北海道馬産地ファイターズ
第143回 『HIDAKA HORSE CARDS』
2020.11.20
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きっかけは、知人の生産者がFacebookに載せていたある記事だった。
「3枚連続で同じカードをゲット(笑)」とのコメントが書かれた記事には、ゴールの瞬間と思われる馬の写真と、馬名が記載されたカードが。数日後には他の生産者が、「レアカードが出た!」とホログラム加工がされたカードを、Facebookにアップしていた。この2人ともに日高町内の生産者であり、「日高町」「馬」「カード」でググってみると、あっさりと「HIDAKA HORSE CARDS」の言葉に行き着いた。「HIDAKA HORSE CARDS」とは、日高町や日高町商工会からなる日高町地場産品推進協議会が、町内の観光拠点や、飲食店と連携した町内周遊企画として作成したカードである。その絵柄となっているのが、町内出身のGⅠ馬やJpnⅠの勝ち馬たち。引退年の新しい30頭をピックアップしているだけでなく、GⅠ、JpnⅠの勝利数でレギュラー、シルバー、ゴールドの3種類の他に、レアカードとも言われている、シークレットカードも存在している。こうなると5枚どころか、全種類集めたくなるのがコレクターの性なのだろう。9月15日の配布開始から1か月も経たずに、1万枚制作されたカードの在庫は無くなり、10月中旬には同じ枚数が増版されることになった。
協議会の一員としてカード制作に関わってきた、日高町役場経済観光課の島尻守主幹は、競走馬をカードの図柄とした理由について、このように語る。
「新型コロナウイルス感染症の影響が、地元の農業や水産業、そして観光業にも出始めた春先から、こうした産業を応援できないかとの話し合いが始まりました。その際、町内で誕生した競走馬をカードにすることで、町内外の方にも広く日高町をアピールできるのでは、との意見が出てきました」。ノウハウも何も無い、ゼロからのスタートではあったが、会議の中でアイデアは次々と出始める。その中でカード化された30頭の競走馬に加えて、日高町だけでなく、日本競馬史にもその名を残した名馬に敬意を表すべく、シークレットカードの作成も決まった。
9月15日に配付が始まると、予想以上の反響が島尻さんの元にも届くようになる。
「スタートの前は、この試みを少しでも多くの方に知っていただければと思いましたが、様々なメディアから取材の申し込みをいただいただけでなく、町内の方もSNSなどで告知をしてくれました」。島尻さんは更なるアピールを図るべく、グリーンチャンネルに「HIDAKA HORSE CARDS」を取り上げてもらえないかとアポイントを取る。すると、中央競馬全レース中継の中で視聴者プレゼントとして大々的に紹介された。
「このカードを制作するにあたり、ターゲットの中には競馬ファンの方もいらっしゃいましたが、プラスアルファで町内であまり馬に興味が無かった方にも、ファンになってもらいたいとの気持ちもありました」と島尻さんは話す。過去にこのコラムで、『馬力本願プロジェクト』について書かせてもらったことがあるが、その際に話を聞かせてもらった、「一般社団法人umanowa(うまのわ)」の糸井郁美さんも、「町民の方だけでなく、時には牧場のお子さんも馬産地としての認識を、それほど持っていないと感じることがありました」と話していたことがある。
日高町を含めた日高地区は、日本国内の約8割の軽種馬を生産している、まさに馬産の中心である。しかしながら、地元に住んでいる人の中には、その事実に関して驚きを持たないどころか、身近なはずの競馬とは世界を切り離して生活している人もいるだろう。それでも、町内の飲食店や「とねっこの湯」といった施設に行けば、会計の際に「HIDAKA HORSE CARDS」が渡される。当初は興味が無くとも、5枚のカードを集めていくうちに、カードに表記された馬の名前や、そのレース名などにも、どこか親近感を覚えてくれる可能性もあるはずだ。
「町内の方からはカードが欲しくて、行ったことの無いお店に入店してみたとの話も聞きました。初めて町内の飲食店に入ってみたという、競馬ファンの方もいらっしゃいます」と話す島尻さん。このカードを通して日高町のアピールだけでなく、町内における消費意欲ももたらしたというダブルの効果は、まさにヒット企画と言えそうだ。もし、これをお読みの日高管内の役場の方々、思いっきり企画をパクってもいいので、全く同じようなカードを制作してみてはいかがだろうか?
