北海道馬産地ファイターズ
第5回 ウォーエンブレム
2009.05.01
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昨年,32頭の産駒が中央で走り,うち13頭の産駒で21勝。その勝ち鞍の中にはG㈵秋華賞を含む重賞4勝が含まれており,AEIは2.63という驚異の数字を記録した。
驚くべき産駒実績を残しているその種牡馬の名前とはウォーエンブレム(USA)。現役時はアメリカクラシック2冠を含む13戦7勝。その年にはエクリプス賞最優秀3歳牡馬にも選出された,アメリカを代表する名馬でもある。
03年から社台スタリオンステーションに導入されたウォーエンブレムだが,シーズンが始まってみるとほとんどの牝馬に興味を示さないことが判明。結果として1シーズン目は7頭にしか種付けを行うことができなかった。
2シーズン目には前年の配合結果を踏まえて,興味を示した牝馬を見せながら他の牝馬をあてがうという方法で53頭に種付けを行う。だが,その反動なのか3シーズン目に入ると牝馬に対する興味がほとんど無くなり,種付頭数も9頭に激減。4シーズン目は1頭に種付けしたが不受胎,5シーズン目には種付けを行わなかった。
シンジケートも解散し,種牡馬失格の烙印を押されたに等しいウォーエンブレムだったが,関係者は種牡馬として再起させることを諦めていなかった。
その熱意が届いたのか,06年にデビューした僅か4頭の初年度産駒は全て中央で勝利。産駒頭数が33頭に増えた2年目産駒は,ショウナンアルバが産駒初の重賞制覇となるG3共同通信杯を優勝。その後もエアパスカルがG3チューリップ賞,ブラックエンブレムがG3フラワーCに優勝し,牡馬,牝馬ともにクラシックに歩を進めた。
生産界にウォーエンブレム待望論が起こる中,社台スタリオンステーションとしても手をこまね
いていたわけはなかった。角田修男場長を先頭に様々な治療を行っただけでなく,アメリカから動物行動学の博士を呼び寄せるなど,ウォーエンブレムに動物としての本能を呼び起こすために様々なアプローチをかけた。ついには08年5月中旬にウォーエンブレムは1年ぶりの種付けを行った。しかも,それからシーズン終了まで,48頭の繁殖牝馬に配合することができた。
気になる今年の種付状況だが,社台スタリオンステーションの徳武英介氏に話を伺うと,「今年も既に何頭かの牝馬には種付けを行っています。ただ,相変わらず牝馬に興味を示さないことも多く,生産者の方には申し訳ないのですが,配合相手に関しては社台グループの繁殖牝馬に限定させてもらっています。」とのこと。それでも昨年よりも早い時期から種付けを行っていることで,昨年以上に繁殖牝馬を集めることができそうで,また,3年目シーズンに起こった反動も今のところないということである。
もし,ウォーエンブレムがこれまでのシーズンに,100頭近い産駒を送り出す種牡馬となっていたのなら,AEIの成績を見てもサンデーサイレンス(USA)級の種牡馬となっていたことは想像に難くない。いくら種付頭数こそ増えてきたとはいえ,机上の計算通りの配合馬を作りづらいのが悩みの種だが,今年以降に誕生する世代から,秋華賞を制したブラックエンブレムに続くG1馬が誕生する確率は非常に高い。
「願わくばウォーエンブレムの牡馬にG1級の活躍をしてもらい,その仔が種牡馬となって生産界に貢献できればと思います。そのためにもなるべく多くの牝馬に配合して,能力,血統ともに素晴らしい馬を残していきたいですね。」(徳武氏)今年,誕生する産駒のほとんどは6月という遅生まれだが,その中にはブラックタイプが目を引く良血馬もいる。
