切って勝利。収得賞金は2250で、まだまだ900万クラス。

 4勝目は9月の中山の平場。当時の日刊競馬には「目下2連勝を含むこの条件3勝の実績断然」と書いてある(笑)。このレースに勝ち、収得賞金は2650なので、なんとギリギリ900万クラス。

 続く東京開催で2着した後、脚部不安で放牧へ。休養明け初戦は8か月後の福島競馬、松島特別。さすがに休み明けで押さえの評価だったが、鞍上に岡部騎手と陣営はやる気満々。案の定、このレースに勝ち、900万クラス5勝の偉業?を達成している。

 88年の夏番組から「6歳上」(現5歳)の条件がなくなり、降級は廃止されている。31年前の話だから、覚えているのはおじさん世代以上だ。

 さて、話が大分逸れたが噂の検証。降級の廃止が正式にJRAから説明されたのが2017年8月末。その時配布された「平地競走におけるクラス分けの変更について」という紙を読むと、1000万クラス以上の在籍頭数が増えるものの、最終的にはオープンに昇級してゆく。ここで収得賞金の少ないオープン馬が除外にならないように、「別定A、別定B」が組まれる。オープン内でクラス分けされる格好で、実質的に上のクラスが細分化されている。1600万の上にクラスは創設されてはいないが、まあ半分正解といったところ。

 もうひとつは、地方への転入が増えたかどうか。大井競馬が出している転入馬の一覧を集計すると、2018年の1回~7回開催のJRAからの転入馬は36頭だった。それが2019年は51頭。大井競馬だけで15頭の増となっている。
 この中にはノンコノユメなど別な目的の転入馬も入っているので単純に増えた!とは言えないが、南関東4競馬場の総数を(面倒くさがらずに)数えれば、少なくとも目視で60頭程度の増加があり、地方競馬全体だと3ケタの増加にはなるのではないか。

 数はともかく、馬柱担当者に聞くと「今年は転入の動きが早い」と言っていた。それを裏付けるかのように、競馬場でよく会う馬主さんも「去年の暮れぐらいから馬房が空いてない」と。かといって抽選もれラッシュかというとそうでもなく、番組で確認しても、自場の抽選もれは毎開催多くても3頭程で、今年の上半期は番組に対してほぼ適正な在厩頭数で競馬が行われている印象だ。

 7月からは例年通り「夏枯れ」が始まり、開催日数も予定通り4日開催で収まっている。そういう意味では、余波はほとんどないようだが。

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