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南関フリーウェイ

阿部典子 南関フリーウェイ

第58回 可能性への挑戦と、繋がるロマン 第73回セントライト記念(GII)

 9月16日に中山競馬場で行われた第73回セントライト記念(GII)。3歳有力馬たちの今後を占う意味でも大注目のこのレースに、船橋からミューチャリー(矢野義幸厩舎)が出走しました。ミューチャリーにとっては芝初挑戦。多くのファンを魅了する、持ち前の末脚への期待が膨らみました。

 当日は雨の影響もあり芝は重。最後方から徐々に進出し、4コーナーで大外を周ったミューチャリーは結果こそ12着でしたが、4着馬とは0.5秒差、上がり2番時計で「ミューチャリーらしさ」を見せた内容でした。装鞍所やパドックでの様子について「うーん、いつもよりおとなしかった。芝も湿ってるなぁ・・・」と、レース前には少し心配そうな表情を見せていた矢野調教師。結果については、無念を滲ませながらも「いい経験になったと思う。前残りになることは想定していたし、まぁ、悲観する内容ではないかな」とのこと。騎乗した御神本訓史騎手は「スタートを出て、折り合いがつくと自分からひと息入れたがる面があります。ちょっとずつ出していくとキレが甘くなってしまう。もう少しパンパンの馬場で走らせたかったですね。馬は頑張ってくれました」と語りました。

 優勝した羽田盃(SI)当日は、「厩舎から馬運車に乗るまでの通路を、二人で引いているのに走っていくほど元気一杯だった」(矢野調教師)というミューチャリー。種牡馬展示で師が惚れ込んだという荒々しいパイロの血、母母が芝のオープンクラスでも好走したゴッドインチーフ、母父ブライアンズタイムという血統背景や、中央現役の半兄ジュンヴァリアスが芝で勝利していることなどを考えると、まだまだ未知数の可能性を感じずにはいられません。

 さて、クラシック最後の1冠・菊花賞(GI)へと繋がるこのレースの勝ち馬は、栗東・松永幹夫厩舎のリオンリオンでした。「いい感じに唸っていました。久しぶりに道中抑えることができました。ヨタヨタしたところなど、今後(菊花賞など)に向けて良くなってほしいところがあります。(レース前に)雨が降りましたが、馬場もちょうど良かったかも知れませんね」と勝利へとエスコートした横山典弘騎手。レース直後、闘志の炎を湛えたままのリオンリオンを見て思い出したのが、父クロフネ、母トゥザヴィクトリーという超良血馬、母アゲヒバリ。船橋・川島正行厩舎からデビューしたアゲヒバリは、取材でも身近な存在の馬でした。

 当歳時に負った怪我を乗り越え、アゲヒバリが船橋に入厩して来た時には、「すごい馬が来た!」と話題になったのを覚えています。2007年1月23日に船橋競馬場で行われた能力試験では、3歳牝馬ながら513キロという雄大な馬体で出走。800mを51.4秒で合格しました。試験では石崎隆之騎手(当時)が騎乗し、2月8日のデビュー戦では息子の駿騎手が勝利へと導きました。当時、アゲヒバリを担当していたのは川島正行厩舎の大黒柱・多田圭治厩務員。デビュー戦の後、「レース中も全く心配していなくて、勝つに決まってる、負けるわけないと思っていたよ。これから先、ウチに包まれるレースもたくさんあるだろうから、競馬を覚えさせるためにも簡単に逃げて勝つというのは避けたかった」と語っていましたっけ。

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 約1年間の競走馬生活を終え、アゲヒバリが繁殖の道へと進んだのが2008年3月。残念ながら今年7月に亡くなってしまったそうですが、その血を受け継いだ産駒たちが、この先も素晴らしいレースを見せてくれることでしょう。

 また、リオンリオンに騎乗した横山典弘騎手は、今年3月に行われた石崎隆之騎手の引退セレモニーに駆け付け、花束を贈呈するなどの旧知の仲。アゲヒバリの競走馬としての扉を開けた石崎隆之騎手、その仔を重賞ウイナーに導いた横山典弘騎手。競馬が持つ"繋がりのロマン"も感じたセントライト記念(GII)でした。

 余談ですが、レース後、ミューチャリーの頑張りを讃えていた南関と中央両方で写真を撮っているカメラマンさんたち。あたたかい言葉に和ませていただきました。近い未来、ミューチャリーの最高の切れ味が光る優勝写真を楽しみにしていたいと思います。