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第59回『IPAT発売から1年』

2013.11.15
 2012年10月3日の地方競馬IPAT発売開始から、1年が過ぎた。発売スタート当初の話は本誌JBBA NEWS2012年11月号に書いているので参照されたい。
 この地方競馬IPATは毎日買えるわけではない。今年の場合は、ネット銀行口座を中心とした即PAT方式は、毎週火曜日、水曜日、木曜日、土曜日、日曜日と特定の月曜日に。ロック口座のA-PAT方式は土曜日、日曜日と特定の月曜日に馬券を購入することが出来る。特定の日を除く月曜日と金曜日はJRA開催のためのシステムメンテナンスがあり、馬券を購入することができない。

 また、発売日は原則としてダートグレード競走、もしくは1着賞金1,000万円以上の重賞競走、これを「基幹競走」と呼ぶが、この基幹競走が行われる日、そしてJRAの開催日である。発売は基幹競走が行われる場を含め3場までとなっている。ただし、昼間開催3場+ナイター開催1場や、昼間開催2場+ナイター開催2場のような、ある程度の弾力性をもつ発売もされている。

 発売可能最終時刻は土曜日17時11分、日曜日18時11分。ナイター競馬は火曜日と水曜日が20時46分、木曜日は17時11分までとなっている。意外にルールが細かい。

 さてこの地方競馬IPAT、効果があったかなかったか、先に結論を述べると、絶大な効果があった、ということになる。
 発売前の2012年4月~9月と、発売後の2013年4月~9月の各地方競馬の発売成績を比較すると、総売得額で最高は高知競馬の前年比134.3%、最低でも前年より2日開催日が少なかった浦和競馬で99.1%。1日の平均でも最高は高知競馬の140.2%、最低は大井競馬の100.1%。最低でも前年超えという結果である。

 どれほどのパワーがあったかというのは、在宅投票の数字を見るとよく分かる。
 高知競馬は元々本場以外の場外発売の比率が高い競馬場だったが、昨年の4月~9月との比較で10億4,387万4,700円増え、前年比143.0%。場外発売の構成比は86.9→88.6%と増え、そのうち在宅投票は66.23%→75.09%と大きく増加している。

 もちろん、この数字全てがIPATの増加ではないが、例えば岩手を例に取るとIPAT発売のなかったダイヤモンドカップが前年比当日122.7%、レース単体92.8%だったが、IPAT発売のあるレースは、同月のみちのく大賞典で1日144.8%、レース単体179.7%と明らかに跳ね方が違う。

 昨年11月号に書いた通り、高知競馬の特に土日の開催は、JRAの最終レース以降、IPATの発売終了までの3レースほどにターゲットを定める番組編成を続けてきたことが「まだやり足りないファン」を掴む結果となったのだろう。

 昨年、発売当初の傾向として挙げたのは、ナイター競馬と、土日のJRA終了後の薄暮競馬だったが、発売の数字を見ると、在宅投票の比率が各場概ね20~30%の増加している中、岩手が前年比225.4%、構成比18.05→32.89%へ。佐賀が前年比233.8%、構成比23.58→42.71%へと大幅に増加している。売れ筋の重賞をIPAT発売日中心に組んだことと、佐賀のように準重賞など目玉となるレースを増やしたことも一因だろう。

 地方競馬IPATでの発売開始により、各主催者の売ろうとする意識も変わってきた様に思う。例えばIPAT発売日を中心に、日刊紙に2~3レースの馬柱が掲載されることが増えた。複数主催者のレースが掲載されることも多く、スペースの都合で野球やサッカーと同じ面に掲載されることもよくある。とにかく露出が増えた。

 また、グリーンチャンネルなどレースの露出が増えてきたことも大きい。売り上げが下がっている時は、広報費などを圧縮する傾向にあるが、使うべきときは使った方が良い。

 一方で地方競馬を取り巻く環境は変わらず厳しい。地方競馬IPATでの発売がスタートして以降も2013年3月24日をもって広島県の福山競馬場が廃止され、また辛うじて存続はしているものの、愛知県の名古屋競馬場などのように、競馬事業のあり方を問われている主催者がある。

 在宅投票はまず場を選択する仕組みになっている。そこで選んでもらえるような、魅力が必要である。そして、それが一番難しい課題でもある。
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