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第167回 『九州再上陸 PartⅡ』

2022.11.18
 競輪発祥の地である小倉競輪場。1998年には収容人数は最大2万人というアリーナ施設を備えた北九州メディアドームと同一施設となり、毎年11月下旬にはGⅠ競輪祭が行われる、競輪ファンにはお馴染みのバンクでもある。
 競馬だけでなく競輪ファンでもある筆者としては、小倉に来たからには一度行ってみたいと思っていたが、ホテルから乗車したタクシーの運転手に目的地を告げると、「今日、あそこで競輪やってましたっけ?」との言葉が返ってきた。競輪は競馬と同様の日中開催だけでなく、地方競馬のようなナイター開催や、最近ではモーニング開催やミッドナイト開催も行われている。

 好調な売り上げを示す地方競馬のナイター開催と同様に、競輪のナイター開催やモーニング開催も好調な売れ行きを示している。ただ、ネットでの売上が年々増加してきた一方で来場者数は減少を続けており、モーニング競輪やミッドナイト競輪では、無観客での開催が行われている。

 この日の小倉競輪場はナイター開催であったが、F1という高い格付けがされた開催となっており、男女ともにGⅠレースに出走しているような選手も出場していた。その運転手の言葉に、心配になって手にしていたスポーツ新聞を開くと、確かに最終日といえども競輪は開催されている。そのうち、「近づいてきましたよ」とタクシー運転手が大きなドーム型の建物の方を見やるが、「あれだけの建物を作っておきながら、稼働日数が少ないのは勿体ないですよね」と話しかけてきた。その言葉に、「自分はここで競輪を見るのが楽しみで来たんですけど!」と言葉を返そうと思ったが、競馬発祥の地である地元の人でさえ、競輪がその認識なのではと思うとショックを受けた。ただ、場内に入ってみると、先ほどの運転手の言葉が正しかったのではと思えた。生まれて初めて目の当たりにする屋内バンクは、これまで見てきた競輪場よりも遥かに近未来的であったが、場内まで近未来のギャンブル環境を証明しているというのか、とにかく入場者の数が少ない。

 先ほども書いたように、GⅠに出走するような選手が出場している大会であり、競輪ファンならずとも、そのスピードの違いや、気迫溢れる走りはアピールできるはず。だが、新型コロナウイルス感染症対策として、入場者数が500人に制限されているとはいえども、とてもそれだけの人数がいると思えない。

 小倉開催に来ていた知り合いのトラックマンがセッティングしてくれた酒宴まで、数レースを購入してみたものの、楽しみにしていた小倉競輪場の寂しい光景を見たショックもあったのか、的中は一つも無かった。ただ、この入場者の数を見た時に、明日の小倉競馬場にはどれだけの来場者があるのか、そして日曜日のイベントには、どれだけの人が見に来てくれるのかが非常に不安になった。

 次の日、博多の広告代理店の女性に言われたとおりに、小倉駅から競馬場まで直行しているモノレールに乗車する。
 その前に駅構内に入っているコンビニでスポーツ新聞を購入したが、車内では同じようにスポーツ新聞や、競馬新聞を手にした乗客の姿が数多く見受けられた。

 その乗客の波に身をゆだねるようにしながら、小倉競馬場前で下車をする。出口のすぐ目の前に競馬場の入場口があるが、その距離感はまさに徒歩0分。このアクセスの良さは、全国10か所の中央競馬場で一番と言っていい。

 小倉競馬場は6階建てであり、自分が見慣れている函館競馬場と同様に、建物がギュッと凝縮されている印象を受けた。それでも、吹き抜けとなった場内は開放感もある。

 函館や札幌競馬場などと違ってコース内に入れない分、スタンドの後ろ側にはサンシャインパークという名の屋外公園が設置されていたが、そこには、早い時間から家族連れが詰めかけていた。

 土曜日は注目度の高いレースが開催されないこともあってか、そこまでの来場者は詰めかけなかったものの、モノレール駅方面からやってくる人の波は途切れなかった。その光景を見て、小倉市民や近郊の競馬ファンにとって、小倉競馬の開催は心待ちにしていたイベントであるのだろうと感じられた。

 一方、自分が足を運んだ日の小倉競輪は、コロナ禍かつ、平日のナイター開催となったことで、開催アピールも難しかったのだろう。

 この日はネットを中心に車券の売り上げは良かったようだが、競馬と同様に競輪もライブならではの楽しさや迫力がある。

 タクシー運転手の話を聞く限り、競輪祭には多くの来場者があるようだが、通年で開催可能な屋内バンクだけに、そこだけしか地元民に認知をされていないのは、どこか勿体ない気もした。
(次号に続く)
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