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第107回 やっぱり楽しい馬旅 盛岡競馬場へ

2023.10.25

 10月9日、第36回マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI)が行われる盛岡競馬場へと出かけました。コロナ禍もひと段落し、少しずつ以前の風景に戻りつつあるそれぞれの場所。南部杯当日の盛岡競馬場も多くのファンが詰めかけ、賑やかな1日となりました。

 レース結果はご存知の通り。今年3月のドバイ・ゴールデンシャヒーン以来の出走となったレモンポップ(美浦 田中博康厩舎)が圧勝。坂井瑠星騎手を背に好スタートからハナを奪い存在感をアピール。4コーナーからぐんぐん加速して後続を突き放すその強さは、まるで盛岡競馬場のナイター照明の光を独占するかのよう。周囲に光源が無い山の上という環境も相まって、レモンポップにだけ光が当たっているかのような印象がありました。本当に強かった!

 さて、この日の盛岡の天候はというと、午前中は青空が見える秋晴れ。しかし、昼頃には曇りとなり、やがて小雨が降ったり止んだりという空模様へ。そうなってくると山の上にある盛岡競馬場は肌寒く、大半の来場者が風を通さない上着を着用しての観戦に。私自身も「着るかな?これだと厚着になるかな。でも念のために」と持参したブルゾンを着用。10月の東北、日没後の山の上の屋外ですものね。

 記憶に鮮明に焼き付いたレモンポップの強さでしたが、この日の盛岡競馬場の雰囲気も忘れがたいものでした。地元グルメの美味しそうな匂いが立ち込める中、お店の皆さんの威勢の良い声が聞こえ、ライブ演奏の音楽が楽しく鳴り響く・・・。そんな競馬場の活気には「来て良かった!」と心の底から思えるものがありました。何気なく聞こえてくる「東北の言葉のやさしい響き」に、ふと心のコリがほどけるような感覚も。

 それは、競馬を通じてその土地の魅力に触れられる時間がようやく戻って来たという実感。「旅」も「音」も「美味しそうな匂い」も奪われていたあの時間を乗り超えて、ようやく、という気持ちだったように思います。

 競馬を巡る旅の魅力といえば、新しい景色との出会いもあるでしょう。晴れた日の盛岡競馬場では美しい夕空も見られそう。自然に囲まれている分、他とは大きく違った絶景が見られるのではと想像しています。空の広さや周囲の灯りの少なさから、タイミングが合えば宇宙ステーションの移動も観測できそう(JAXAのHPでチェック可能)です。

 また、盛岡は宮沢賢治や石川啄木といった文人ゆかりの場所をはじめ、盛岡城や岩手銀行赤レンガ館など歴史的な建築物の存在も大きな魅力です。盛岡駅から盛岡城跡公園(岩手公園)へは歩いて20分ほど。途中にある商店街の、ちょっと入りづらい、でも入ってしまえばフレンドリーな昔ながらのお店に立ち寄れたのは、厩舎取材で培った経験が役立っているような気もしました。挨拶がその後の空気を作る、というような。ちなみに盛岡は、ニューヨーク・タイムズ紙「2023年に行くべき52カ所」に選ばれているそうです。これはまたぜひ行かなくては!

 盛岡への道中、先祖ゆかりの地・仙台にも立ち寄ってみました。仙台駅から伸びる商店街を歩いていたら、昨年11月にオープンしたJRAの競馬施設「VIESTA(ヴィエスタ)」を発見。大型ワイドスクリーンでの観戦専門施設(勝ち馬投票券の発売は無し)で、席は予約不要のフリーエリア、事前予約で無料のリザーブエリア、事前予約・有料のラウンジ席の3種類。平日ということもあり、この時の来場者は少なめでしたが、大画面で「推し」を応援、商店街で買い物やお食事を満喫、アーケードだから天候も気にならないなど、競馬場もWINSも存在しない宮城・仙台という土地で、新しい競馬観戦の楽しみ方を提供している施設という印象を受けました。開催日の様子も気になります。

 今回の旅路は東北自動車道を利用した旅。ふと、多くの馬たちがこの道を通って入厩したりレースに向かったりしているんだなと思ったり。そして、次はどこに行こうかなと、そんなことを思う馬旅となりました。

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