北海道馬産地ファイターズ
第184回 『聴く競馬』
取材で運転する機会が多いこともあるのだが、かなりのラジオリスナーである。
車内ではまさに時報替わりにラジオを流しており、その都度、同じ番組ばかりを聴いているがばかりに今では時計を見なくとも、何時ぐらいかを耳で判別できるようになった。
しかしながら、頻繁に取材で赴く日高地方は、静内から国道235号線を南下していくと、FMもAMもカーステレオでの受信が危うくなっていく。それも野球中継や競馬中継を聴いている時だと最悪である。
あと1球で試合が決まる場面や、最後の直線での叩き合いなどで、途切れ途切れにしか音声が聴こえてこなくなった時には、結果が分かるまでの間、おあずけされたような気持ちにもなってくる。しかも、待ちわびていた結果が最悪だった場合は、余計に落ち込んでしまうのだが…。
その問題を解消する画期的なアプリが、2010年にサービスを開始した「radiko」である。radikoの最大の特徴は全国の民放ラジオ局が、インターネット環境のある場所ならばどこでも聴けることであろう。
ドコモユーザーである筆者だが、日高管内の国道沿いなら、多少のタイムラグはあったにしても、ほぼクリアにradikoの音声を聴くことができる。ラジオリスナーとしては、最高のアプリとも言える。
昨年亡くなった父もラジオ好きだったというのか、短波放送が受信できるラジオを持っていた。ダイヤルで周波数を合わせるラジオで、短波放送を聴くのは非常に難しく、まさにミリ単位の操作でクリアな音声を拾えた時にはとても興奮した。
その時に耳にしていたのが「ラジオたんぱ」こと、現在のラジオNIKKEIである。平日は株価ばかりが流れていたにもかかわらず、それが週末となると競馬の実況一辺倒となり、その二面性に驚かされた。
当時はまだ競馬を深く知ろうとはしてなかったので、短波放送を聴く機会はそれほど無かったのだが、ライターとして活動をし始めた矢先に、競馬ブックの懸賞で短波放送が受信できるポケットラジオが当選した。
そのポケットラジオは繊細な周波数探しをせずとも、サーチボタンを押すと、その時点で最もクリアに聴こえる周波数を探してくれるという優れものだった。
これがあれば地上波で放送されていない午前中のレースも何とかなると気付き、週末に出かける際には耳にイヤホンを突っ込みながら、サーチボタンをカチカチ押していた。
そのポケットラジオも寿命を迎え、買い直そうかと考えていた矢先にradikoでラジオNIKKEIが配信されるようになった。しかもradikoを使えば、ラジオ日本などでも競馬中継を聴くことができた。
JRAのサイトを調べたところ、全国でも民放各局の番組内に内包する形で競馬中継を放送している。また、北海道の民放局であるSTVラジオでは、各場のメインレースに加えて、JRA北海道シリーズの開催日になると、函館と札幌の競馬場から準メインレースの実況放送も届けている。
ラジオ(含むradiko)で競馬中継を頻繁に聴いているのは筆者ぐらいかなと思いきや、知り合いの牧場スタッフもSTVラジオや、radikoからラジオNIKKEIを聴く形で、聴く競馬を楽しんでいた。この辺は車での移動が多い北海道ならではと言えるのかもしれない。
その昔、携帯を持っていた人から流れてきた音声が、競馬の実況中継だったことに驚いたこともあったのだが、今から考えると、あれはラジオNIKKEIのテレホンサービスである、テレドームでの配信だったのだろう。
聴く競馬のメリットは、耳からの情報に頼るがばかりに、想像力を駆り立てられることである。だが、それよりも大きなデメリットとなっているのは、僅差のレースだと、実況をするアナウンサーの視点に判別を任せるしかないことである。
そして、自分の応援している馬がどこにいるかといった位置取りも、その馬名が出てくるまでは分からない。まるで難聴地域に入ったかのようにもどかしい思いもするのだが、まるでレースの映像を見せてくれるかのように、白熱した攻防を届けてくれるラジオのアナウンサーには感謝しかない。
昨年の3月からJRAのホームページ内で全てのレース動画の配信が始まった。グリーンチャンネルWEBに登録していない自分には非常に有難いサービスであるのだが、やはり、移動中など画面を凝視できない場面ではラジオの実況に頼ってしまう。
ラジオ放送は衰退期を迎えているとも言われるが、耳から入ってくる情報を必要としている人は必ずいる。グリーンチャンネルに出演させてもらっている身分でこんなことを書くのもどうかと思うが、これからも「聴く競馬」を楽しんでいきたいと思う。