第5コーナー ~競馬余話~
2021年の記事一覧
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第129回 「BC」 2021.12.13
いつか、この日が来ることを願ってはいたが、実際に達成されると、信じられないような気持ちもわき上がってきた。ラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌによる米ブリーダーズカップ(BC)制覇だ。 持ち回りで行われるBCの今年の舞台はカリフォルニア州デルマー競馬場だった。11月5日と6日の2日間で13のGⅠレースが行われる米国競馬の祭典だ。その第2日、先陣を切ったのはラヴズオンリーユー(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)だった。 出走...
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第128回「4代」 2021.11.12
10月3日に中山競馬場で行われた第55回スプリンターズSは単勝3番人気のピクシーナイト(牡3歳、栗東・音無秀孝厩舎)が優勝し、JRA史上初の記録を達成した。 その記録とは父・息子4代にわたるGⅠ制覇である。 ピクシーナイトの父系をさかのぼると次のようになる。モーリス→スクリーンヒーロー→グラスワンダー(USA)だ。いずれも名競走馬として活躍した。モーリスは国内外で計6つのGⅠレースを制した。香港で3勝。JRAでは2015年の安...
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第127回 「繁栄」 2021.10.15
9月5日に新潟競馬場で行われた第57回新潟記念はステイゴールド産駒のマイネルファンロン(牡6歳、美浦・手塚貴久厩舎)が優勝し、11度目のチャレンジで重賞初制覇を果たした。 2018年のスプリングSではステルヴィオの3着、2019年の函館記念ではマイスタイルのクビ差2着などタイトルに手の届きそうなこともあったが、惜しくも敗れた。貴重な白星はデビュー30戦目まで待たなければならなかった。3歳年下の半妹ユーバーレーベン(父ゴールド...
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第126回 「第11位」 2021.09.10
8月8日、東京オリンピックの最終日に函館競馬場では第26回エルムSが行われた。優勝したのはハーツクライを父に持つスワーヴアラミス(牡6歳、栗東・須貝尚介厩舎)だった。 この勝利によって、中央競馬におけるハーツクライ産駒の勝利数は1,258となり、歴代11位のヒンドスタン(GB)と並んだ。翌週の8月14日には札幌競馬の第7レースでコーストラインが1番人気に応え、通算勝利数を1,259に伸ばし、父を単独の歴代11位へと押し上げた。産駒...
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第125回 「至宝」 2021.08.11
名馬ガリレオGalileo(IRE)が死んだ。 現役時代に英、アイルランド両ダービーを含めGⅠ3勝を挙げ、引退後は英ダービー馬5頭を送り出し、種牡馬としても大成功したガリレオが天国に旅立ったのは7月10日。左前脚の故障が慢性化したため安楽死の処分がとられた。23歳だった。 大種牡馬のサドラーズウェルズSadler's Wells(USA)を父に持ち、母は凱旋門賞優勝のアーバンシーUrban Sea(USA)という超良血だった。1998年に生まれたガリレオは、2...
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第124回 「ハナ」 2021.07.09
5月30日に行われた日本ダービーは4番人気のシャフリヤール(牡3歳、栗東・藤原英昭厩舎)が、1番人気の皐月賞馬エフフォーリア(牡3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)にハナ差をつけて優勝、第88代王者になった。2400メートルを走って、2頭の差は約10センチというわずかなものだった。 日本ダービーの勝敗がハナ差で明暗を分けたのは、これが10度目だった。 古い順に勝ち馬と2着馬を並べてみる。 ▽1940年=イエリユウ、ミナミ▽1958年=ダイゴホ...
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第123回 「効率」 2021.06.18
5月16日に東京競馬場で行われた第16回ヴィクトリアマイルはオッズ1.3倍の断然人気に推されたグランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が快勝した。 道中、中団を進んだグランアレグリアは最後の直線に向かうと自分からハミを取って、末脚を爆発させた。ラスト3ハロンは32秒6。メンバー18頭中最速の上がりで2着のランブリングアレーに4馬身差をつけた。レベルの違う強さに、ただ驚くばかりだった。 これでGⅠ勝利は5つ目。2019年の...
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第122回 「無敗」 2021.05.12
4月に行われた中央競馬のGⅠ3レースはいずれも無敗馬が栄冠に輝いた。 4月4日の第65回大阪杯(阪神競馬場)はGⅠ初挑戦だったレイパパレ(牝4歳、栗東・高野友和厩舎)が逃げ切り、デビュー以来の連勝を6に伸ばした。2着のモズベッロにつけた4馬身差は大阪杯がGⅠに昇格した2017年以降では最大着差となった。また大阪杯が距離2000㍍で行われるようになった1972年以降では、1981年のサンシードールと1993年のメジロマックイーンの5馬身差に...
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第121回 「同期」 2021.04.12
21世紀最初の日本ダービー馬ジャングルポケットが3月2日に死んだ。23歳だった。 1998年5月7日、北海道早来町のノーザンファームで産声をあげた。父は凱旋門賞馬のトニービン(IRE)、母はダンスチャーマー(USA)という血統だ。JRA栗東トレーニング・センターの渡辺栄厩舎に所属し、主戦は角田晃一騎手が務めた。 2001年にダービーを制し、同年秋にはジャパンカップでも優勝した。日本調教の3歳牡馬がジャパンカップで優勝したのは40回の歴...
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第120回 「17頭」 2021.03.11
2月14日に阪神競馬場で行われた第114回京都記念でワグネリアン(牡6歳、栗東・友道康夫厩舎)は、勝ったラヴズオンリーユーから0秒7遅れの5着に終わった。 2018年の神戸新聞杯を最後に勝利から遠ざかっている第85代日本ダービー馬はそれでも単勝2番人気の支持を得た。それは、ひとえに武豊騎手との初コンビが理由のすべてだろうと思う。「武豊騎手ならなんとかしてくれるのではないか」。新しい化学反応を期待するファンの思いが込められた...