北海道馬産地ファイターズ
第204回 『ザ・ロイヤルファミリー』
日曜の午後9時になると、どこかそわそわしてくる。
作家の早見和真さんが競馬を題材に、2019年に刊行した「ザ・ロイヤルファミリー」。秘書である栗栖栄治の視点を通して、秘書として仕えた山王耕造やその家族との関わりや、「ロイヤル」という冠名が付けられた競走馬たちの活躍が書かれている。
2019年には山本周五郎賞とJRA賞馬事文化賞を受賞。2023年からはTBS系のドラマ枠である「日曜劇場」の撮影が開始されており、2025年の10月12日から放送が始まった。
実はドラマ収録の前には、知人の紹介でセレクトセールに来場していた早見さんに会う機会があった。また、その知人を通して連絡があったドラマの制作スタッフからは、「こんな景色の牧場はありますか?」といった、ロケ地に関しての相談を受けていた。
ただ、この時点でドラマの制作は極秘事項となっていた。スタッフの方からのオファーに合いそうな、牧場の方にロケのアポイントを入れる際には作品のタイトルだけでなく、「TBSの日曜劇場」との言葉も、全く伝えないように心がけた。
その後、正式なアポイントを取ったドラマの制作スタッフが、馬産地における四季の風景を撮るために、幾度となく日高へ入っているという話を聞いていた。
それが今年の夏になってから、ドラマの出演者が日高の牧場や、北海道市場で収録を行うとの連絡がその知人から入った。しかも、北海道市場で行うロケでは、せりのシーンに出演するエキストラを募集しているという。
その知人はこんなことを話してくる。「もし良かったら、その日に北海道市場へ来れない?」
話を聞いていくと、その日は朝早くから遅くまで北海道市場を貸し切り、一気に様々なシーンを撮影していくのだという。
シーンチェンジの準備もあるために、ロケの時間は早朝から夜遅くまでを予定しているとその知人は話す。
エキストラだけに出演料はもちろんのこと、弁当すら用意はされていないという。ただ、ほんの少しでもドラマと関わったからか、いい位置で映り込めるかもと言われた。
ドラマ収録に興味こそあったが、残念なことに収録日当日は先に取材が決まっていた。それを伝えると、ロケの当日にその知人からは、互いの知り合いである生産者とのツーショットといった、様々な関係者との写真が送られてきた。
この人たちもエキストラで出演しているのか、と思いながら「ザ・ロイヤルファミリー」の放送を、今か今かと楽しみにしていた。
注目の第一話であったが、栗栖栄治の視点から書かれていた原作が、どのようにドラマ化されているかという興味よりも、ロケ地で訪れた牧場に目が行くようになっていた。
こうなってしまうと、ドラマに全く集中できなくなってしまう。北海道市場で行われたせりのシーンでも、「画面に映っていたのはあの人じゃないか?」と思うと気が気でなくなってくる。
本放送の後には録画をしてあったブルーレイレコーダーを再生して、牧場やせりのシーンをスロー再生しては、特定班のようにロケ地を再確認した。
せりのシーンでも妻夫木聡さんや佐藤浩市さんの後ろに見切れている、関係者の姿を見つけ出し、第一話放送の次の日に行われたオータムセールで、その関係者を見つけては、「見事な演技でしたよ!」とその役者ぶりを称えた。
ドラマは原作をほぼ再現しているだけでなく、これまで、馬や競馬を扱ったドラマや映画では、そこまで詳しく描かれてこなかった馬主の世界や、せり市といった馬の売買に関しても、分かりやすく伝えられていた。
第一話の終了後には、競馬をさほど知らない友達からも反響があり、その中には、「ドラマには出て無いの?」といった質問をされることもあった。
実は10月下旬から11月上旬にかけて、再び北海道市場で収録があったのだが、その時もタイミングが合わずに見送っている。
今でさえドラマよりも、ロケ地やエキストラ参加者を目で追ってしまうのだから、自分が収録に参加していたとなれば、更にスロー再生の時間が延びてしまったに違いない。
実はエキストラ出演こそしていないが、自分が以前に取材で撮影した牧場の風景写真が、ドラマの中で使われる可能性があるらしい。
もちろん、実際にどの回のどのシーンで使われるかは全く分からないが、その場合にはテロップに「写真協力・村本浩平」と入れてもらえるとも聞いている。やはり、毎週日曜日には本放送の後に、ドラマをスロー再生する日々が続いていきそうだ。
