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4第回 種牡馬展示会について

2009.04.01
 一昔とは違って,1月生まれのサラブレッドは珍しくなくなった。むしろ1月産まれのトールポピーとリトルアマポーラがG㈵を勝利し,当歳市場でも早生まれの利点である成長過程で優位にあることで高い評価を集めている。こうなると1月,2月といった早産まれのサラブレッドをどんどん生産した方がいいのではという気すらしてくる。
 ここで問題となってくるのが種牡馬展示会である。2月に入り,毎週のようにそれぞれのスタリオンで種牡馬展示会が行われているが,現在では種牡馬を見てから配合を決める生産者の数はそれほどいないのではないかと思える。

 その理由の一つは,前述したように早産まれが増えてきたという現状である。1月生まれとなると,その前年の2月には種付けしていなければならず,まさか種牡馬展示会を見て,次の日には繁殖牝馬を連れて行くというようなことは考えにくい。

 二つ目の理由は,種付頭数を200頭近く集めるような人気種牡馬は,事前の予約だけでたちまちいっぱいになってしまうこと。しかもこうした人気種牡馬たちは,過去に何度も種牡馬展示会に登場しているので,改めて馬体を確認するという生産者はまずいないと考えられることである。

 三つ目の理由は,導入される新種牡馬の数が減ったこと。種牡馬展示会にとって最大の目玉は新種牡馬の紹介である。だが,昨今の不況も手伝ってか,高額のシンジケートが組まれて産地に導入されてくるような大物種牡馬は年に2,3頭しかいなくなったことである。

 以上の自分の思っていることをあるスタリオン関係者に伝えると,「確かに最近の種牡馬展示会は,種牡馬の様子確認となっている気がしますね」との答えが返ってきた。確かにこれから配合する種牡馬の状態は気がかりだ。とはいっても体調が悪そうだからといって,配合を変えるようなことはまずしないだろう。

 勿論,全てのサラブレッドが早生まれとは限らないし,種牡馬の姿を見てから配合を決めるという人にとって種牡馬展示会は大事なイベントである。しかし,そのような人にとって種牡馬展示会は新種牡馬だけを見ればいいのであり,実際に今年も新種牡馬の展示が終わった直後に引き上げていく生産者の姿が見られた。

 近年は新種牡馬を導入していないとの理由で,種牡馬展示会を行わないスタリオンもある。確かに種牡馬展示会を行えば手間もかかるし,生産者をもてなす経費も馬鹿にはならない。とはいっても,この時期にスタリオン巡りをしながら,様々な種牡馬を見られることに喜びを感じていた一マスコミの人間としてはいささか寂しい気持ちもある。

 ひょっとしたら種牡馬展示会の存在自体を見直す時期に来ているのかもしれない。種牡馬展示会の従来の枠組みから外れることで,多くの生産者を呼び込んでいるのが,ダーレー・ジャパン・スタリオン コンプレックスで行われている「スタリオンパレード」だろう。メインとなっているのは種牡馬展示であるが,展示をするに当たっての演出も凝らされており,しかも食事をはじめとした様々なもてなしがある。種付けの前に「足を運びたくなる場所」との意識を生産者に植え付けたことは間違いない。

 また,ビッグレッドファームの種牡馬展示会では毎年恒例となっている公開調教が行われるが,これは完成に近づいた産駒の姿を見せるだけでなく,ビッグレッドファームが行っている調教を見せるということにも繋がっている。ハードで知られるビッグレッドファームの育成調教だが,この調教に耐えうるにはどのような馬作りをすればいいのか?というヒントも生産者に持ち帰らせたはずだ。

 この二つのスタリオンにいえるのは,種牡馬展示会を行った中では後発のスタリオンであること。これまでの枠組みを外し,時代のニーズを的確に捉えることによって,種牡馬展示会はスタリオンにとっても,また生産者にとっても,有益なイベントとなる可能性はまだ充分に残されている。

JBBA NEWS 2009年4月号より転載
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