北海道馬産地ファイターズ
第9回 よくわかるシリーズ
2009.09.01
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馬を買うことにした。勿論,馬主になるほど安定した収入は持っていないので,ここからは仮の話である。
しかし村本さん(仮)は,馬を買おうにしても仲のいい調教師や知り合いの生産牧場といったつてがない。必然的にせり市に行かざるを得ないのだが,その時,市場の受付でふと手にしたのが「よくわかるシリーズ」だった。
「よくわかるシリーズ」は,子供向けの教育書かと思えるほど可愛らしいタイトルとは裏腹に読み応えがあるうえに,イラストもふんだんに入っていて,まさに「よくわかる」作りとなっている。
ちなみに村本さんが手にしたのは,よくわかるシリーズ第3巻の「1歳馬のせりに参加しよう!」。第1巻は「内視鏡検査」,第2巻は「せり上場馬におけるOCD(離断性骨軟骨症)」と獣医師の仕事をメインとした内容となっているが,OCDの項目は第3巻の中にも明記されており,せりに臨むだけなら第3巻があれば十分だと言える。
この冊子はアメリカのCBA(The Consignors and Commercial Breeder's Association)というコンサイナーと生産者協会が発行したものを,JRA日本中央競馬会の生産育成対策部が訳して日本語版を発刊したもので,全48ページで構成されている。
内容についてはそのものずばり,1歳馬を対象とした競走馬の購買方法について。馬を競り落とすための準備や購買者の責任,はたまた競走馬を保有する上でのビジネスモデルまでこの本で指南されると,村本さんは事の重大さに気付いて頭を抱えてしまうのだが,それは馬主になるための最低条件だと心を決めて本を読み進めていく。
ふと,気が付いたのは獣医師について書かれた事柄が多いこと。章立てでも「獣医師との信頼関係を築く」と「あなたにぴったりの獣医師を見つけよう」とあり,せりの謎という項目には「喉の異常」「OCDとは?」ともある。「獣医師との信頼関係を築く」における結びに書かれていた言葉に村本さんは目が止まる。「あなたは,獣医学の理解を深め,根拠に基づいた推測を武器に知識を豊富にした上でせりに臨むべきです」。それまでは馬を購入するには血統や見栄えだけを考えていたが,実は獣医学的なアプローチや,こうした知恵を授けてくれる人の存在も必要だと村本さんは気持ちを改めた。
そのほかにも「5月産まれの馬」や「高齢の繁殖牝馬から生まれた仔馬」など,今まで自分がマイナスだと先入観を持っていた項目を読み進めるうちに,思わず目から鱗が落ちる思いがした村本さん。改めてせり名簿につけていた付箋を全て外して,展示へと向かうことにした.........。
と,仮定の話はここまで。取材で幾度となくせり市に出向くようになったが,あくまでそれはマスコミ目線での話。しかし,よくわかるシリーズの「1歳馬のせりに参加しよう!」を読んだ時,バイヤーとしての目線でせり市を見ることの大切さにも気付かされた。
中身を読み進めて行くに従って,面白いなあと思ったのが,アメリカの現役調教師に質問をぶつける「ベテラン調教師に聞く」という項目だった。
ここではアメリカの様々な競馬場で競走馬を管理する調教師13人に,「1歳馬の評価で最も重要視することは何ですか?」や「調教師として問題視しない欠陥とは何ですか?」などの質問をぶつけているのだが,それぞれの調教師が様々な視点や考え方を述べている。
その時に思ったのだが,日本でも「よくわかるシリーズ」における「1歳馬のせりに参加しよう!」を発刊できないだろうか?
