JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第32回 世界の舞台へ!中野省吾騎手2017ワールドオールスタージョッキーズ出場

2017.07.25
 今回は、8月26日、27日にJRA札幌競馬場で行われる2017ワールドオールスタージョッキーズに地方競馬代表として出場する中野省吾騎手(船橋 渡邊薫厩舎所属)についてお伝えしましょう。「中野省吾騎手」というより、「中野省吾」というどんどん進化する不思議な存在、と言った方がいいかも知れません。
 第32回 世界の舞台へ!中野省吾騎手2017ワールドオールスタージョッキーズ出場の画像 中野騎手は富山県舟橋村出身、デビュー9年目の25歳。2015年から勝ち星を伸ばし、その年の埼玉新聞栄冠賞(SIII)をカキツバタロイヤル(船橋 函館一昭厩舎)に騎乗して重賞初制覇。昨年は159勝をあげ、南関東リーディング第4位へと上昇。今年も連日競馬場を盛り上げています。

 地方競馬代表として世界の舞台に立つこととなった中野騎手ですが、どことなくアーティストな雰囲気を感じさせることも多々。2年ほど前には「気分転換に家具を創っています」と話していたこともありました。

 ご家族から伺ったエピソードでは、幼い頃から好奇心旺盛で天真爛漫なやんちゃ坊主だったとのこと。ゴール板を先頭で通り抜けた時、「ひゃっほー」という声が聞こえてきそうな中野騎手を何度か見たことがありますが、あれがまさに成長した「天真爛漫なやんちゃ坊主」の姿なのでしょう。

 自然豊かな故郷で、ご家族や地元の皆さんの愛情を受けながら伸び伸び育ったという中野騎手。パドックなどで見せるぐっと引き締まった表情に、勝負師らしい厳しさも感じさせます。勝ち星が伸びた'核心'についても独特の表現で語ってくれました。

 それは、「一生かかっても見つけられない騎乗方法を、デビューから8年掛かって手に入れられたのが大きいです」とのこと。「自然界で走る時のように馬を走らせたいですね。呼吸を合わせて馬と対話しながら」「攻め馬でも、装鞍所でも、パドックでも、いつも馬に語りかけています。'がんばれよ'って首をポンポンとしたりして。愛情を込めれば馬もわかると思うんですよ。生き物ですから。だからレースが終わった後も、お礼や労いを伝えるようにしています」「人間の私情を馬との間に入れないこと」。

 出し惜しみせず、独自の言葉で丁寧に語ってくれましたが、'中野省吾の世界'は奥深く、きっと本人が伝えたかったことの半分もここに書き記せていないのではと思うほど。「動詞になりたいですね(笑)。中野省吾る、とか(笑)」と話すその世界は、新種の植物が生い茂る森のような、あるいは、見たことがない楽しい何かを並べているお店のような。

 スーパージョッキーズトライアル第2戦(園田)では、レース前日に移動したそうですが、あいにくの悪天候や架線トラブルもあって、新幹線の中に8時間も閉じ込められたとのこと。「車内での時間を満喫しようと思って、お弁当をゆっくり'咀嚼(そしゃく)'していました」。咀嚼・・・医療系以外の会話で聞いたのって初めてかも。語彙の端々にも中野ワールドが宿ります。朝4時に新大阪駅に到着したものの、タクシー待ちは長蛇の列。仕方なく、徒歩で大阪駅へと向かったそうです。「スキンケアしないでいたから顔がむくんでましたよねぇ。表彰式の写真見て、あぁ、むくんでるなと思いました(笑)」。

 トライアルのシルバーブーツ賞では後方から前を捉え、アタマ差抜けての勝利。「園田で差す競馬は珍しいと思うので、ファンの皆さんにはいいものをお見せできたと思っています」とにっこり。4戦3勝2着1回という好成績、トライアル史上最高の75ポイントを獲得して世界の舞台への切符を手にしました。

 「トライアルではプレッシャーもありました。本戦(札幌)については、今はまだ何も考えていません。でも、負ける気がしないです!たとえ出場しても負けてしまうと『なんだ、大したことないじゃないか』と思われてしまう。だから勝ちたいです!」。

 そう力強く語った中野騎手。こんな話もしてくれました。「理想の騎手像というのはひとつではなく、騎乗方法やファンサービスなどいろいろあると思います。ファンの皆さんを楽しませたい。的場文男さんのようになりたいとも思っています。人が好き、生きものが好きだから、ゆくゆくは楽しく暮らしたいですね」。

 天真爛漫なやんちゃ坊主というエピソードを楽しく笑って振り返ることができるのも、前進するために独自に積み重ねて来た「今」があるからかも知れません。その「今」を糧にしながらどんどん進化していく姿を、ドキドキワクワクしながら応援していくのも面白そう!中野省吾騎手が魅せてくれる2017年の夏を楽しんでいきましょう。
トップへ