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第188回 『ダブル開催』

2024.08.27

 南関東地方競馬の日程が、だいたい今の形になったのが2007年あたりから。正月は川崎開催、ゴールデンウィークは船橋開催、お盆と年末が大井開催、というふうにおおよその開催が固定された。一因にダートグレード競走の日程固定化があって、5月5日はかしわ記念、12月29日は東京大賞典というように、目標となるレースの日程を固定化することにより、参戦しやすくなるとともに、集客面でも大きなメリットがある。


 開催日程も月~金の5日開催、または日~金の6日開催と分かりやすい日程で組まれるようになった。売上が振るわない時期の策だった。


 近年は「協同開催」が年間10日前後組まれている。いわゆる「ダブル開催」で、浦和競馬×大井競馬のリレー開催や船橋競馬×大井競馬のWナイター開催として行われていて、2023(令和5)年度が10日間、2024(令和6)年度は13日間組まれている。


 「ダブル開催」というとお互い食い合うのではないかという懸念を、誰もが持つと思う。実際のところはどうかというと、例えば最近行われた7月12日の浦和×大井を例にとると、


 浦和開催6億8,673万7,270円(1,291人)
 大井開催15億5,012万6,160円(4,249人)


 となっている。これだけだと良いのか悪いのか分かりづらいので、それぞれ前開催の、同じ金曜日の数字と比較すると、


 6/21浦和9億3,025万3,070円(1,276人)
 6/7大井15億8,985万7,340円(4,706人)


 となっている。6/21の浦和は雨、6/7の大井は晴れだったので条件は若干異なるが、通常浦和競馬は10億円~12億円程度の売上があるから、影響はあると言える。ただ場外比率が約96%であることから影響はあるも少ないだろう。


 その上で、2場合計で22億円超の売上があったことを考えれば、南関東の競馬として考えれば、成功と言えるだろう。さらに、昨年、今年いずれも平日に行われており、売上も前年を超えているように、「やれば売れる」感は強い。


 昼→夜のリレー開催だけでなく、時間帯ががっぷり四つの「ダブルナイター」開催も、船橋×大井合わせて1日平均で30億円超、通常の約1.5倍の売上を記録している。


 極々普通に考えれば、リレー開催の方が重なる時間帯も短く、長い時間により多くのレースに参加出来るから売上も上がるのではないか、と思うのだが、一方で平日のダブル開催であるから、働いている人(通常のナイター開催で主力のファン層)は参加する時間が限られる。


 南関東4競馬場はファン層を共有しているから、大井のファン+船橋のファン=○倍、というような図式は成り立たない(競馬場近隣の居住者などごく少数はいるだろうが)から、結局「いつもより多く使ってもらう」ということになるのだろう。純粋に参加機会は増えるのだから、やはり「やれば売れる」ということになる。


 「なんでこんな日程にダブル開催が?」という疑問を持つ方も多いだろう。祝祭日や休日でもなく、なんでもない平日にポツンと行われているのだから。「ダブル開催」にはいくつかの理由がある。ある競馬場の番組担当者に聞いたところ、所属馬の出走機会を作ることと、適正な出走間隔の確保などが挙げられた。


 各競馬場の年間開催日数や在厩馬の数が違うため、どうしても開催と開催の間隔が詰まったり、大きく開いたりするのは避けられない。他場に出走できる上級クラスはともかく、下級条件馬にとっては死活問題だろう。そういった面を解消する目的でもあり、必ずしも売上を追いかけてばかりではないようだ。


 我々専門紙も主催者からの要請もあり2場分でお値段据え置きの新聞を発行している。かつて年末にダブル開催が行われていた頃は、2場それぞれ発行していた。当時は相互場外もなく、在宅投票も会員制の電話投票があったぐらいで、多くのファンは最初にどちらの場に参戦するかを選択しなければならなかった。しかし現在では前述の通り在宅投票を含む場外発売の比率が高く、専門紙も2場掲載が「あたりまえ」という状況だが、逆にコロナ渦以降本場入場者が減り、また昨今は配送の状況も悪化して、新聞が欲しい人のところに届いていないのが現状だ。


 おそらく「ダブル開催」が最も威力を発揮するのは、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始だと思う。これらの時季のダブル開催は正直しんどい。主催者の職員もしんどいと思うが、かつての年末ダブル開催は異様な盛り上がりで、しんどさに見合った売上は十分期待できるのではないだろうか。どのみちしんどいならその方がいい。

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