北海道馬産地ファイターズ
第101回 『どうなる、サンチバ?』
2017.05.17
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今や競馬関係者のみならず、競馬ファンにも略称で呼ばれている、「サンチバ」こと産地馬体検査。その産地馬体検査こと「サンチバ」だが、今年に入って様々な変化があった。
まずは今まで4日間(浦河会場、静内会場が1日、早来会場が2日)だった北海道地区の第1回産地馬体検査の日数が、早来会場の1日減により3日間に。また、昨年までは6月に行われていた第2回産地馬体検査が今年は廃止となっている。
これはひとえに産地馬体検査を受検する2歳馬の頭数の減少によるところが大きい。ちなみに名簿記載時における頭数は浦河49頭、静内102頭、早来101頭となっているが、多い時の名簿に記載された受検頭数と比較すると、約半分にまで減っている。
そもそも産地馬体検査の意義は、北海道内や本州などの育成牧場で管理されている2歳馬たちが、美浦や栗東のトレーニングセンターに入厩しなくとも、トレーニングセンター内で行われている特徴検査などを牧場に近い場所で受検できることにあった。検査に合格した2歳馬たちは、牧場から競馬場へ直接移動して、2歳戦への出走が可能となるというメリットがあった。
この産地馬体検査のメリットを生かしていたのが、JRA北海道シリーズで2歳戦を使いたい厩舎や関係者だった。仕上がりの早い馬は、そのまま牧場でトレーニングを続けさせ、産地馬体検査に合格させた後に、そのまま新馬戦へと出走。まだ、出走馬も揃っていないこともあり、完成度の違いで勝ち上がった2歳馬たちは、そのまま2歳重賞戦線でも活躍を見せることが多々見られた。
しかし、JRA北海道シリーズで行われていた日本一早い新馬戦(メイクデビュー)は、今や日本ダービーの翌週からメイクデビューが組まれるようになった東京と阪神にその座を奪われてしまっている。
その影響もあるのか、近年では美浦や栗東の近くに続々と作られた調教施設がデビューまでの管理を任されるようになり、まだ雪が残っている時期に、北海道内の育成牧場から移動する2歳馬も珍しくなくなった。
しかも、現2歳世代からは「早期特例登録制度」の導入が図られており、1歳の9月から2歳の2月までの期間に登録された馬は、トレーニングセンターに入厩をせずとも競走馬としての登録が可能。馬体検査は入厩時に行えるようになったこともあり、競走馬登録を行った2歳馬たちは、是が非にでも産地馬体検査へ足を運ぶ必要が無くなった。
こう書いていくと、産地馬体検査を取り巻く状況が好転することはまるで無いのだが、取材陣にとって産地馬体検査は、2歳馬の取材(POG)を行う上で最適な現場となっている。
日高や胆振に点在する育成牧場を取材で回るのは、かなりの日数が必要となるが、産地馬体検査の会場に足を運べば、様々な育成牧場で手がけられた2歳馬の姿が一気に見られる。よって、産地馬体検査の取材には多くの取材陣が足を運ぶようになっている。
一方、牧場側は産地馬体検査に対して、あまりいい印象を持ってはいない。牧場スタッフによっては、「ここで検査が終われば入厩もスムーズになりますし、馬運車に慣れる練習や、違う環境に慣らす意味合いもあると考えています」と答えてくれる人もいるものの、「放馬も見たことがあるし、テンションが上がってしまう馬も出てくるから、馬だけでなく、人にとっても危ないよね」と眉をひそめる人もいた。
勿論、産地馬体検査は管理調教師からの申し込みで行われているのだが、最近では秋以降の入厩を目指すような2歳馬も、検査に訪れるようになってきた。こうなると本来の目的とはまるで違ってくるのだが、その2歳馬を所有するオーナーからすれば、競走馬としての階段を一歩上ったという気持ちになるらしい。ある育成牧場の代表には、「ウチの馬、産地馬体検査を受けたようだけど、どうだった?」と弾むような声で連絡があったという。
取材陣の中でも、毎年のように産地馬体検査の是非が語られている。最近では合同取材を行う育成牧場も増えてきたことで、より効率的に2歳馬の取材ができるようになったのも関係しているかと思うが、やはり、2歳馬たちや牧場スタッフに、撮影や取材などで無理をさせたくないとの思いもあるのだろう。
来年の産地馬体検査だが、今年より検査の頭数が減るようだと、更なる日数の削減、もしくは廃止になることも十分に考えられる。
競馬を取り巻く環境やシステムの移り変わりの中で、今や産地馬体検査は時代から取り残された制度となってしまっている。「サンチバ」との言葉を口にできるのも今年限りとなってしまうのだろうか?
