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第144回 『馬九いく守で馬券も上手く

2020.12.16
 今年、最後のせり市場となった、ジェイエス秋季繁殖馬セール当日。競走馬のふるさと日高案内所でのんびりと、いや、取材に向けての鋭気を養っていると男性職員が、「村本さん、これ知ってますか?」と言って、お守りと御朱印帳を持ってきた。
 最近は御朱印を集めたり、神社に行くのが流行ってますよね、と言おうと思ったところ、その御朱印帳とお守りにデザインされた馬の姿に目が行く。思わず、何ですかこれ?と質問を向けると、その男性職員は、「早来神社で馬がデザインされた御朱印とお守りを扱っていると聞いたので、近くに寄った際に購入してきました。村本さんなら取材の合間にも寄りやすいでしょうし、ひょっとしたら、記事になるのではと思いまして...」とありがたい言葉をかけてくれる。ちょうど、コラムのネタを探していたタイミングであり、「貴重な情報ありがとうございます!」と男性職員に深々と頭を下げた。

 それから1週間後、僕は早来神社にいた。場所は安平町早来の中心部というのか、大まかに言うと、町内に一軒しかないセブンイレブンの隣。その道路を挟んだ場所の駐車場に車を止めて鳥居に一礼。そして、境内へと向かう階段を上っていった。

 事前にインターネットで調べていたのだが、2018年に発生した北海道胆振東部地震の影響から、手水舎は壊れたままとなっていた。その一方で、先ほど通り過ぎた鳥居だけでなく、社殿も真新しい印象を受けるのは、修復工事が終わった箇所もあるからなのだろう。

 馬産地ライターを名乗らせてもらってから、かれこれ20云年。毎年どころか、ほぼ毎週訪れていた時期もある安平町早来ではあるが、その間に一度も神社を訪れたことは無かった。

 改めて、長きに亘ってこの町で仕事をさせてもらったことへの感謝と、これからも、幾度となく訪れさせていただけることを願いながら、本殿の神様に向かって二礼の後に二拍手、そして深々と一礼をさせてもらう。

 心が清らかになった後は、御朱印帳とお守り探し。社務所は本殿のすぐ近くにあり、ごめんくださいと言いながら引き戸を開けると、そこには、男性職員が見せてくれたのと同じ御朱印帳とお守りがあった。

 対応してくださった女性の方に、一応、競馬関係のライターをしていると身分を明かした後で、雑談のような取材をさせてもらう。話を聞くとこのデザインの御朱印帳やお守りを受けるために、競馬ファンが立ち寄ることも珍しく無いらしく、先日も京都からお守りを購入しにきたという方もいたという。

 また、町内で制作されたパンフレットを見せてもらうと、そこにはディープインパクトのお祓いを行ったとも書かれていた。その時、社務所にやって来た宮司の方が話を進めてくれたが、神事の度に町内の生産牧場へと出向いているらしく、その時にディープインパクトのお祓いもしてきたとも教えてくれる。

 宮司の方は早来神社のあらましについても話してくれた。今年で御鎮座126年という歴史のある神社で、元々、町内の開拓に多大なる貢献をしてきた農耕馬の健康を祈願してきており、その頃から馬との縁があったという話。そして「馬九いく守」と名付けられた馬のデザインが入ったお守りに関しては、「苫小牧ではホッキ貝をイメージしたお守り(樽前山神社の貝運一念発起みくじだと思われる)が作られていたのですが、ここでも地元にちなんだものができないかと思いました」と教えてくれる。こうして作られた「馬九いく守」だが、九の数字が示すとおりに、「勝運」「金運」「出世運」「家庭運」「愛情運」「健康運」「商売繁盛」「豊漁豊作」「受験合格」という九つのご利益を授かるというオールマイティーなお守り。しかもその幸運が、神社の名前のように「早く来る」とのいわれがあるのも心強い。

 その時、書き置きをしていただいた御朱印帳を女性の方が持ってきてくれた。宮司の方にもお時間を取らせてしまったお礼をして、社務所を離れる。その時ふと、同じように馬との歴史が深い日高管内の神社でも、こうしたデザインのお守りや、御朱印帳は受けられるのだろうかと思った。

 浦河町の西舎神社では、新春の恒例行事となっている騎馬参拝が、平取町の義経神社の初午祭でも、矢刺しの神事が行われているが、馬にちなんだお守りや、おみくじが売られているとは聞いたことが無い。

 もし、これをお読みの生産関係者の方から、貴重な情報をいただけるのなら、是非とも参拝に行きたいと思う一方で、馬産地の特色を更にアピールするために、日高管内の神社でも馬にまつわるお守りや、おみくじを制作していいのではないだろうかとも思ってしまう。

 ちなみに御朱印帳とお守りをいただいてからの馬券の収支ですが、これまた馬九いってまして...(あくまで個人の感想です)。
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