第5コーナー ~競馬余話~
第172回 「ルール」
第92回東京優駿、日本ダービーが終わった。2025年6月1日、東京競馬場の芝2400㍍を舞台に行われたレースは1番人気のクロワデュノール(牡3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)が優勝した。父キタサンブラック、母ライジングクロス(GB)の血統を持つクロワデュノールは通算5戦4勝、これで東京スポーツ杯2歳S(GⅡ)、ホープフルS(GⅠ)に続く重賞3勝目とした。
キタサンブラック産駒はダービーに強く、初年度産駒のイクイノックスが22年に2着になり、翌23年もソールオリエンスが2着になった。通算4頭目の出走となったクロワデュノールが優勝した。ダービーでのキタサンブラック産駒の成績は【1201】という優秀なものだ。来年以降もキタサンブラック産駒が出走してくれば、馬券を買った方がいいと思えるほどだ。
クロワデュノールが優勝した今年のダービーで、12年から13年間続いていた「ダービーの種牡馬ルール」が崩れた。12年以降の優勝馬とその父馬を表記するので、どんな種牡馬ルールがあったのかを考えてみてください。
12年ディープブリランテ(ディープインパクト)、13年キズナ(ディープインパクト)、14年ワンアンドオンリー(ハーツクライ)、15年ドゥラメンテ(キングカメハメハ)、16年マカヒキ(ディープインパクト)、17年レイデオロ(キングカメハメハ)、18年ワグネリアン(ディープインパクト)、19年ロジャーバローズ(ディープインパクト)、20年コントレイル(ディープインパクト)、21年シャフリヤール(ディープインパクト)、22年ドウデュース(ハーツクライ)、23年タスティエーラ(サトノクラウン)、24年ダノンデサイル(エピファネイア)
正解は、ダービー馬の父はダービーで3着以内だった、です。クロワデュノールの父キタサンブラックはダービーで14着だったので、これまでの法則には当てはまらなかった。
「ダービー馬はダービー馬から」という格言がある。92回のダービーの歴史で父子2代制覇は15組が達成している。この15組のうち11組は07年以降の19年間で達成されている。ディープインパクト産駒の7勝がこの記録に大きく貢献しているが、キングカメハメハ産駒も2勝するなど内国産種牡馬のレベルの向上が父子2代制覇の回数を増やした要因だ。
「ダービー馬はダービー3着以内の父から」という種牡馬ルールは今年崩れたが、「ダービー馬はダービー出走馬から」とすれば、今年も近年の種牡馬ルールは続いたことになる。
今年のダービー出走馬18頭を種牡馬で分類すると、その数は12頭を数えた。出走馬が多い順に並べると、ドゥラメンテ4頭(マスカレードボール、エムズ、ファイアンクランツ、ホウオウアートマン)、キズナ3頭(サトノシャイニング、エリキング、リラエンブレム)、サートゥルナーリア2頭(ショウヘイ、ファンダム)、そのほかは各1頭でキタサンブラック(クロワデュノール)、リオンディーズ(ミュージアムマイル)、エピファネイア(ジョバンニ)、レイデオロ(カラマティアノス)、リアルスティール(トッピボーン)、スクリーンヒーロー(ドラゴンブースト)、イスラボニータ(ニシノエージェント)、スワーヴリチャード(レディネス)、モズアスコット(USA)(ファウストラーゼン)となる。12頭の戦績を振り返ると、ダービーに出走したことのある馬が10頭。不出走はスクリーンヒーローとモズアスコットの2頭だ。
ある程度仕上がりが早く、ダービーに出走できる実力に恵まれた競走馬が種牡馬になる。ダービー出走馬の子どもたちが次の時代でもダービー出走、ダービー制覇につなげる。種牡馬選定レースとしてのダービーが、その重要な役割を果たし、日本の生産界がうまく機能している証拠だ。
この3年、もう一つの種牡馬ルールが続いている。それは「ダービーの1、2着馬の父は同世代」というものだ。
23年がタスティエーラ(サトノクラウン)とソールオリエンス(キタサンブラック)、24年がダノンデサイル(エピファネイア)とジャスティンミラノ(キズナ)、そして今年がクロワデュノール(キタサンブラック)とマスカレードボール(ドゥラメンテ)だ。来年もこのルールが当てはまるのかどうか。今から楽しみだ。