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第135回 馬場取材と想像力

2026.02.25

 昨年4月から船橋競馬開催中の馬場状態について、騎手への取材をしています。その日に乗った馬場の印象を聞いて、ファンに伝えるというもの。

 これまで、雨の日、晴れた日、猛暑の日、寒い日、風が強い日などさまざまな条件、さまざまな天候の中で話を聞いてきましたが、どの騎手も「砂は見た目よりパサパサに乾いています」「内も外も差がないフラットな状態」「脚抜きがいい」「力がいる馬場」「雨で砂が締まっている」など、乗っているからこそわかる感覚を、表現を考えながら語ってくれています。

 それを聞くとレースに乗ったことは無くても「そうなのね」と思えてくるのが不思議。パサパサに乾いているとか、脚抜きがいいというのは、ああいう感じかな、力がいるってあんな感じかなと、自らの、どこかで体験した感覚が呼び起こされるのでしょうか。もちろん騎手が感じたものと100%同じ感覚ではありませんが、受け取った言葉から自然に想像力が働いて、砂の感触が思い浮かぶのがなんだかおもしろいなと思います。

 この馬場取材は、対象を選ぶところからスタート。当日の騎乗一覧からそれぞれの騎乗数(原稿の締め切り時間までに馬場状態を把握しやすい最低2鞍以上騎乗)、レース後の装鞍の有無(取材時間の確保のため)など騎乗しているレース間隔も確認。

 特定の騎手にかたよらず、可能な限り多くの騎手に登場してもらいたいという気持ちもあるので、それまで取材の対象になったか否か、いつ取材したのかなどを確認。最終的には、候補にあげた複数の中からその時のレース結果やレース内容で、誰に話を聞くのかを決定することが多いです。

 できれば勝った後や、人気より上位でゴールした後など、気分が上向きの時に聞けるとありがたい。悔しい気持ちを抱えたまま取材に応えるのはしんどいでしょうし、聞く側としても申し訳ない気がしてしまうので。そのため、レースから戻って来た時の様子や表情をものすごーく見ていたりもします。聞いても良いかな、どうかな、と。

 こうして取材する中で、2月の船橋開催はコース取りが印象的でした。馬場の外側が伸びるということで、いつも以上に外を周る馬が増え、大外からぐんぐん馬たちが押し寄せるというスリリングな展開に。大きく広がる馬群に、通常の撮影ポジションでは勝ち馬が見切れてしまいそうになることもあり、この日はカメラマン氏たちからも「うわー!すごい外!」という声が何度もあがっていました。

 開催日程後半、ある騎手に話を聞くと「内より外が伸びると分かっているので4コーナー過ぎに先行馬がそのポジションを取りに行くパターンにもなってきました。そのため、開催前半は差しが決まったけれど、取りに行きたい場所を先行馬が取っていくので前がそのまま伸びていく。差しづらくなることもありそうですね。レースは毎回変動するので、いつも以上に誰がどこを走るのか、馬の能力や騎手の性格などを考えながら。こうなるとすごく深い心理戦みたいな雰囲気もありますね!」と、素人にとっては思わずハッとするコメント。

 

 今さら気づいたの?と思う方もいらっしゃるかも知れませんが「ただの差しが決まる馬場というわけではないのね。騎乗しながら、想像して予想している・・・瞬時に判断しながら!騎手、すごい」と思ってしまいました。勉強になります。

 さて、春が近づいて冬用の上着も必要がない日が増えてきました。10年以上前に聞いた言葉で心に残っているもの。それは「馬の皮膚」についての説明で「人間も分厚くて硬い革の上着を着ていると、ぎゅってなって手足が動かしづらくて走りにくいでしょう?だから馬の皮膚もゴワゴワしてない方が良いの」というもの。素人にもわかりやすいように言葉を選び、“ぎゅっ”のところでは自らの仕草でも表現。このことを教えてくださった方にお礼を伝えるすべは今ではもうありませんが、明確に想像できるなんてわかりやすい例えだったのだろうと、分厚いコートを脱ぐ季節になると思い出しています。

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