少なくとも競馬ファンは、この企画に興味を持ってくれるはず。その際は自分も増量覚悟で日高管内の飲食店を巡り、体型共々、立派なカードコレクターになってみようと思う。
「3枚連続で同じカードをゲット(笑)」とのコメントが書かれた記事には、ゴールの瞬間と思われる馬の写真と、馬名が記載されたカードが。数日後には他の生産者が、「レアカードが出た!」とホログラム加工がされたカードを、Facebookにアップしていた。この2人ともに日高町内の生産者であり、「日高町」「馬」「カード」でググってみると、あっさりと「HIDAKA HORSE CARDS」の言葉に行き着いた。「HIDAKA HORSE CARDS」とは、日高町や日高町商工会からなる日高町地場産品推進協議会が、町内の観光拠点や、飲食店と連携した町内周遊企画として作成したカードである。その絵柄となっているのが、町内出身のGⅠ馬やJpnⅠの勝ち馬たち。引退年の新しい30頭をピックアップしているだけでなく、GⅠ、JpnⅠの勝利数でレギュラー、シルバー、ゴールドの3種類の他に、レアカードとも言われている、シークレットカードも存在している。こうなると5枚どころか、全種類集めたくなるのがコレクターの性なのだろう。9月15日の配布開始から1か月も経たずに、1万枚制作されたカードの在庫は無くなり、10月中旬には同じ枚数が増版されることになった。
協議会の一員としてカード制作に関わってきた、日高町役場経済観光課の島尻守主幹は、競走馬をカードの図柄とした理由について、このように語る。
「新型コロナウイルス感染症の影響が、地元の農業や水産業、そして観光業にも出始めた春先から、こうした産業を応援できないかとの話し合いが始まりました。その際、町内で誕生した競走馬をカードにすることで、町内外の方にも広く日高町をアピールできるのでは、との意見が出てきました」。ノウハウも何も無い、ゼロからのスタートではあったが、会議の中でアイデアは次々と出始める。その中でカード化された30頭の競走馬に加えて、日高町だけでなく、日本競馬史にもその名を残した名馬に敬意を表すべく、シークレットカードの作成も決まった。
9月15日に配付が始まると、予想以上の反響が島尻さんの元にも届くようになる。
「スタートの前は、この試みを少しでも多くの方に知っていただければと思いましたが、様々なメディアから取材の申し込みをいただいただけでなく、町内の方もSNSなどで告知をしてくれました」。島尻さんは更なるアピールを図るべく、グリーンチャンネルに「HIDAKA HORSE CARDS」を取り上げてもらえないかとアポイントを取る。すると、中央競馬全レース中継の中で視聴者プレゼントとして大々的に紹介された。
「このカードを制作するにあたり、ターゲットの中には競馬ファンの方もいらっしゃいましたが、プラスアルファで町内であまり馬に興味が無かった方にも、ファンになってもらいたいとの気持ちもありました」と島尻さんは話す。過去にこのコラムで、『馬力本願プロジェクト』について書かせてもらったことがあるが、その際に話を聞かせてもらった、「一般社団法人umanowa(うまのわ)」の糸井郁美さんも、「町民の方だけでなく、時には牧場のお子さんも馬産地としての認識を、それほど持っていないと感じることがありました」と話していたことがある。
日高町を含めた日高地区は、日本国内の約8割の軽種馬を生産している、まさに馬産の中心である。しかしながら、地元に住んでいる人の中には、その事実に関して驚きを持たないどころか、身近なはずの競馬とは世界を切り離して生活している人もいるだろう。それでも、町内の飲食店や「とねっこの湯」といった施設に行けば、会計の際に「HIDAKA HORSE CARDS」が渡される。当初は興味が無くとも、5枚のカードを集めていくうちに、カードに表記された馬の名前や、そのレース名などにも、どこか親近感を覚えてくれる可能性もあるはずだ。
「町内の方からはカードが欲しくて、行ったことの無いお店に入店してみたとの話も聞きました。初めて町内の飲食店に入ってみたという、競馬ファンの方もいらっしゃいます」と話す島尻さん。このカードを通して日高町のアピールだけでなく、町内における消費意欲ももたらしたというダブルの効果は、まさにヒット企画と言えそうだ。もし、これをお読みの日高管内の役場の方々、思いっきり企画をパクってもいいので、全く同じようなカードを制作してみてはいかがだろうか?
少なくとも競馬ファンは、この企画に興味を持ってくれるはず。その際は自分も増量覚悟で日高管内の飲食店を巡り、体型共々、立派なカードコレクターになってみようと思う。