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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第147回 『無所属のフリーライター』

 そういえば、年明けに優駿編集部から届けられる取材用のパスが、まだ手元にないことに気づいた。

 いつもパスを送ってくれている、優駿編集部の道産子編集者に話を聞くと、JRAの報道にパスの申請は出しているとのこと。だが、年末から年始にかけての、新型コロナウイルス感染者の大幅な増加を受けて、JRA(含む優駿編集部)では、テレワークで業務を行っている職員も多くなっているのも原因らしい。てっきり、「ウチの名を借りて、好き勝手に行動しやがって!今年からパスはあげない!」と言われるのかとも思っていただけに、少しだけホッとする。それでも、パスをもらえたところで、緊急事態宣言が3月7日まで延長され、2月上旬時点で無観客開催が続いている今の状況からすると、今年も自分のようなフリーの人間は、競馬場に入れないのではという気もしてくる。

 昨年、最後にパスを見せて競馬場へ入ったのは、JRA北海道シリーズが終了した次の週の9月16日。パークウインズとしての営業が再開された札幌競馬場へ取材に訪れた時だった。

 昨年の北海道シリーズ開催中には札幌競馬場だけでなく、函館競馬場にも全く足を踏み入れなかった。それどころか、20年にわたって歴史的な瞬間を目の当たりにしてきた、日本ダービーにも行けず、ジャパンCは道内のTV局が企画するYouTubeの番組に出演しながら、モニター越しにアーモンドアイのラストランを見ていた。

 個人的な意見だが、いくらパスをもらっているとはいえ、取材対象者の人数制限が決められている以上、自分のようなフリーの人間が競馬場に入れないのは、仕方ないと思っている。

 そりゃあ、2歳馬の取材を行ってきた者として、世代の頂点を決める日本ダービーは見なければいけないレースであるし、アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトと三冠馬三頭の対決となった今年のジャパンCは、一競馬ファンとして、現地で見てみたかった。

 でも、駄目なのだ。コロナ禍ではやはり、何かあった時の責任の所在があいまいとなる、自分が開催中の競馬場に入っては駄目なのだ。

 第140回のコラム「護持」の中で、「日常生活がこのまま「護持」できるのならば、自分は何だって受け入れてやろうと思う」と書かせていただいた。その後、幸いなことに自分の日常生活や、近しい存在の人たちが新型コロナウイルス感染症になることもなかった。

 年が明ければ、状況は変わると思っていた。でも、コロナは対岸の火事どころか、自分の周囲をウイルスで包囲し続けていたことに変わりはなかった。

 これまでも牧場の取材ではマスク着用と、自作したアルコールスプレーで、手の消毒をしてから取材に臨んでいただけでなく、「三密」の状況を作り出さないようにと、取材対象者とともに気を使ってきた。だが、それもしばらくは当たり前のこととして、続けざるを得ないのだろう。少なくともこの取材スタイルにしてから、自分だけでなく、接点がある取材対象者もコロナどころか、インフルエンザにも罹患していない。

 防疫に努める効果はあったと言えるだけに、今後もそのスタイルを崩すつもりはない。それでも、ほんの僅かの隙間を縫うように、粘膜にとりついてくるのが新型コロナウイルスの怖さなのだろう。この原稿を書いている頃には、北海道内の各スタリオンで種牡馬展示会がスタートしており、その後には2歳馬の取材も控えている。

 その際、オフィシャルな立場でこの場所に来ているという証明と、そして、自分の気持ちを引き締めるために、取材用のパスを首からぶら下げるようにしてきた。

 でも、新しいパスが届いていない今年は、昨年のパスをぶら下げながらの取材となる。とはいえども、緊張感と覚悟は持って現場に出向きたい。競馬が続いている限り、自分がライターとして仕事を続けられているのは間違いない。

 このコロナ禍でもありがたいことに、牧場関係の仕事は、途切れることなくいただいている。各主催者から日程が発表された本年度の競走馬市場も、直前になってみないとまだ状況は分からないが、昨年は充分な防疫対策が行われた結果、どの市場からも陽性者が出なかったのは、一つの指針になったと言える。競馬場には行けなくとも、馬産地ライターとしての仕事に支障は出ていない。

 自分は無所属のフリーライターである。ただ、馬産地に住む皆さん、そして競馬が、パスを持たない自分に生きる場所を与えてくれたのだと、改めて感じる。