北海道馬産地ファイターズ
第203回 『今年のビギナーズセミナー』
今年もJRA北海道シリーズにおいて、函館競馬場と札幌競馬場でビギナーズセミナーの講師をさせていただいた。
それを知っている牧場関係者や知り合いの馬主は、セミナーのブース前にいる自分を見かける度に、「俺も受けていいかな?」と冷やかしに来るのだが、「馬主バッジを付けている方(もしくは競走馬産業に精通している方)は、セミナーの参加をお断りします」と週末ごとにコントのようなやり取りを繰り広げてきた。
ビギナーズセミナーは無観客での開催となった2020年の2月から中止となったものの、有観客での開催が始まってからは、各競馬場で行われるようになり、函館競馬場では2022年の7月から再開されている。
再開当初は参加人数を限定していたものの、現在は函館が約10名、札幌は約15名と、コロナ禍前と変わりない規模となっている。しかも、今年のセミナーは満席となる回も多く、時にはバスの補助席のように通路に椅子を並べて、セミナーを行うこともあった。
定員オーバーでもセミナーを続行した理由とは、20人ほどの団体で競馬場に来られた方たちから、一緒のセミナーを受けさせてほしいとのオファーがあったからである。
ただ、こうしたセミナーは人数が増えれば増えるほど、理解力に差が出てくる。こちらも理解力を高めるために、参加者全ての表情を見ながらセミナーを進めていくのだが、目の中に「?」が残っているような人が増えてきた場合、また違った表現方法を用いるようにもしている。
ただ、セミナーにはアンケートを含めて約30分という制限時間がある。まだ教えたいことがあるにもかかわらず、そこで時間を取ってしまうと、テキストの全体の内容を時間内に伝えきれなくなってしまう。その場合は、「あとで個別に質問にお答えするか、もしくはセミナーブースの外に『ビギナーズカウンター』がございます。そこでもスタッフに色々と聞いてください!」と伝えるようにしている。
数年前からはセミナーだけでなく「ビギナーズツアー」として、パドックで馬をチェックする、自分でマークカードを塗る、そして、勝馬投票券を手に、目の前のレースを見るといった一連の流れを引率するようになった。
あまりにも人数が多くなると、ツアーの最中に迷子になる恐れも出てくる。そのフォローに関しては、同行してくれているスタッフが、ツアー参加者の最後尾を固めるといった対応をしてくれるので、混みあう中でも迷子となった参加者はいなかった。
近年になって、競馬ブームがじわじわ来ている印象を受けるのだが、それはビギナーズセミナーの参加者数の増加にも表れている。
また、男女問わずに20代の参加者の姿も見られるようになっており、参加したきっかけを聞くと、「ここにくれば、競馬の買い方を教えてもらえると聞きました」とビギナーズセミナーそのものが、浸透しつつあるのも感じている。
その一方で意外な参加理由としては、「コロナ禍で、ネットで馬券を購入するようになったのだが、紙の馬券(勝馬投票券)で買ったことがないので、マークカードの塗り方を教えて欲しい」という、デジタルからアナログへのまさかの移行。そして、「オグリキャップが走っている頃に、何度か馬券を買ったことがあるのだが、最近になって競馬を見始めたら、馬券の種類が増えていたので教えて欲しい」という、第二次競馬ブーム経験者が、再び競馬界に舞い戻ってきた例もあった。
確かに馬券や競馬の流れを追ってきた者としては、当たり前のように感じていたのだが、競馬を外から見た時には、とんでもない変化があったのだろう。
ただ、少しでも競馬に関する知識があるとセミナーでの飲み込みも早い。テキストの内容を全てやりつくしてしまうと、「質問コーナー」なるものを設けて、競馬に関する様々な疑問や質問、もしくはこちらの豆知識を披露することもあった。
ここ数年は「スマッピー」の説明が新たに入った他には、テキストの内容もほぼ変わることもなく、セミナーの間には小ネタを挟む余裕や、最近あった競馬界の出来事を取り入れて、より興味を持ってもらえるような説明もできるようになってきた。
約3か月にわたるセミナー講師は大変であったが、終わってみるといささか寂しい。これをお読みになっている開催中の競馬場関係者の方で、「出張ビギナーズセミナー」のご用命があれば、いつでも飛んでいく所存である。
