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第163回 『クラシック反省会』

2022.07.25
 毎年、7月号は南関クラシック、主に東京ダービー、関東オークスの回顧ならぬ、反省会会場と化す当コラムだが、なんと今年は馬券的不参加となってしまった。
 ◎ミヤギザオウ、それだけで察していただけるとは思いますが、枠内起立転倒で馬体故障。競走除外となってしまった。

 思えばクラシックトライアルでも枠内で立ち上がりたそうな気配は見せていた。「東京ダービーが目標」と言っていた陣営も、そして◎を打ってそこから全部買った筆者も、「ひじょうに残念」のひと言しかない。でもそれも競馬。

 サルビア特別の時か、実況のアナウンサーさんと、ミヤギザオウのアクセントについて語り合ったことを覚えている。アクセントが「ミ」に来るのか、それともフラットか。そのアナウンサーさんは奥さんが宮城県出身で、ミヤギザオウの馬名の発音には思い入れがあったようで。

 筆者も上山競馬があった頃、2度蔵王の御釜を訪れているが、2度とも綺麗に見えた思い出がある。てっきり山形県か、山形県と宮城県の半々かと思ったら、実は御釜は宮城県の領地であることをつい最近知った。

 今年の東京ダービー馬は浦和のカイル。逃げ先行有利な馬場。状態の良さを活かし、逃げるシャルフジンの番手を取った時点で、ほぼ勝負あったという感じ。積極的なレースを選択した鞍上本橋騎手の好プレーだろう。

 2着は12番人気のクライオジェニック。これまで3勝はいずれもハナか番手のレースだったが、ダービーは11番手の後方待機。4コーナー10番手から上り最速38秒5で2着をもぎ取った。

 これで5年連続南関東デビュー馬の東京ダービー制覇となった。浦和競馬の所属馬の優勝はラッキープリンス以来7年ぶり、また地元大井の所属馬は2016年のバルダッサーレ以降6年勝利がない。

 と、ここまで書いたところでビッグニュースが飛び込んできた。「3歳ダート三冠競走を中心とした2・3歳馬競走の体系整備について」というリリースだ。

 数日前に記者会見のお知らせが届いており、弊社からも1名会見に参加したが、ざっくり書くと、羽田盃、東京ダービーがダートグレード競走となり、JpnⅠに格付けされ、ジャパンダートダービーはこれまでの7月上旬から10月上旬に実施時期が移される。また、兵庫チャンピオンシップが1870m→1400mに距離短縮となり、短距離路線の頂点競走の位置付けになる。

 賞金も羽田盃が3,500万円→5,000万円、東京ダービーは5,000万円→1億円!に倍増。ジャパンダートダービーは6,000万円→7,000万円といずれも増額され、さらに、3競走全てに優勝した馬に対して三冠ボーナス8,000万円を交付。というものだ。

 羽田盃、東京ダービーのような地区重賞として歴史あるレースがダートグレード競走になるのは、おそらく内外から反対、反発があったと思われるが、ファンからも同様の反応があるだろう。

 中央、地方が相互に出走できるようになった、いわゆる「交流元年」と呼ばれる1995年から約27年、地方から中央への出走は毎年数えるほどで、逆に中央馬は地方のダートグレード競走をほぼ蹂躙している状況からも、まず先に思うのは驚異だろう。

 ただ、逆に考えれば目標があると地方に入厩する馬の質が上がる期待もある。もうひとつ考えられるのは、高知優駿などの地方競馬全国交流に南関の馬が今よりも多く遠征する(流れる)ようになるかもしれない。すでに牝馬路線はル・プランタン賞やのじぎく賞、東海クイーンカップ、留守杯日高賞に毎年のように南関から参戦している。GRANDAME-JAPANの成果だが、今回の件が、より馬資源の共有や流動性を高めるきっかけになれば、悪いことではないだろう。

 気になるのは、羽田盃、東京ダービー、秋に移行するジャパンダートダービーが、すべて大井競馬場で行われること。距離も1800m、2000m、2000mでは、見た目変化に乏しい。帝王賞と東京大賞典もそうだが、コース替わりや、距離にもっと変化が欲しい。フルゲート等々を考えれば大井での三冠は妥当ではあるのだが。

 まだ第一報といった段階でトライアル等を含め2・3歳の全体像がはっきりするのはこれからだが、中央だけでなく、より多くの地区から出走してくるような施策も期待したいところだ。

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