「なんでこの牝馬に種付けをしたのかと思ったら,配合的にも素晴らしいといえる馬もいるんですよ。」と徳武さん。そう考えるとウォーエンブレム自身が選ぶ繁殖牝馬こそが,究極の配合と言えるのかもしれない。
JBBA NEWS 2009年5月号より転載
驚くべき産駒実績を残しているその種牡馬の名前とはウォーエンブレム(USA)。現役時はアメリカクラシック2冠を含む13戦7勝。その年にはエクリプス賞最優秀3歳牡馬にも選出された,アメリカを代表する名馬でもある。
03年から社台スタリオンステーションに導入されたウォーエンブレムだが,シーズンが始まってみるとほとんどの牝馬に興味を示さないことが判明。結果として1シーズン目は7頭にしか種付けを行うことができなかった。
2シーズン目には前年の配合結果を踏まえて,興味を示した牝馬を見せながら他の牝馬をあてがうという方法で53頭に種付けを行う。だが,その反動なのか3シーズン目に入ると牝馬に対する興味がほとんど無くなり,種付頭数も9頭に激減。4シーズン目は1頭に種付けしたが不受胎,5シーズン目には種付けを行わなかった。
シンジケートも解散し,種牡馬失格の烙印を押されたに等しいウォーエンブレムだったが,関係者は種牡馬として再起させることを諦めていなかった。
その熱意が届いたのか,06年にデビューした僅か4頭の初年度産駒は全て中央で勝利。産駒頭数が33頭に増えた2年目産駒は,ショウナンアルバが産駒初の重賞制覇となるG3共同通信杯を優勝。その後もエアパスカルがG3チューリップ賞,ブラックエンブレムがG3フラワーCに優勝し,牡馬,牝馬ともにクラシックに歩を進めた。
生産界にウォーエンブレム待望論が起こる中,社台スタリオンステーションとしても手をこまね
いていたわけはなかった。角田修男場長を先頭に様々な治療を行っただけでなく,アメリカから動物行動学の博士を呼び寄せるなど,ウォーエンブレムに動物としての本能を呼び起こすために様々なアプローチをかけた。ついには08年5月中旬にウォーエンブレムは1年ぶりの種付けを行った。しかも,それからシーズン終了まで,48頭の繁殖牝馬に配合することができた。
気になる今年の種付状況だが,社台スタリオンステーションの徳武英介氏に話を伺うと,「今年も既に何頭かの牝馬には種付けを行っています。ただ,相変わらず牝馬に興味を示さないことも多く,生産者の方には申し訳ないのですが,配合相手に関しては社台グループの繁殖牝馬に限定させてもらっています。」とのこと。それでも昨年よりも早い時期から種付けを行っていることで,昨年以上に繁殖牝馬を集めることができそうで,また,3年目シーズンに起こった反動も今のところないということである。
もし,ウォーエンブレムがこれまでのシーズンに,100頭近い産駒を送り出す種牡馬となっていたのなら,AEIの成績を見てもサンデーサイレンス(USA)級の種牡馬となっていたことは想像に難くない。いくら種付頭数こそ増えてきたとはいえ,机上の計算通りの配合馬を作りづらいのが悩みの種だが,今年以降に誕生する世代から,秋華賞を制したブラックエンブレムに続くG1馬が誕生する確率は非常に高い。
「願わくばウォーエンブレムの牡馬にG1級の活躍をしてもらい,その仔が種牡馬となって生産界に貢献できればと思います。そのためにもなるべく多くの牝馬に配合して,能力,血統ともに素晴らしい馬を残していきたいですね。」(徳武氏)今年,誕生する産駒のほとんどは6月という遅生まれだが,その中にはブラックタイプが目を引く良血馬もいる。
「なんでこの牝馬に種付けをしたのかと思ったら,配合的にも素晴らしいといえる馬もいるんですよ。」と徳武さん。そう考えるとウォーエンブレム自身が選ぶ繁殖牝馬こそが,究極の配合と言えるのかもしれない。
JBBA NEWS 2009年5月号より転載