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第25回 ハンカチ王子

2011.01.06
 このコラムもいよいよ3年目に突入。ユニフォームをかたどったイラストの中にある背番号(実はコラムの回数)も25回を数えるまでになった。
 このユニフォームのイラストにも表れているように,筆者が野球好きということで付けさせてもらったコラムのタイトルや,その内容まで実に好き勝手に書かせていただけたのも,多大なご理解をいただいているJBBAの皆さん,そして何よりも読んでいただいた関係者の方のおかげとしか言いようがない。と皆様のご理解をいただけたと勝手に解釈して,今回も野球の話を書かせていただこうと思うのだが,我が北海道日本ハムファイターズにおける,今,最もホットな話題といえば,「ハンカチ王子」こと,早稲田大学の斎藤佑樹投手の交渉権を獲得したことである。

 北海道日本ハムファイターズが斎藤佑樹投手を獲得した最大のメリットとは,東京六大学で史上6人目となる30勝と300奪三振を同時に達成したという実力面に加え,「ハンカチ王子」との愛称で知られる人気面である。

 別に斎藤投手に「客寄せパンダ」になってくれとお願いしているわけではない。元来,北海道日本ハムファイターズは,ダルビッシュ有投手,稲葉篤紀外野手などイケメン選手が多いとされるチーム。それに比例するようにファンクラブに占める女性ファンの割合も高く,見るからにさわやかな好青年を地でいく斎藤投手の入団は,更に女性ファンを増やしてくれること請け合いである。

 ここまで斎藤投手に注目が集まる理由は,4年前の夏の甲子園における一大フィーバーによるところが大きい。これを競馬になぞらえてみると,当歳や1歳市場で取引された高額取引馬やデビュー間近の良血馬が,メイクデビューでグリグリの本命馬となっているような状態とでもいうのだろうか。

 近年ではPOG(ペーパーオーナーゲーム)という,デビュー前の2歳馬の仮想オーナーとなって,その後の活躍をオーナー気分で応援していく競馬ファンが増えている。一昔前の2歳馬といえば,兄弟が走っているか,活躍した母の産駒,もしくは調教で目立った動きを見せている馬ぐらいしかデビュー前の情報が無かったが,近年ではこうしたPOG関係の媒体で話題を集めた馬が,メイクデビューでも人気の中心となってきている。

 斎藤投手と話題の2歳馬。両者の共通項は「昔からその存在を知っている」ということなのだが,デビュー前からファンが支持してくれているというのは,スポーツ界の中でもとても希有なことであり,そしてその競技や団体にとっては,興行面,注目度など様々なメリットが生まれてくる。

 このコラムが出ている頃には,斎藤投手の入団記者会見も行われていると思うが,北海道内だけでなく,多くのマスコミが報道するのだろうし,来年の沖縄キャンプから早くも「ハンカチフィーバー」が沸き起こりそうだ。

 一方,競馬でもほんの少し前に,世間を巻き込むようなフィーバーが起こっていた。それは現3歳世代が活躍を見せているディープインパクトである。だが「ディープフィーバー」を,昨年,デビューした産駒たちに,あの熱を保ったまま繋げられたとは言い難い。
確かに種牡馬入りの様子や,第1号となる産駒の誕生,セリでの取引価格や育成の様子など,その都度ディープインパクト産駒は取り上げられてきた。確かに競馬界の中にいる我々は目にする機会も多かったと思うが,ディープインパクトを知っていた世間にそれを周知出来たかと思うと,マスコミである自分でさえ疑問を感じずにはいられない。

 確かに早稲田大学に入ってからもエースとして投げ続けた斎藤投手と,自身ではなく産駒がデビューするディープインパクトとでは,取り上げ方だけでなくフィーバーの持続度も違う。しかし,ディープインパクト産駒が,父と並ぶような結果を見せ始めた今だからこそ,「ディープフィーバー」を競馬界から発信してもいいのではないか。きっと,産駒がデビューしたことを改めて知って,そして再び競馬に注目する元ディープインパクトファンもいるはずだ。

 斎藤投手も人気だけでなく確固たる実力があるからこそ,フィーバーとして祭り上げられらたとしても,きっとファンの期待に応える成績を残してくれるはず。なら,我々競馬人も,どこに出しても恥ずかしくないディープインパクトの産駒たちを,我々発信でフィーバーへと繋げて行こう。
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