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第139回 『無観客競馬4』

2020.07.27
 いろいろありすぎて、いったい何から書けばいいのか迷うところだが、まずは6月19日の船橋競馬5日目より、千葉県成田市の場外発売所「エフケイバ成田」が発売を再開した。

 無観客競馬により場外発売所での発売が中止されたのが2月27日からだから、非開催日も含め実に113日ぶりの場外発売である。また、翌週の6月22日からは、山形地区(ニュートラックかみのやま等3か所)、南関東地区(エフケイバ成田)、北海道地区(16か所)、愛知地区(サンアール弥冨・磯部)BAOO7か所、益田場外が。帝王賞当日の24日からは岩手地区の9か所が再開し、合計39か所での発売が始まることから、いよいよ南関東版の新聞印刷も再開の運びとなった。4月10日の大井版以来だから、71日ぶりである。

 これほど長い期間新聞印刷を中止したのは、1971年の年末から72年3月にかけて起こった「馬流行性感冒(馬インフルエンザ)」による開催中止以来だろう。

 その時の社内外の様子がどうだったか聞きたかったのだが、弊社の重鎮・柏木集保、飯田正美あたりでまだ入社前(柏木が1973年、飯田が1976年入社)で、当時の様子を知る社員は残念ながらいなかった。

 1971~1972年の時は、中央、地方ともに開催を中止、延期していたため、一切の新聞発行はなかったが、今回は「無観客競馬」だったため、中央版は印刷、コンビニの外販は続けていて、南関東版も新聞印刷こそ中止していたが、ネット版、コンビニプリントの制作はあったから、まだそれなりに売上はあったし、新聞状のもの?を読みながらテレビで競馬観戦も出来たから、少なくとも編集部自体は、実はコロナ前と変わらず仕事をしていた。

 2011年の震災の時も中央編集部は関西版を制作し、地方編集部はお休みだったから、仕事がある分状況としてはまだ良かったが、4か月近い印刷中止は、さすがにこたえた。

 主催者、各団体より補助を頂き、なんとかしのぐことが出来た。この場を借りてお礼を申し上げたい。

 この中間、新聞印刷がないとこんな暇なんか!というぐらい暇だったので、ネット新聞やネットの有料の予想を購入してみたり、いろいろなサービスを試してみた。中には新聞まるパクリのものもあったりして、それはまた別途対応することになるとは思うが、競馬専門紙の今後のあり方について色々と考えることが多かった。

 今回はネット版、コンビニプリントに救われたが、限界も明らかになってきた。プラットフォームを利用すれば比較的容易にサービスを始められるのだが、どうしても発展性がない。特に中央版は限られた紙幅、新聞と同じ価格でレース数をどう増やしていくかが課題となった。

 ネット版も新規読者を増やしたが、うまくダウンロード出来ない、ダウンロード出来ても表示されない等、個別の環境に起因するトラブルを電話やメールで対応するのは、なかなか難しい。スキルの問題もあるが、サポートの体制も十分とは言えない。深夜にダウンロードされた読者の対応が、翌日10時以降になるのも、サービスとしてはよろしくない。我が社のようなオールドファッションな会社だと、簡単なようで簡単ではない。

 他にも多様化した決済への対応や、テレワーク非対応なシステム環境、全員集まる会議等々、挙げだすとキリがない。「コロナ後」は元には戻らない、今まで通りにはならないと言われている。いずれまた同じような危機的状況に陥った時に対しての備えは、重要だろう。

 さて、エフケイバ成田から再開した場外発売。初日は放送機器トラブルで1~5レースが中止となるアクシデントに見舞われたが、235人の入場客、売上1,726,600円という結果。来場者に無料版を配布し、再開を祝ったが。当日の総売上に対し0.2%ではあるが、我々にとっても、競馬ファンにとっても、大きな一歩だろう。

 22日の大井競馬は30か所で場外発売が再開されて、合計で3,754人の競馬ファンが来場した。もちろん、コロナの脅威は未だ消えてはいないし、検温や消毒など対策が取られているが、ひとが集まる場所に対しての警戒感は強く、当然ではあるが、コロナ前のレベルには戻っていないし、戻らないかもしれない。

 長年の懸案である在宅投票への対応に決定打を打てるかどうか、コロナ後も最大の課題であることは間違いない。
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