南関フリーウェイ
第108回 競馬界の専門用語
11月3日、大井競馬場と門別競馬場で地方競馬の祭典・JBCが行われました。結果はJBCレディスクラシックをアイコンテーラー(JRA)、JBCスプリントをイグナイター(園田)、JBC2歳優駿をフォーエバーヤング(JRA)、そしてJBCクラシックではキングズソード(JRA)が優勝。来年は初となる、佐賀競馬場へ決戦の舞台を移しての開催(2歳優駿は門別)となります。
JBCクラシックの優勝ジョッキーはジョアン・モレイラ騎手。通訳を務めたのは競馬に精通しているアダム・ハリガンさんで、競馬特融の言い回しを取り入れた通訳のおかげで、モレイラ騎手のコメントもスムーズに取材することができました。
近年、地方競馬でも海外のジョッキーが騎乗する機会が増えていますが、その度に通訳の存在のありがたさを感じ、専門用語が多い競馬界ならではの大変さを想像しています。
2011年に船橋所属で期間限定騎乗したクリスチャン・デムーロ騎手(イタリア)、2020年に川崎所属で騎乗したミカエル・ミシェル騎手(フランス)、これまで2度大井所属で騎乗しているライアン・クアトロ騎手(フランス)など、英語圏以外のジョッキーの場合は特に通訳の方の存在は大きなものでした。
それと共に「競馬の専門用語の多さ」「独特の表現」が、通訳の方々にとっても苦心のしどころになると知ったのもこの時のこと。
普段使われている表現で見てみると、「この馬、テンのスピードは速いけど、ウチにササることがあるから気を付けて」「途中、ズブくなる」「デムチで気合をつけて」「コーナーでマクって、シマイのアシで勝負」などなど。普段耳にしているだけでも、専門用語や独特の表現が盛りだくさん。ニュアンスの伝え方が難しく、通訳にも工夫が必要だと聞きました。
もちろん、厩舎関係者はわかりやすい表現で指示を出していましたし、わかりづらいところはきちんと確認し合い、ベストな状態でレースに臨んでいたことをお伝えしておきましょう。
こうしてみると、競馬界で日常的に使われる単語・表現は、普段日本語で会話している人にとっても、競馬に馴染みの無い場合には「?」なものばかりといえるのかも知れません。
例えば「攻め馬」や「追い切り」。競馬を知らないと、「馬を攻める?馬に攻められる?」や、「追い切りって、何を追って切断するの?」などと混乱してしまいそうです。
競馬ファンなら入り口あたりに位置する単語、「牡馬」「牝馬」も競馬を知らない人にとっては、「ボバ?ヒンバ?」となるかも知れません。「セン馬」あたりはワンランク難易度が上がるのかも。かつてJRAのCMで「女の馬を牝馬と呼ぶのさ、メスと呼ばないで~♪」というのがありましたっけ。
競馬場で耳にする会話を思い起こすと、
「今の時計いくつ?(今のレースのタイムはどれくらいの速さだったのかという意味で、時計の個数を聞いているのではない)」
「前はゲートが良くなかったけど良くなった(以前は馬がゲートを上手に出られなかったけど、出られるようになったという意味で、ゲートの品質についての話題ではない)」
「この馬、印ついてる(記者に評価・注目されているという意味で、馬に何か目印のようなものがついているという意味ではない)」
・・・など、競馬を知らない方が聞くと戸惑ってしまいそうな表現が次々と浮かんできます。
私自身、「勝負服」「馬柱」など、競馬を知らない頃に聞いたらどんなものをイメージしたのだろうと、ちょっとワクワクするような。そういえば、競馬を始めたばかりの頃、新聞に「殿走る」という文字を見つけて、「とのはしるって何?」となったことがありました。「殿」を「しんがり」と読むということを知ったのもこの時でしたが、実は時代劇の合戦のシーンなどで、時々耳にする単語でもありました。
専門用語は、その現場で人から人へと伝えられて来た言葉。どこか文化的な香りも感じます。競馬の専門用語・表現を、いろいろと調べてみたくなりました。