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第201回 『津波警報 PART Ⅰ』

2025.09.17

 7月30日(水)にカムチャツカ半島東方沖で起こった、マグニチュード8.8の地震。太平洋側の各地で津波警報が発表されただけでなく、根室市の花咲では0.8m、岩手県の久慈港には1.4mの津波が押し寄せた。


 日高管内や胆振管内にも数十センチの津波が記録された中、警戒レベルが最大の「緊急安全確保」を発令されたのが浦河町だった。


 その日、筆者は浦河町へと向かっていた。もちろん、物見遊山などではなく、取材があったからなのだが、道中で何度も車を引き返そうと考えていた。


 話は30日の午前8時半まで遡る。その日の14時半から浦河の牧場で取材が入っていたのだが、テレビの画面に津波注意報と表示されたのを見て、何が起こったのかと思った。


 北海道では最大震度2を記録した地域もあったようだが、筆者の住む札幌では全く揺れを感じなかった。それにもかかわらず津波注意報が発令されたのは、国外で大きな地震があったことに他ならない。


 震源地がカムチャツカ半島であったこともさることながら、当初のマグニチュードが8.0だったことにも驚いた。この規模の地震はそうそう起こることでもなく、震源地付近の方々の安否を心配したと同時に、間違いなく北海道にも津波が押し寄せてくると思った。


 その予感は悪い方で当たる。マグニチュードが8.8まで引き上げられると、津波注意報は津波警報へと切り替えられた。


 北海道から和歌山県までの太平洋沿岸には、最大で3mまでの津波が到達すると予想がされており、テレビの画面にも、「つなみ!にげて!」といった警告の文字が表示されていた。


 その取材は東京から来た編集者と同行することになっていたのだが、搭乗予定の飛行機がまだ新千歳空港に到着しておらず、連絡の取りようが無い。


 まずはその媒体の編集部へ連絡、その後、「緊急安全確保」が発令されたばかりで、大変なところを申し訳ないと思いながらも、取材先である浦河の牧場に電話をした。


 幸いなことに取材先の牧場は海岸沿いから、かなり離れており、海抜も50m程の高さがあった。津波の被害に遭う心配はまず無かったこともあり、牧場の方からは、「山の道(道道1025号静内浦河線)を通れば、来ることはできます」とのアドバイスも受けた。ただ、日高管内に住む牧場関係者のFacebookやXの投稿を見ると、海岸にほど近い場所にある牧場では、スタッフを高台に避難させただけでなく、静内浦河線も避難をする車で渋滞しているとの書き込みも見られた。


 にっちもさっちも行かなくなっていた時、新千歳空港に搭乗機が到着して、現在の状況が飲み込めた編集者から電話があり、「とりあえずは予約してあったレンタカーを借りますが、空港の近くで待機します」と言われた。その間にも時間は経過していき、各地で津波の到達と高さが発表される。


 第一波の高さはそれほどでもなかったが、国外で起こった地震では、「遠地津波」が起こりやすく、第一波よりも第二波や第三波の方が高さを増していく傾向にある。実際に先述した津波の高さも、第一波の観測から時間を置いての最大波が観測された。


 テレビでも各地での津波の到達だけでなく、先に到達した場所でも最大波が更新されている事実を伝えていた。そんな時、編集者から、「取材は明日にまとめてやりますが、その前に浦河まで移動しておこうと思います」との連絡があった。本当なのか、と耳を疑ったが、その編集者も先ほどの自分と同様に、取材先の関係者に連絡をしていた。


 その時の話し合いでは、取材自体を後日に回す案も上がっていたが、海沿いの道を通らないことや、到着が困難になる場合には引き返すといった判断も込みで、明日の取材のために移動を決めたという。


 この取材ではカメラマンも同行していたが、津波注意報発令の前に新ひだか町に入っており、海岸からかなり奥に入った牧場で、別の撮影を行っていた。しかも、静内浦河線にほど近い場所にいたこともあり、浦河への移動にもそれほどの時間を要しなかった。


 こうなれば、自分も安全な自宅を離れざるを得なくなる。行く前の準備ではスマホの充電器に加えて、何かあった時のために着替えも多めに用意した。


 その時、スマートフォンに着信があった。それは旧知の仲である取材先の関係者だったのだが、「こちらはコンビニもしまっていて、どこでも買い物は出来ません。もし、こちらに来られるのならば、食料品や飲料水を買ってくることをお勧めします」と思ってもみなかったことを告げられた。
(次号に続く)

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