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第55回 父の夢を繋いだ東京ダービー(SI)制覇

2019.06.26
  2016年生まれの多くのサラブレッドの中から、南関東に所属している16頭が臨んだ第65回東京ダービー(SI)。パドックに出走馬たちが現れた頃には、ドラマチックな時間の幕開けを告げるかのように、西の空に細い月が光っていました。
 レースを制したのは、早め先頭から押し切った3番人気のヒカリオーソ(川崎 岩本洋厩舎)。鞍上の山崎誠士騎手(川崎)は同馬初騎乗で東京ダービー(SI)初優勝。ゴール前では力強いガッツポーズを見せ、喜びを爆発させていました。

 2018年7月28日に川崎競馬場でデビューしたヒカリオーソは、同年11月の平和賞(SIII)で初重賞制覇。年明け2月の大井では、雲取賞(SIII)を制し重賞2勝目をあげました。3月の京浜盃(SII)では1番人気に支持されましたが、鼻出血を発症してしまい14着に。そこから立て直し、ダービーまで2週間たらずとなった5月24日の調教試験(大井)に合格して挑んだ晴れの大舞台でした。

 それだけに、優勝騎手インタビューでの山崎騎手の「めちゃくちゃ嬉しいです!」という言葉からは、気持ちの高揚感が真っ直ぐに伝わって来たように思います。

 「ペースも早くならなかったので折り合いもつきました。馬の具合については、調教試験明けで半信半疑なところもあったのですが、スタッフの皆さんが懸命に仕上げてくれて、力を出すことができました。まだまだすごいポテンシャルを持っている馬です!」(山崎誠士騎手)。

 どのレースでの勝利も嬉しいとは思いますが、やはり東京ダービーは格別でしょう。帰宅後、写真を見なおしてみたら、山崎騎手の笑顔がキラキラとしていました。
 第55回 父の夢を繋いだ東京ダービー(SI)制覇の画像
 管理する岩本調教師は開業40年目で待望の初ダービー制覇。「山崎騎手が言っていたように、私もめちゃくちゃ嬉しいです。ですが、アクシデント(鼻出血)があったので、本当にダービーを勝ったのかなと・・・。アクシデントのことが心配で、実感はこれからなのかなと思います。レースは、行く馬がいるから、番手で無理せず、ウチを見ながら2、3番手で早目先頭でと思っていました。思った通りの展開になりましたね。アクシデントはありましたが、馬は元気で調子も良かったです。雲取賞を勝った時、(雲取山)は東京で一番高い山ということで、ダービー(獲れる)かなという気がしていました」(岩本調教師)。

 ヒカリオーソの父フリオーソといえば、全日本2歳優駿(JpnI)、ジャパンダートダービー(JpnI)、帝王賞(JpnI)、川崎記念(JpnI)、かしわ記念(JpnI)など数々のダートグレード競走で優勝し、地方競馬を牽引した名馬。しかし、2007年の東京ダービーでは惜しくもクビ差の2着(勝ち馬アンパサンド)という結果でした。種牡馬となった後は、勝ち馬数でリーディングファーストシーズンサイアーに輝き、現在も産駒たちの活躍に期待が集まっていますが、産駒の東京ダービー優勝馬はヒカリオーソが初めて。

 今回の東京ダービーは、山崎誠士騎手の父で元騎手の山崎尋美調教師、岩本洋調教師の父で元調教師の岩本亀五郎氏、ヒカリオーソの父フリオーソ、それぞれの父から息子へとバトンされた'東京ダービー制覇'という夢が、見事に叶えられたレースにもなりました。

 また、ヒカリオーソの母ヒカリヴィグラス(父サウスヴィグラス 母マイムーン)は、叔母に史上初めて地方在籍のまま中央競馬に出走し、桜花賞の前哨戦・報知杯4歳(当時)牝馬特別(現在の報知杯フィリーズレビュー)を制したライデンリーダーがいる血統。そういったことからも、今後、ヒカリオーソが地方所属馬としてどんな走りを見せてくれるのか、夢も大きく広がります。

 気になる次走ですが、ヒカリオーソ、そして羽田盃(SI)優勝馬で東京ダービー2着馬のミューチャリー(船橋 矢野義幸厩舎)共に7月10日に行われるジャパンダートダービー(JpnI)に選定されています。真夏の夜の夢の行方もしっかり見届けていきましょう。

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