その際には,ぜひとも調教師への質問を載せてもらえればと思う。
よくわかるシリーズ第3巻の「1歳馬のせりに参加しよう!」を読んで思ったのは,せりは思ったよりも間口が広く,そして様々な上場馬が優れた競走馬になるチャンスを有しているということ。そこに調教師の話を通して信頼を与えれば,せりで競走馬を購入しようという機運は更に高まるのではないだろうか。もし,日本版の「1歳馬のせりに参加しよう!」という本が発刊された時は,それを読んだ村本さん(仮)もせり場で手を挙げているに違いない。
JBBA NEWS 2009年9月号より転載
しかし村本さん(仮)は,馬を買おうにしても仲のいい調教師や知り合いの生産牧場といったつてがない。必然的にせり市に行かざるを得ないのだが,その時,市場の受付でふと手にしたのが「よくわかるシリーズ」だった。
「よくわかるシリーズ」は,子供向けの教育書かと思えるほど可愛らしいタイトルとは裏腹に読み応えがあるうえに,イラストもふんだんに入っていて,まさに「よくわかる」作りとなっている。
ちなみに村本さんが手にしたのは,よくわかるシリーズ第3巻の「1歳馬のせりに参加しよう!」。第1巻は「内視鏡検査」,第2巻は「せり上場馬におけるOCD(離断性骨軟骨症)」と獣医師の仕事をメインとした内容となっているが,OCDの項目は第3巻の中にも明記されており,せりに臨むだけなら第3巻があれば十分だと言える。
この冊子はアメリカのCBA(The Consignors and Commercial Breeder's Association)というコンサイナーと生産者協会が発行したものを,JRA日本中央競馬会の生産育成対策部が訳して日本語版を発刊したもので,全48ページで構成されている。
内容についてはそのものずばり,1歳馬を対象とした競走馬の購買方法について。馬を競り落とすための準備や購買者の責任,はたまた競走馬を保有する上でのビジネスモデルまでこの本で指南されると,村本さんは事の重大さに気付いて頭を抱えてしまうのだが,それは馬主になるための最低条件だと心を決めて本を読み進めていく。
ふと,気が付いたのは獣医師について書かれた事柄が多いこと。章立てでも「獣医師との信頼関係を築く」と「あなたにぴったりの獣医師を見つけよう」とあり,せりの謎という項目には「喉の異常」「OCDとは?」ともある。「獣医師との信頼関係を築く」における結びに書かれていた言葉に村本さんは目が止まる。「あなたは,獣医学の理解を深め,根拠に基づいた推測を武器に知識を豊富にした上でせりに臨むべきです」。それまでは馬を購入するには血統や見栄えだけを考えていたが,実は獣医学的なアプローチや,こうした知恵を授けてくれる人の存在も必要だと村本さんは気持ちを改めた。
そのほかにも「5月産まれの馬」や「高齢の繁殖牝馬から生まれた仔馬」など,今まで自分がマイナスだと先入観を持っていた項目を読み進めるうちに,思わず目から鱗が落ちる思いがした村本さん。改めてせり名簿につけていた付箋を全て外して,展示へと向かうことにした.........。
と,仮定の話はここまで。取材で幾度となくせり市に出向くようになったが,あくまでそれはマスコミ目線での話。しかし,よくわかるシリーズの「1歳馬のせりに参加しよう!」を読んだ時,バイヤーとしての目線でせり市を見ることの大切さにも気付かされた。
中身を読み進めて行くに従って,面白いなあと思ったのが,アメリカの現役調教師に質問をぶつける「ベテラン調教師に聞く」という項目だった。
ここではアメリカの様々な競馬場で競走馬を管理する調教師13人に,「1歳馬の評価で最も重要視することは何ですか?」や「調教師として問題視しない欠陥とは何ですか?」などの質問をぶつけているのだが,それぞれの調教師が様々な視点や考え方を述べている。
その時に思ったのだが,日本でも「よくわかるシリーズ」における「1歳馬のせりに参加しよう!」を発刊できないだろうか?
その際には,ぜひとも調教師への質問を載せてもらえればと思う。
よくわかるシリーズ第3巻の「1歳馬のせりに参加しよう!」を読んで思ったのは,せりは思ったよりも間口が広く,そして様々な上場馬が優れた競走馬になるチャンスを有しているということ。そこに調教師の話を通して信頼を与えれば,せりで競走馬を購入しようという機運は更に高まるのではないだろうか。もし,日本版の「1歳馬のせりに参加しよう!」という本が発刊された時は,それを読んだ村本さん(仮)もせり場で手を挙げているに違いない。
JBBA NEWS 2009年9月号より転載