南関フリーウェイ
第118回 見続けることで深まる楽しみ
ふと、初めて競馬場で見たレースは、いつ、どんな内容だっただろうかと思う秋のはじまりです。場所はどこだったかな?勝ち馬と騎手は・・・と。おそらく中央競馬は東京または中山のどちらか。地方競馬は大井競馬場、帝王賞だったと思います。
こんなことが頭に浮かぶのは、競馬場で若い世代の姿を多く見かけるようになったからかも知れません。
新スタンドフルオープン後、初めての夏休みシーズンを迎えた船橋競馬場には、新たなファン層があちこちに。近隣からの来場も増え、子供たちの「お馬さん頑張れ!」という元気な声が競馬場の風景にフレッシュな風を送り込んでいる印象でした。声の主たちは、コロナ禍によって“子供時代でしか体験できない貴重な時間”を奪われていた世代。競馬場でたくさん楽しい思い出を作って、この先も馬や騎手を応援する存在となってくれたら嬉しいですね。
新スタンドオープンや競馬関連のゲームをきっかけに来場する方も多いとのこと。私自身、競馬を始めた理由といえば、周囲が見ていたからというぼんやりとしたもの。友人たちと競馬場に出向き、馬を観たり、馬券を買ったり、内馬場の芝生の斜面で買ったばかりのビールをこぼしたり・・・ということもありました。馬装を観るのが楽しくて、パドックを歩く馬の姿を飽きずに眺めていた思い出も。
そして、光陰矢の如し。コスモバルクからもう20年も経つの?とか、このジョッキー、ディープインパクトが三冠勝った時には生まれていなかったのか・・・と、ふと遠い目になることも。しかし、競馬は見続けてこそさらに楽しみが深まっていく!という醍醐味も実感しています。
その代表的なものが、応援していた馬や取材した馬の産駒の活躍。やはり競馬は繋がっていくのだと、強く感じることも少なくありません。ここで、このコラムでお伝えした中から、いくつか振り返ってみましょう。
2016年6月に掲載したレガルスイは種牡馬となり、昨年初年度産駒・レガコ(船橋)がデビュー。今年は2歳2頭がデビューして、そのうちの1頭・リベェルベロ(船橋)は8月に行われた浦和のルーキーズサマーカップ(SIII)で2着、9月12日に園田で行われたプリンセスカップでは5着。もう1頭の2歳馬、花言葉「感謝」にちなんで命名されたピンクノバラ(川崎)は、9月6日の川崎・スパーキングデビューで競走馬としての晴れ舞台へと踏み出しました。イタリア語で「絆」の馬名を持つレガルスイ。3頭の産駒は全て牝馬ですが、父譲りの闘志を感じる頼もしさがあります。
2021年1月に電話取材した小西牧場は、種付け時の当て馬や、乳馬を提供する牧場として大切な役割を果たしています。取材に応えてくださったのは、岡林光浩厩舎(船橋)で厩務員として働き、重賞制覇の実績もある小西徹さん。当時、小西さんが担当したブレッザが繁殖牝馬となり、繋養されていることに触れましたが、その初仔ブレッザドリーム(船橋)が今年5月にデビュー。夢の続きを紡いでいます。
また、見続けていることで感じる競馬の神様の存在、というと少々ドラマがかった印象にもなりますが、その存在を感じるシーンにも出会いました。
8月29日の船橋競馬場・ハイビスカスデビュー2歳新馬。このレースで、2012年と2014年の東京ダービー優勝馬の産駒が揃ってデビュー。2012年・プレティオラスの産駒は6枠6番・タンミュー(牝馬 山中尊徳厩舎)、2014年・ハッピースプリントの産駒は5枠5番のヴォラーレ(牡馬 川島正一厩舎)。けして多くはない地方競馬から種牡馬入りした馬の中から、東京ダービー馬の産駒が並んでパドックを周回し、馬場入りする様子は、大歓声の中のいた父馬たちの勇姿を思い起こさせ、あの日から繋がる風景を見られることへの、競馬ファンとしての幸せを感じるものでした。ちなみにこのレースは、ヴォラーレがハッピースプリント産駒として南関東初勝利をおさめています。(掲載写真)
さて、いよいよダート三冠最後の一冠、ジャパンダートクラシック(JpnI)も目前です。昨年まで行われていたジャパンダートダービーという大舞台で輝いた馬たちを思い出しながら、繋がっていく新しい時間を楽しみたいと思います。