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第141回 『無観客競馬6』

2020.09.25
 先日、ある現場で、フリーで活躍されている方々とお話する機会があった。無観客競馬により取材規制となってから、まったく競馬場に行っていないという。この仕事をしてからこれほど競馬場に行かなかったことはない、と仰っていた。

 持続化給付金を貰えた方、貰えなかった方、家庭を持っている方、独身の方等々、経済的な状況は人それぞれだけに何とも言えないが、何よりも精神的なダメージが大きいように感じられた。どの方も「早く競馬場に行きたい!」と、口を揃えて仰っていた。

 幸か不幸か、筆者の場合は変わらずほぼ毎週競馬場に行き、生でレースを観戦できている。もちろん騎手、厩舎関係者との接触は出来ないため、勝ち馬関係者のインタビューは代表、2着以下のコメントは配信という状況。

 それ以外にも、以前は騎手や調教師との雑談で色々得るものがあったのだが、それも出来ず。目の前にいる調教師と電話で話したこともある。それが競馬を開催する上での条件でもあるし、お互い「出しちゃいけない」という意識があるから、ある意味「大人のソーシャルディスタンス」はきっちり守る。

 南関東の場合、カメラマンはある程度融通が利いていて、写真を撮影するだけなら入場できる。もちろん身分、媒体にもよる。筆者が解説等で競馬場に行けない時にいつも撮影を依頼していたカズオちゃん(仮名)に、一時期撮影を依頼できない期間があった。

 彼もバイトしながらフリーカメラマンとして活動しているので、バイト先の状況も悪く、かなり生活が厳しいとは聞いていた。ようやく解禁されて仕事を依頼した時の、彼の嬉しそうなLINEの返信は、恐らく生涯忘れないだろう(うそ)。

 競馬場に入場できない方々向けに、各競馬場の現状をお知らせすると、まず大井競馬場は無観客期間中に場外への放馬事故が起きたため、各所に放馬止めのゲートが設置され、係員も配置されるなど、物々しい。

 今はどこに行っても検温され、手指の消毒をお願いされるが、競馬場も同様である。事務所には入れないため、職員といろいろお願い事や、内緒話をしたくても以前のようには出来ず、電話で外に呼び出さないとならないのが(恐らくお互い)面倒だ。でもルールだから仕方ない。

 川崎競馬場は比較的穏やかな雰囲気だが、移動できる場所は大井以上に制限されているので、写真を撮る以外はほぼ何も出来ない。とはいえ、写真を撮りに行っているだけなので、それで十分と言えば十分である。

 船橋競馬場は、ひと言で言えば「工事現場」だ。スタンド改築工事中だけに、仮設の建築物や、配線がされ、あらゆるところが仮囲いされている。そう思っているかどうかは別として、無観客競馬は工事関係者にとってはむしろ好都合な状況だけに、中山競馬場と同じ市内にあることも含め、入場再開には時間が掛かりそうな印象である。それと、工事の関係と思われるが、場内が暗い。

 浦和は、変わりなし。入場再開後はまだ行けてないのだが、無観客期間中は、お客さんがいないのと、場内の飲食店が閉まっていること以外は、特に変わらず。

 その浦和競馬。8月12、13、14、17日と331人に制限した上で入場を再開したのだが、12日が238人、13日237人、14日237人、17日222人といずれも満席に届かず。

 有料会員限定で招待制のプレオープン(テスト入場)を実施した大井競馬も、お盆開催初日の16日こそ140人だったが、以降17日93人、18日101人、黒潮盃当日の19日が116人、20日99人、21日91人と、ネット上では入場再開を望む声が多い割に来場者は少ない印象を受ける。

 浦和は抽選の指定席一般発売であるのに対し、大井は有料会員で、かつ招待という方式の違いはあるが、お客さんの方も慎重になっているのではないかと推測する。9月から再開する入場再開(東京都在住者限定で指定席の抽選発売)は各日140人と少ないと思える数字だが、ある意味現状では妥当な数字なのかもしれない。

 とはいえ、業者的には140人では場内のハコ(新聞売店)は開けられない。広大な敷地を持つ競馬場ですらそういう状況であるから、オフト後楽園や汐留などのオープンは、果たしていったいいつになるやら。

 まだまだ、復活への道のりは長そうな気配だ。
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