まずは今まで4日間(浦河会場、静内会場が1日、早来会場が2日)だった北海道地区の第1回産地馬体検査の日数が、早来会場の1日減により3日間に。また、昨年までは6月に行われていた第2回産地馬体検査が今年は廃止となっている。
これはひとえに産地馬体検査を受検する2歳馬の頭数の減少によるところが大きい。ちなみに名簿記載時における頭数は浦河49頭、静内102頭、早来101頭となっているが、多い時の名簿に記載された受検頭数と比較すると、約半分にまで減っている。
そもそも産地馬体検査の意義は、北海道内や本州などの育成牧場で管理されている2歳馬たちが、美浦や栗東のトレーニングセンターに入厩しなくとも、トレーニングセンター内で行われている特徴検査などを牧場に近い場所で受検できることにあった。検査に合格した2歳馬たちは、牧場から競馬場へ直接移動して、2歳戦への出走が可能となるというメリットがあった。
この産地馬体検査のメリットを生かしていたのが、JRA北海道シリーズで2歳戦を使いたい厩舎や関係者だった。仕上がりの早い馬は、そのまま牧場でトレーニングを続けさせ、産地馬体検査に合格させた後に、そのまま新馬戦へと出走。まだ、出走馬も揃っていないこともあり、完成度の違いで勝ち上がった2歳馬たちは、そのまま2歳重賞戦線でも活躍を見せることが多々見られた。
しかし、JRA北海道シリーズで行われていた日本一早い新馬戦(メイクデビュー)は、今や日本ダービーの翌週からメイクデビューが組まれるようになった東京と阪神にその座を奪われてしまっている。
その影響もあるのか、近年では美浦や栗東の近くに続々と作られた調教施設がデビューまでの管理を任されるようになり、まだ雪が残っている時期に、北海道内の育成牧場から移動する2歳馬も珍しくなくなった。
しかも、現2歳世代からは「早期特例登録制度」の導入が図られており、1歳の9月から2歳の2月までの期間に登録された馬は、トレーニングセンターに入厩をせずとも競走馬としての登録が可能。馬体検査は入厩時に行えるようになったこともあり、競走馬登録を行った2歳馬たちは、是が非にでも産地馬体検査へ足を運ぶ必要が無くなった。
こう書いていくと、産地馬体検査を取り巻く状況が好転することはまるで無いのだが、取材陣にとって産地馬体検査は、2歳馬の取材(POG)を行う上で最適な現場となっている。
日高や胆振に点在する育成牧場を取材で回るのは、かなりの日数が必要となるが、産地馬体検査の会場に足を運べば、様々な育成牧場で手がけられた2歳馬の姿が一気に見られる。よって、産地馬体検査の取材には多くの取材陣が足を運ぶようになっている。
一方、牧場側は産地馬体検査に対して、あまりいい印象を持ってはいない。牧場スタッフによっては、「ここで検査が終われば入厩もスムーズになりますし、馬運車に慣れる練習や、違う環境に慣らす意味合いもあると考えています」と答えてくれる人もいるものの、「放馬も見たことがあるし、テンションが上がってしまう馬も出てくるから、馬だけでなく、人にとっても危ないよね」と眉をひそめる人もいた。
勿論、産地馬体検査は管理調教師からの申し込みで行われているのだが、最近では秋以降の入厩を目指すような2歳馬も、検査に訪れるようになってきた。こうなると本来の目的とはまるで違ってくるのだが、その2歳馬を所有するオーナーからすれば、競走馬としての階段を一歩上ったという気持ちになるらしい。ある育成牧場の代表には、「ウチの馬、産地馬体検査を受けたようだけど、どうだった?」と弾むような声で連絡があったという。
取材陣の中でも、毎年のように産地馬体検査の是非が語られている。最近では合同取材を行う育成牧場も増えてきたことで、より効率的に2歳馬の取材ができるようになったのも関係しているかと思うが、やはり、2歳馬たちや牧場スタッフに、撮影や取材などで無理をさせたくないとの思いもあるのだろう。
来年の産地馬体検査だが、今年より検査の頭数が減るようだと、更なる日数の削減、もしくは廃止になることも十分に考えられる。
競馬を取り巻く環境やシステムの移り変わりの中で、今や産地馬体検査は時代から取り残された制度となってしまっている。「サンチバ」との言葉を口にできるのも今年限りとなってしまうのだろうか?