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第100回 『Stallions in Japan 2017』

2017.04.14
 一般社団法人日本競走馬協会の制作する種牡馬DVD「Stallions in Japan」の2017年度版が、Web版で配信を開始。また、今年からDVD版の発売も決まった。
 思えば「馬産地ファイターズ」の第1回と第2回で取り上げた題材こそが「Stallions in Japan」の2009年度版。今月号で達成される背番号100(連載100回)の歴史が、ここから始まったと思うと、非常に感慨深い。

 このように大変縁がある(勝手に)「Stallions in Japan」であるが、この度、DVD版をサラブレッド血統センターのオンラインショップで発売することが決定。それに伴い、DVD版を見た感想を週刊競馬ブックの誌面上でお聞かせ願えませんか?との依頼を受けた。

 大変に光栄なことだと思った矢先、実際にDVDを見ている姿を、誌面に掲載させていただけないでしょうか?と思わぬことも言われた。決して絵面が良いとは言えない自分が、この大役を引き受けてしまっていいものなのでしょうか?と質問をしたところ、日本競走馬協会からもOKが出たという。

 「Stallions in Japan」の2017年版は、種牡馬DVD制作事業10周年を記念して、現役種牡馬と功労馬のウォーキング映像と立ち姿の写真だけでなく、DVD版には1950年以降の日本のリーディングサイアーといった名種牡馬の写真や動画も収録されている。

 いきなりDVDを見て感想を話すのも不安があったので、事前に「Stallions in Japan」の2017年度版を送ってもらったのだが、特典映像とも言える24頭の名種牡馬(日本の種牡馬名鑑)たちの映像を見るうちに、競馬ファンだった頃の自分が蘇ってきた。

 24頭の中には動画が残されてなく、代わりに静止画像が映像化されている種牡馬もおり、その中には、ルーラーシップや、ドゥラメンテの5代血統表に名を残すガーサント(FR)もいた。その姿に2頭との類似点を探そうとした一方で、背景の屋根に書かれていた「FARM」の文字を見て、撮影場所は社台ファーム白老(今の社台コーポレーション白老ファーム)であることに気付かされた。

 背景に目が行ってしまった、という意味ではトヨサトスタリオンセンターで種牡馬入りを果たしたマルゼンスキーも一緒だった。

 種牡馬としてまだ健在だった頃に、ライターを始めていたにもかかわらず、実際にじっくりとマルゼンスキーの姿を見たことは一度も無かった。それだけに動画で見る馬っぷりの良さには驚嘆した一方で、その後ろを走る日高本線の車両や、「National」の看板が気になって仕方なくなった。

 その他の種牡馬たちも、動画で在りし日の姿を確認できた感動だけでなく、背景や馬を引くスタッフの皆さんの姿を見て、「ロケ地はこの辺だろうなあ」や「あのスタッフの方も、この頃は若かったのだなあ」などと思っていると、いつの間にか何度もDVDをリピート再生していた。

 数日後、いわば「イメージモデル」としての撮影に臨むべく、サラブレッド血統センターの北海道事務所がある、新ひだか町へと向かった。その道中でトヨサトスタリオンセンターの前を通ったとき、ここにマルゼンスキーが繋養されていたんだよなあ、と少しだけ車のスピードを落として、ロケ地であろう放牧地に目をやっていた。

 モデルとなった自分の姿は、13日発売号の週刊競馬ブックのカラー面に掲載されていたので、ご覧になられた方もいらっしゃるはず。あの村本浩平(笑)でも興味津々の種牡馬映像がDVD再生環境があれば、いつ何時でも見られるのであるから、ホースマンのみならず、競馬ファンも必見と言える。

 個人的な楽しみ方としては、父サンデーサイレンス(USA)と息子ディープインパクトの組み合わせのように、父とその後継種牡馬達の馬体の共通点や違いをチェックすること。これは同じような動画(歩き、立ちポーズ)をすぐに何度も再生できるDVDならではのメリットであるとともに、それだけ日本で内国産の父系が広がりを見せている証明だとも言える。

 DVDの映像は一般社団法人日本競走馬協会のホームページ上からの視聴も可能であり、そこには英語版のリンクも張られている。今や海外でも活躍が目覚ましい日本産馬達だが、その父の姿を確かめるべく、世界のホースマンも動画を何度も再生するに違いない。

 サラブレッドの血統は文化であることを、「Stallions in Japan」は改めて証明してくれている。制作現場にも立ち会ったことがあるだけに、毎年の更新は大変だと思う一方で、今後も映像記録を残し続けて欲しいと願う。

 そして数十年後、日本で父系が更に発展することでボリュームを増すであろう「日本の種牡馬名鑑」の動画を見ながら、「馬も人も俺も、あの頃は若かったなあ...」と言えるような老後を送りたい(笑)。
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