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第101回 JBCクラシック優勝馬 ミューチャリー ここまで道とこの先の道

2023.04.25
 3月15日に行われたダイオライト記念(JpnII)を最後に、ミューチャリー(船橋・矢野義幸厩舎)が競走馬生活に別れを告げました。ミューチャリーといえば、2021年に金沢競馬場で行われた第21回JBCクラシック(JpnI)で優勝し、地方所属馬としての悲願を達成。ミューチャリーだけではなく、この年はジャパンダートダービー(JpnI)でキャッスルトップ(渋谷信博厩舎)が、川崎記念(JpnI)とかしわ記念(JpnI)でカジノフォンテン(山下貴之厩舎)が優勝し、地方競馬に歓喜の輪が広がった年でもありました。
 3頭とも南関東・船橋の生え抜き。その中でNARグランプリ2021の年度代表馬および4歳以上最優秀牡馬を受賞し、地方競馬の頂点に立ったのがミューチャリーでした。

 と、ここまで書いたことをはじめ、ミューチャリーの戦績はご周知の通り。ここから先はレースや厩舎でのエピソード、管理していた矢野義幸調教師のコメントなどを中心にお伝えしていきましょう。

 最初に触れておきたいのは、ミューチャリーの毛色。登録は芦毛で、祖母はJRAの重賞でもお馴染みだったゴッドインチーフという血統です。しかし、2019年、入厩直後のミューチャリーは黒鹿毛かな?と思うほどの黒い若駒でした。わずか、しっぽの先だけが「ボク、実は芦毛なんですよね」というようにほのかに銀色を帯びていて・・・。

 当時の写真と古馬になってからの写真を見比べると、「別の馬みたい」という印象。毛色も黒く、顔つきには幼さが残っていた2歳。白くなり、風格も出ている7歳。それでも、オフタイムに見せる鼻先をきゅんとする表情は変わらなかったようにも思います。

 2歳の頃、隣の馬房には同じパイロ産駒のハクサンチカラがいましたが、ハクサンチカラの担当厩務員さんから話を聞いていたら、「ボクも!ボクもここにいます、こっちー!」というように、仕切りの板の向こうから一生懸命鼻先を伸ばすミューチャリーの姿がありました。愛嬌いっぱいの2歳らしさを感じる思い出です。

 2018年8月のハイビスカスデビュー2歳新馬で勝利した後には、「ミューチャリーのデビュー戦といえばこの表情」と言えそうな思い出深いシーンもありました。それは、口いっぱいに、束にしてくわえていた'藁'。カメラを向けると、得意そうな表情を見せたミューチャリー。担当の森久保調教師補佐と、手伝いで引いた中野厩務員も笑顔。その後、その藁をくわえた姿はファンの方が作った愛情いっぱいの横断幕にも登場し、ミューチャリーの走りにエールを送り続けていました。

 厩舎関係者によると、(近年の)矢野厩舎では「藁」を使うことがないため、後検などで藁がある環境になった時、「『これが藁かー』というようにかじる馬もいるんだよね(笑)。レース後でお腹もすいているし」とのこと。きっとミューチャリーもそうだったのでしょう。ちなみに、ミューチャリーの大好物は矢野調教師が畑で作っているクローバー。そのクローバーを見るとワクワク、もりもりと食べていました。
  第101回 JBCクラシック優勝馬 ミューチャリー ここまで道とこの先の道の画像 このようにほほえましいエピソードも多彩ですが、やはりパイロ産駒。「種牡馬展示でパイロを見た時、すごい馬だな、人を見下すようなすごさがあるな、と思いました。パイロが暴れた時のために横に棒を持った人が立っている。こんな種牡馬の仔はどんな馬になるんだろう。手掛けてみたいなと思っていました」と、ミューチャリーの初重賞制覇となった鎌倉記念の直後に語っていた矢野調教師。その言葉通り、調教の後には闘志あふれる激しさを見せるのもミューチャリーでした。

 ラストランとなったダイオライト記念では競走中止。「立て直しのためにプール調教や坂路調教などを導入してはどうかという意見などもあり、いろいろと模索してきました。でも、ミューチャリー自身が燃え尽きてしまったかのような、走るのをやめてしまったような印象です。JBCクラシック(JpnI)を勝つという、最高の結果をもたらしてくれた馬。本当に感謝しています。ファンがとても多かったことも嬉しかったですね」と矢野義幸調教師。JBCクラシック優勝後には、ファンの皆さんから愛情いっぱいの写真が届いたこともありました。

 ミューチャリーは現在、千葉の乗馬クラブで新しい馬生を邁進中。後輩たちを頼もしく誘導する勇姿も楽しみです。
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