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第171回 「金の卵」

2025.06.11

 2025年4月29日に大井競馬場で行われた第70回羽田盃(ダート1800㍍)は1番人気のナチュラルライズ(牡3歳、美浦・伊藤圭三厩舎)が2着に5馬身差をつける内容で快勝した。京浜盃に続く重賞2連勝で通算成績は5戦4勝。その後発表された暫定レーティングでは115ポンドの高評価を得た。ダート三冠が整備されて2年目に現れた逸材は東京ダービー(6月11日、大井競馬場)で2冠を目指すことになる。


 この羽田盃には副題として「ゴールドドリーム賞」のタイトルが付けられていた。優勝馬主や生産牧場に翌年の種付権利を副賞として贈るスタリオンシリーズ競走である。ゴールドドリームは2022年生まれが初年度産駒に当たり、羽田盃の出走馬15頭のうち3頭がゴールドドリーム産駒だった。24年の地方競馬新種牡馬ランキングでは見事に1位になった。ただ羽田盃ではジャナドリアが3着、グランジョルノが8着、ペピタドーロが9着の成績に終わり、三冠タイトル奪取は東京ダービー以降に持ち越された。


 今回はゴールドドリームの父ゴールドアリュールを取り上げたい。ゴールドアリュールは1999年3月3日、追分ファームで生まれた。父はサンデーサイレンス(USA)、母はニキーヤ(USA)という血統だ。栗東の池江泰郎厩舎に入り、2001年11月に京都競馬場でデビューを果たした。初戦は2着になり、2戦目で初白星を挙げた。年が明けた2002年4月に500万下、端午Sとダート戦で2連勝を飾り、日本ダービーに駒を進めた。ダービーでは優勝したタニノギムレットと0秒3差の5着に健闘した。


 日本ダービーの後はダート路線を選択。ジャパンダートダービー(大井競馬場)で2着に7馬身差の圧勝をして重賞初制覇を果たすと、続くダービーグランプリ(盛岡競馬場)でも10馬身差の楽勝で3歳ダート界のトップに立った。11月のジャパンカップダート(現チャンピオンズカップ)では古馬の前に5着と敗れはしたが、年末の東京大賞典(大井競馬場)では古馬勢を下して、優勝した。この年はJRA賞の最優秀ダートホースに選ばれている。2003年の4歳初戦はフェブラリーS。東京競馬場が改修工事のため、第20回のフェブラリーSは中山競馬場のダート1800㍍で行われた。武豊騎手が騎乗したゴールドアリュールは3、4番手を進み、最後の直線で早めに先頭に立つと、懸命に外から迫ったビワシンセイキにクビ差をつけて優勝した。


 サンデーサイレンス(USA)産駒は中央競馬のGⅠレースで計71勝を挙げ、ディープインパクトと並び、種牡馬別成績のトップに立つが、ダートのGⅠを勝ったのは、ゴールドアリュールのフェブラリーSだけ。ほかの70勝はすべて芝のGⅠだ。


 フェブラリーSの後、ドバイ遠征を予定していたが、「イラク戦争」が勃発。中東情勢の悪化から遠征を断念した。4月にはアンタレスS(京都競馬場)で優勝し、5つ目の重賞タイトルを手にした。続く6月の帝王賞(大井競馬場)で、まさかの11着に惨敗。レース後の検査で喘鳴症(のど鳴り)が見つかり、そのまま現役を引退することになった。


 「種牡馬の種牡馬」という言葉がある。産駒から次々と種牡馬が誕生する種牡馬のことを指す。ゴールドアリュールはまさに種牡馬の種牡馬である。産駒の中からエスポワールシチー、スマートファルコン、コパノリッキー、ゴールドドリーム、エピカリスなど父と同様にダートに強い「ダートサイアー」を送り出してきた。地方競馬では2010、2011、2014年と3度リーディングサイアーに輝いている。


 ゴールドアリュールは2017年2月に死亡しており、翌2018年に生まれた現7歳が最終世代に当たる。2025年5月10日現在、中央競馬に在籍している直子はエターナリーとヤウガウの8歳勢2頭だけになった。2024年10月にはエターナリーが新潟競馬場であった障害未勝利戦で1着になり、産駒の通算1,058勝目を挙げた。JRAの重賞は26勝。このうちGⅠは9勝。8勝はダートGⅠで唯一の芝GⅠ制覇は2022年にナランフレグが優勝した高松宮記念だ。2007年に産駒が競走年齢に達して以来、18年連続でJRAでの勝ち星を挙げてきた。しかし2025年はエターナリーが1戦0勝、ヤウガウが3戦0勝で、まだ勝ち星がない。


 ゴールドアリュール産駒の19年連続、JRA通算1,059勝を見てみたいと思う。

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