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第27回 NARグランプリ2014年度代表馬・サミットストーン 種牡馬の道へ。

2017.02.24
 今回は、NARグランプリ2014で年度代表馬・4歳以上最優秀牡馬を獲得、来年以降の種牡馬入りを目指しているサミットストーン(9歳牡馬 矢野義幸厩舎)について綴っていきましょう。
 サミットストーンは今年1月3日の報知オールスターカップ(SIII)で脱臼(診断:右前繋靭帯断裂)して競走を中止。惜しまれつつ、現役を引退しました。

 「命が助かって本当に良かったです。引退は寂しいですが、送り出せてほっとした気持ちもありますね。サミットストーンとは南関東だけでなく、いろいろな競馬場へ行きました。いつもよく頑張ってくれましたよ」。そう語ったのは苦楽を共にした中野浩三厩務員。

 サミットストーンといえば、東京大賞典(GI)や川崎記念(JpnI)でJRA勢相手に奮闘。2014年の浦和記念(JpnII)では強烈な末脚でゴールに突っ込んで来るなど、地方競馬にとってとても大きな存在でした。2015年春、阪神競馬場で出走したアンタレスステークス(GIII)では落鉄によって大けがを負いましたが、不屈の闘志で復活。復帰初戦となった2015年の日本テレビ盃(JpnII)では、地方馬最先着の5着、同じ年の浦和記念では2着と、年度代表馬としてのプライドを掲げてレースに臨み続けました。

 報知オールスターカップの後は厩舎で休養していたサミットストーンでしたが、食欲は旺盛だったそう。そういえば、故障から2日後に厩舎の窓からそっと馬房の中の様子を伺うと、飼い葉袋の中に頭を突っ込んだまま、ひたすら食事をしている姿がありました。

 「そうなんですよ。よく食べました(笑)。普段も僕が準備している時から『早くくれ』って唸っていましたよ(笑)。あれだけの怪我をしても食欲はありましたね」(中野厩務員)。

 550キロ以上の雄大な馬体の持ち主だけに、脚元への負担も心配されましたが、そんな風に旺盛な食欲があってこその、強さと生命力だったのかも知れません。

 「怪我をした時、脚は痛かったと思うんですが、たぶん痛いのは脚だけで、他は元気なんですよ。気持ちも元気で、食欲はあるし、厩舎で休養しているうちにだんだん力が余ってきちゃって。このまま馬房に入れっぱなしだと(暴れて)危ないな、というくらい。元気だし、そろそろ北海道に輸送できると思って矢野先生と相談して送り出すことになりました」。

 矢野調教師がサミットストーンの旅立ちの日に選んだのは、1月27日、'大安吉日'でした。後日、「出発日が'大安'だったのは、先生がその日を選んだから?」と尋ねると、「まぁ、そういうことにしといて(笑)」と。サミットストーンとほぼ入れ替わりで近郊牧場での放牧から戻ったレガルスイの帰厩日が'先勝'の日の朝だったことを思うと、やはり矢野調教師の管理馬への「無事に活躍を」という思いを感じずにはいられません。

 中野厩務員のお話に戻りましょう。

 「サミットストーンのような馬に巡り合えるのはそうそうあることではないですからね。引退が決まった時、ファンの皆さんから寄せられたあたたかいメッセージにもぐっと来ました。改めて、たくさんの人に応援してもらっていたんだなぁと・・・。やはりNARグランプリが思い出深いです。あそこまで活躍できたのは調教に携わっていた西村さん(西村栄喜騎手)の存在が大きいですね。西村さんがいなかったらああいう結果は出せなかったと思います。サミットストーンは普段は他の馬と同じかんじで、特別にここが違うというのはありませんでした。種牡馬入りできるのはすごいことですよね。うち(矢野厩舎)からはルースリンドも種牡馬になっているし、いつかサミットストーンの仔とルースリンドの仔が並んで馬房にいる姿を見られたら、と思うと楽しみですね」。

 第27回 NARグランプリ2014年度代表馬・サミットストーン 種牡馬の道へ。の画像 サミットストーンの眼差しって艶っぽいなと思っていたんです、と話すと、中野厩務員がにこっと笑ってこう続けました。「僕は耳がかわいいなぁって思っていたんですよ。長くて、ちょっと離れていて、外を向いているかんじで。洗い場で見てかわいいなぁって(笑)」。

 そんな中野厩務員の言葉に、ふと、馬房で耳をふわりと下げながら甘えていたサミットストーンの姿を思い出しました。

 まずは脚元を治してからの種付けのため、産駒の誕生は順調に行けば2019年、デビューは2021年。父譲りの不屈の魂と、高い能力、そして愛らしい耳を持った子どもたちに会える日を楽しみに待っていましょう。
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