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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第128回 『馬力本願プロジェクト PARTⅡ』

 新ひだか町で「馬力本願プロジェクト」の推進業務にあたる、地域おこし協力隊の活動を行っている糸井郁美さん。糸井さんは札幌競馬場の乗馬センターで、馬と接する楽しさに気付かされただけでなく、大好きだった乗馬が亡くなるという喪失感も乗り越えながら、馬と人とを繋いでいく仕事を志していく。

 乗馬を通した知人と交流を深める中で、日高にも幾度となく足を運んでいた糸井さんだったが、その時に見つけたのが、新ひだか町で募集していた、地域おこし協力隊だった。

 「地域おこし協力隊」の柱は三つあり、一つは「おもてなし環境・基盤の整備」、もう一つは「移住定住の促進」、そしてもう一つが「子どもたちへの馬文化の伝承」でした。実際に活動を行うに当たり、自分なりに馬文化の伝承とは何かを考えたのですが、何をしていいか分からず、当時は大変でした」(糸井さん)

 まずは新ひだか町内にある、馬にまつわる施設の見学を思い立った糸井さんは、北海道大学研究牧場やライディングヒルズ静内の見学ツアーを企画する。しかしながら町民の反応は薄く、それ以上に驚かされたのは町内の子供たちが、日高地区が日本一の馬産地である認識をそれほど持っていないことだった。

 「私の認識としては、すぐ馬と触れあえる場所であるのに対して、町民の方だけでなく、子供たちにとっても牧場やそこにいる馬たちは、当たり前に見える『景色』でしかなかったのかも知れません」(糸井さん)

 また、実際に様々な場所へと出向いた糸井さんは、全く馬の仕事に関わっていない町民にとっては、牧場が立ち入りにくい雰囲気の場所であることを感じ取った。

 「馬が間近にいるにもかかわらず、それはもったいないなと思いました。その時に新ひだか町内の馬に関する施設やそこに携わる人、競走馬生産の背景や歴史を、そこに住む子供たちに伝え無ければいけないとの思いが、一気に膨らんできました」(糸井さん)

 プロジェクトは「ひだかうまキッズ探検隊」と名付けられた。糸井さんの申し出に、新ひだか町も町内全ての小中学校に告知を行っただけでなく、ツアーを行うバスもチャーターしてくれた。その糸井さんの行動を見て、協力を申し出る関係者が次々と現れる。その中には地元の生産者や競馬マスコミ、そして、JRA関係者の姿もあった。

 2017年の5月、ついに全9回の「探検プログラム」が始動する。記念すべき第1回は、新ひだか町の博物館に、町内の軽種馬生産の歴史を博物館の職員に聞きに行くことだった。

 「初年度は小中学生を合わせて11名でした。中には生産者のお子さんもいらしたのですが、目の前に馬がいるにもかかわらず、知らないことも多かったようで、講師となる方から丁寧に説明を受けることで、更に馬や馬産地に対する興味を深めたようでした」(糸井さん)

 第2回目は「馬を見て・触れて・知ろう」ということで、三石町にある乗馬施設のMKRanchを訪ねると、なんと、その後には「サラブレッドが競走馬になるまで」との題目で、日高町のダーレージャパンファームを訪れただけでなく、ホッカイドウ競馬が開催されていた門別競馬場へも訪問する。

 驚くべきは「キミにもなれる?馬のお仕事調教師編」との題目で訪ねたのは、日高どころか、北海道を飛び出しての栗東トレーニングセンター。訪問先となったのは、今後どうするかを悩んでいた時期に、縁もゆかりもなかったにもかかわらず、一方的に手紙を送った角居勝彦調教師の元だった。

 「まず、新ひだか町の役場の方に、こんなツアーをやりたいのですが...と相談をしました。角居先生からは了承をもらったのですが、その際に栗東トレーニングセンターとの連絡などを取ってくださったのが、札幌競馬場の乗馬センターでバイトをしていた頃からお世話になっていた、BTC軽種馬育成調教センターの田村正和場長でした」(糸井さん)

 さすがに栗東までの旅費は町では出せなかったものの、それでも探検隊のほとんどの子供たちが参加した。

 生産者のお子さんも、生産馬たちがトレーニングセンターでどのように管理されているのかを知るのは新鮮だったようですし、それは門別競馬場を訪ねた際の、田中淳司先生の厩舎でも一緒でした。また、ダーレージャパンファームを訪ねた際にも、日々の管理に加えて、離乳についても教えてもらったのですが、どの子も興味深い表情をしながら話を聞いていました」(糸井さん)

 成功に終わったと言える一年目の「新ひだかうまキッズ探検隊」。2年目に向かうに当たって糸井さんは、子供を対象としたまた違った活動を思いつく。それは「子ども達が楽しめる馬の祭り」を行う「さくらうま」というグループだった。     (次号に続く)